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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

WWDCビデオによるとiOS9で教育分野のiPad管理が大幅に改善されそうです

今日は先日米国で開催された「WWDC」ではiPadiPhoneを「運用・管理」するための新機能・機能向上が多数発表されました。本稿では当方がWWDCのビデオを視聴し、「教育分野でのiPad運用管理に寄与しそう」と感じた部分を紹介します。

事前にお断りしておきたいのは、この情報はWWDCの公式サイトで閲覧できるビデオの情報をもとに作成しており、実際のリリースまでの間にこれらが一部変更されたり、機能としては存在しても日本では利用できない可能性、そしてMDMやアプリ側の設定に依存する内容はiOS9を導入してもすぐには利用できない可能性があるという点です。
また、ビデオは全編英語なので、当方の英語力不足で一部誤訳や解釈の相違が含まれる可能性もあります。以下の情報をビジネスシーンなどで活用したい場合には必ず原典にあたるようにしてください。
ビデオは以下のリンクから見ることができます。

What's New in Managing Apple Devices - WWDC 2015 - Videos - Apple Developer

1. MDMから遠隔でアプリをインストールする場合でもApple ID が不要になる

これまではiPad上にAppleIDを設定せずにアプリを配布するには、Apple Configuratorを使ってUSB経由で導入する方法しかありませんでした。MDMからアプリを配信する場合は、MDMから各iPadに対し「App Storeから指定されたアプリをダウンロードしてください〜」的な指示を遠隔で出しています。App Storeからアプリを落とす=Apple IDが必須であり、さらにiPad上でApp Storeを表示しておかないといけない(機能制限を使えばApp Storeを隠すことができるが、この状態だと先のダウンロード命令が通らない)という制約条件がありました。

しかし、iOS9からはApple ID に対してではなく「デバイス」に対してアプリを割り当てることが可能になります。Apple IDを事前に設定しておく必要はありません。これで、多くの学校がiPad導入時に悩む「生徒の人数分だけApple IDを取得する」という苦行から解放されることが期待されます。(ただし、ビデオを見る限りアプリ側でも対応が必要っぽいので、教育系アプリをリリースしている企業の方は要チェックです)

ちなみに、現行のApple IDで管理しているiPadから、この”デバイス”管理方式への移行も可能とのこと。その際、ユーザーが作成したアプリ内のデータが消えたり、アプリを再インストールしなくても良いそうです。不要になった有料アプリのライセンスを回収して他のデバイスに再割り当てすることも、今まで通り可能とされています。

さらに嬉しいのが、”AppStore”アイコンを隠した状態でも、遠隔でアプリをインストールすることが可能になるとアナウンスされていることです。多くの小中学校では生徒が勝手にアプリを追加することがないようAppStoreのアイコンを非表示にしていると思います。このため、アプリを遠隔配信するには、MDMから一時的に「App Store」制限を解除し、アプリを配った後に再びApp Storeを隠す、という手順が必要でした。
(もちろん、生徒を信頼して最初からAppStoreの制限をかけていない学校もあります)

この変更は、iPadの導入時の手間を減らすだけでなく、現場の要望に応じたタイムリーなアプリ導入をより行いやすくするなど、今回最も嬉しい改善点ではないでしょうか。

2. MDMから一斉にiOSの最新版へのアップデートを指示できるようになる

iOSのアップデート管理は管理者にとって悩みの種ですが、iOS9からMDM経由でその制御ができるようになるようです。といっても、すでに数百台レベルでiPadを導入しているような学校にとっては、それらが一斉に最新版のiOSにアップデートしに行くとWiFiインフラに負荷が集中するので、現実的にどれだけ役立つ機能かは未知数…。
現実的には、管理者が対象端末をどこか一箇所に集めて、WiFiへの負荷や状況を確認しながらMDM経由でアップデートの指示をだす、という使い方になるでしょう。でも、MDMがこの機能に対応してくれれば、使い勝手が向上するのは間違いないですね。
個人的には「iOSのアップデートを抑止するオプション」を早く実装してくれるとありがたいのですが、ビデオを見る限りではそういった機能には言及されていません。

3.「パスコード」「壁紙」「機器名称」などの変更を制限可能になる

よく小学校などで「学校のiPadに生徒が勝手にパスワードを設定して他の生徒や先生が使えなくなって困る」というトラブルを聞くのですが、それを防止する手段がついに提供されました。また、iPadの名称をせっかく出席番号・学籍番号に揃えても、ユーザーがあっさり変更できてしまうという問題も、今回解消されます。

この制限を適用すると「設定」アイコンの中から「パスコード」や「壁紙」の項目そのものが消える仕様になっています(冒頭のビデオの19:30前後にそのデモがあります) ので、パスコードの場合は事前に設定してある場合はそれが変更不可に、逆に未設定の場合はパスコード設定を追加することが不可能、ということになります。

なお、今回は新しい制限機能が色々と増えており、画面上からは「Appの自動アップデート」(要監視モード)といった気になるワードもあります。もしここからアプリのVerUPを制御できるようになると嬉しいのですが、詳細はビデオでは言及されていないので実際にチェックしてみるしかなさそうです。

4.VPPやDEPのシミュレーターが利用できるようになる

これは主に開発者向けのツールとなるようです。VPPは、教育機関が有償アプリのライセンスを購入する際に20本以上まとめ買いすると(アプリのよっては)半額になるという「Volume Purchase Program」の略です。VPPを使うと、MDMから遠隔でユーザーが気づかないうちにアプリをインストールする「サイレントインストール」が使えたり、ライセンスが不要になった時には利用権利を回収することでアプリが勝手に消える、といった制御面での利点があります。また、DEP(Device Enrollment Program)はiPadの事前設定作業を自動化するサービスです。

VPPもDEPも、これまで事前検証する手段が非常に限られていたので、実際に導入してみたら想定通りに動作しなかったり、様々な制約条件があって苦しんだベンダーの方も多いと思います。このシミュレーターである程度の事前検証ができることが期待されます。特にDEPについては、日本国内では本校執筆時点でまだAppleKDDIから購入したiPad/iPhoneでしか利用できないという制約条件があるため、シミュレーターで動作イメージを事前にチェックできるようになるのはありがたいですね。

5. Apple Configurator2によるキッティングの効率化

AppleConfiguratorが初のメジャーバージョンアップを果たしました。主な機能強化点は以下の通り。

・複数のMacApple ConfiguratorによるiPadの分散管理と設定情報の共有
→ 従来はMacごとに管理しているデバイスのデータベースを持っており、これがMacの全体をバックアップしない限り他のMacに移行することができなかった(言い換えれば、母艦のMacのバックアップを取らずに故障していたらThe ENDだった)のが、内部に端末のデータベースを持つのをやめることで、Mac A で管理していたiPad  をMac Bでの管理に移行するなど、柔軟な運用が可能になります。これにより複数のMacで設定を共存することも可能となり、分散管理が可能になります。

・オフラインで利用可能に
→ 従来は起動時にインターネットに接続していないと強制終了されてしまう仕様だったのですが、今回のバージョンからオフライン利用ができるようになりました。

・管理下のiPadに対して「タグ」をつけて管理
→ 例えば「4年生のiPad」といったように分類を行っておけば、そのタグがついたiPadだけん対して設定変更操作を行うといったことも可能。カートなどを使って大量のiPadを管理している学校には嬉しい機能かも。

・アプリのアップデートをAppleConfigurator単独で実施可能に
→ 今まではConfigurator経由でアプリを入れる時には、iTunesなどを使ってMaciPad用のアプリを事前にダウンロードしておき、それをConfiguratorに登録してiPadに配るという操作が必要で、アプリのVerUPの時も同様の手順が必要だったのですが、今回からはiTunesに依存することなくアップデートが可能になるようです。

DEPとの連携も可能に
→ 詳細は実際に使ってみないとわからないのですが、「Automated Enrollment」という名称で、従来の設定アシスタントを使う代わりにApple ConfiguratorからDEP対象のiPadに指示を出すことが可能となるようです。もともと全てが無線で完結するのがDEPのメリットであるわけですが、Apple Configurator2を使うことでこのあたりの手順がどのように効率化されるのか、要検証ですね。

・「BluePrint」よばれるテンプレートを保存し、一斉に適用可能に
→ 従来のApple Confguratorでは1パターンしか保持できなかった設定内容を複数保持することが可能になります。端末の名称、導入するアプリ(VPPにも対応)、構成プロファイル、前述の「タグ」などを1つのテンプレートとして登録し、対象のデバイスに一気に適用することができます。1校で複数のポリシー管理を行っている場合に便利そうですね。
コマンドラインスクリプトによる設定自動化にも対応
→ ビデオでは口頭で言及されているだけですが、BluePrintよりもさらに自由度の高い自動キッティングワークフローがデザインできるような機能を備えるようです

上記の新機能の一部は、冒頭のビデオの36:10あたりからデモで見ることができますので、Apple Configuratorを普段から使っているベンダーの方や管理者の方は、一度見ておいて損はないかなと思います。

 

以上、WWDCのビデオ内容をもとに気になったiOS9とiPad関連の機能強化を紹介しました。


β版のiOS9とApple Configurator2 はデベロッパーサイトで入手できるとのことですが、サイト内にある一般公開前のアプリやiOSの仕様について言及することは規約で禁止されているので、気になる方はiDEPに登録して実際に試して見るしかありません。
また、β版はどんどんマイナーバージョンアップをしていくのが通例で、最初のバージョンでは不具合が潜んでいたり、いつも間にか機能のアップデートがあったりすることもしばしば。

最終的には、秋にリリースされるパブリックβ版や正式版で検証をすることが重要になりそうですね。

α × iPad × Google Photos

αアンバサダーとしての記事2本目は、前回予告した「Google Photos」との組み合わせで「今の所これがベストかなー」という機器の使い方+αについて紹介します。

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α7s, 1/200, F4.5, ISO100, FE2.8/35

旅行で携行する複数のカメラ画像を、一箇所にまとめる

6/13−14の週末を利用して金沢に夫婦で旅行に行ってきました。今回の旅行ではα7s、α6000(SONYからの借り物)、QX1、コンデジ(TX7)と合計4台+それぞれのiPhoneを持って出かけました。

私はα7sとQX1を、妻がα6000とTX7を持ち歩くことにしたのですが、こうなると画像が各カメラやiPhoneに分散するという問題が起きます。しかし1泊2日の旅行にわざわざPCを持っていくのは面倒。そこで…
・直ぐにFacebookSNSにアップしたい場合は「スマートフォン転送」
・全写真はSDカードリーダー経由でiPadに集約、ホテルや自宅からGoogle PhotosにUP
という工程を踏みました。
(本当はiPhoneでSDカードリーダーが使えればもっと手軽なのですが、現時点では使えません)
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Google Photosに集約された4台のカメラ+iPhoneの写真たち

オリジナルの写真はiPad内に残るので、カードの容量が厳しくなったら消しても大丈夫。Google PhotosにUPすることで(圧縮されるとはいえ)1600万画素相当の写真がクラウド上にバックアップされ、あらゆるデバイスで時系列に沿って見ることができるので便利です。関連する写真を勝手にグループ化してくれたり、画像解析を通じて写真を検索できる機能も(たまにボケかましてくれますが)意外と使える印象です。
さらに、記事中の写真は全てGoogle Photosからダウンロードしてきたものを使っていますが、上記のどこかの過程でExif情報を消す仕様のようで、webに掲載するには好都合です。(困るシーンもありそうですが…)
何と言っても、1600万画素相当で良いなら容量制限が無いのがGoogle Photosの革新的なところ。プロユースは厳しいでしょうが、趣味的に少し写真を撮る人であればこれで充分かなという印象です。

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α7s, 1/60, F2.8, ISO3200, FE2.8/35

上の写真はスマートフォン転送」を使い、無線経由でiPhoneiPadなどに画像を転送したもので、最近のαにはだいたいこの機能は搭載されています。
転送したらスマホからSNSなどに投稿ができるのですが、カメラとスマホWiFiで接続->専用アプリ起動->転送->SNSに投稿 という流れが必要で、意外と面倒。私は200万画素相当に圧縮したものを転送して使いますが、フルサイズの画像転送はけっこう時間がかかり、iPadなどにメモリカード経由でバックアップする方が早い。なので、今回の旅行では食事の後にFacebookに数回投稿するくらいにしか使いませんでした。ただ、ケーブルやアダプタを持ってくるのを忘れた時にも使える手段なので、知っておいて損は無いです。
iPadセルラーモデルであれば、取り込んだらすぐSNSGoogle Photosにバックアップをすることもできるので、この方法を始めるとセルラー接続可能なタブレットが欲しくなるかもしれません(笑 

α6000のポテンシャルに迫る

今回の旅行では
・α6000は一眼初心者でも使えるのか
・夜景の撮影能力の差はどんなものか
という点も試してみようと思いました。

1点めの「初心者でも使えるのか」という点は、全く問題無しでした。使い方の説明をしたのは1−2分くらい。基本はフルオートで、ズームと半押し、全押しだけ教えて、あとはファインダーを覗きながら脇をしめるとブレにくくなるよ、くらいしか伝えてません。それで、結構バシバシと、なかなかいい感じの写真を撮ってます。

2点めはα7sが現状、夜景最強カメラっぽいので、そのポテンシャルにα6000がどのくらい迫るのかなーと見てみようと思いました。
で、選んだ被写体がこちら。

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左: α7s, 1/30, F4.5, ISO25600, 4.5−5.6/75−300(AマウントアダプタLA-EA4経由)
右: α7s, 1/30, F4.5, ISO51200, 4.5−5.6/75−300(同上)

尾山神社のステンドグラス ライトアップの様子を撮り比べてみました。いずれもカメラ任せのオートで、α7sではISOだけ変えて2枚撮影。ISO51200にするとさすがにちょっとノイズが目立ちますが、α350時代に使っていた安価で決して明るいとは言えない、かつ手ぶれ補正もついていないレンズを使い、中望遠域で手持ちでここまで撮れるのはやっぱ凄いですね。近い将来出そう(?)なα7sIIでボディ内5軸手ぶれ補正がついたら、さらに最強な夜景カメラになりそうな気がします。

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α6000, 1/10, F4.5, ISO3200, 3.5−5.6/16−50(キットレンズ) 妻撮影

一方こちらは妻が撮った写真。画角の違いはあれど、シャッタースピード1/10でもほとんどブレてないのはレンズ内手振れ補正の効果?欲をいえばキリはありませんが、カメラ任せでかなり綺麗に撮れていてびっくり、かつEXIFを見て以外とシャッタースピードが遅いのを知り二度びっくりという印象です。キットレンズ含めα6000はミラーレス一眼の入門機としてかなりポテンシャル高い感じがしました

 

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α6000, 1/160, F5.0, ISO400, 3.5−5.6/16−50(キットレンズ) 妻撮影

こちらもフルオート。コンデジでは出ない絵に妻も一眼のポテンシャルを感じていた様子でした。個人的にはキットレンズがもーちょっとマクロ撮影できるようになればいいなー。


ここが良くなればさらにGood

今回使ってみて、α6000には総じて満足したのですが、不満もあります。一番大きいのは、タッチパネルではないこと。今回携行していた数年前に発売されたコンデジ(TX7)やiPhoneは画面内をタッチすればその場所に露出やピントが合うようになっていますが、意外とこういう携帯性の高いカメラで当たり前にできることがミラーレス一眼で出来ない点は不満が残ります。
ただ、スマホとαを連携させる「スマートリモコン」というカメラ向けアプリを追加することで、上記の「タッチした場所にAF/AEを合わせる」ことはできるには出来ます。

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スマートリモコン内臓版のスクリーンショット@iPhone

が、が…。実はカメラに最初から内臓されている「スマートリモコン内臓版」というアプリがあるのですが…。なぜか、このバージョンでは、タッチAFが出来ない! これは非常にもったいないです。新機種のα6000も、状況は同じでした。タッチAFを使えるようにするには、カメラ内のブラウザ経由でSONYのサイトにアクセスし、「スマートリモコン」というアプリをダウンロードしインストールする必要があります。WiFiのパスワードをカメラ本体のダイヤルを操作して入力する段階ですでに面倒で、敷居が高く感じます。このアプリは最初からプリセットしておいてくれれば…と正直思います。

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QX1, 1/80, F5.6, ISO1600, 3.5−5.6/16−50(キットレンズ)

ただ、スマートリモコンってすごくいいアプリで、例えばこーゆー低い目線で、床にカメラを置いてスマホからリモートシャッターが切れるのが最大の魅力です。集合写真を撮るときに三脚にカメラをセットしてスマホからアングルを確認しつつシャッターが切れるのも魅力。なので、最近のαを持っている方は是非、この「アプリ」を一手間かけてでも導入してみてほしいです。iPhoneでもAndroidでも使えます。

ちなみに上記の写真は別の日に猫カフェでレンズスタイルカメラQX1を使って撮影しました。QX1は速写性の面で、スマホWiFiで接続 -> アプリを起動 -> 撮影 という手間があり旅行ではあまり出番がありませんでしたが、普段から「一眼品質のカメラを携帯する」という習慣を可能にするサイズが魅力。いつも仕事のバッグに入れてます。

最後にこれは個人的な要望なのですが、スマホ側の専用アプリ「PlayMemories Mobile」について、個人的にはせっかくスマホ連携するのであれば、カメラの高機能化に伴うUIの複雑さを補うようなアプローチもアリではないか、と個人的には思っています。

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こちらは前回の日記で紹介した、MacやPCからαのカメラをリモートで操作する「Remote Camera Control」というアプリのスクリーンショットです。ライブビュー機能は持っていませんが、USB経由で接続されたαの多くの設定をここから制御できます。各種設定がPC上から変更でき、インターバル撮影(数秒おきにX枚撮影する)も行えます。

個人的にはこれのスマホ版+既存のライブビューができるPlayMemories Mobileを合わせたようなアプリがあると撮影体験がだいぶ変わる気がしています。有線接続でもいいので、タッチパネルでF値シャッタースピード、露出補正などを瞬時に設定でき、手元のスマホの大画面で設定値を一覧できる。もちろんフォーカスポイントや露出はスマホ側でタッチした場所に合わせられる。これでカメラ側のファインダーやディスプレイ内には余計な情報を表示しなくてよくなります。VAIOXperiaにこうした機能を搭載してくれれば、カメラという内製デバイスを持たない他のスマホメーカー(Appleも含む)との大きな差別化要素になると思うのですが、如何でしょう?>SONYさん

※ついでに、PlayMemories Mobileアプリとスマホの連携について、もう少しライブビューの描画のスムーズだったり、接続が安定するといいなーと思います。オリンパスさんのオリンパスAirは割ともう少しスムーズな動きをしていたので。

 

ということで、今回はGoogle Photosとの連携、夜景性能の比較、改善要望について書いてみました。

 

次回はたぶん最終回で、いよいよ本ブログとしてメインである「教育分野」、公開授業でα6000を使ってみた様子をレポートしようと思います。

 

教育ICTの最前線レポートを支える デジタルカメラα

2015/5/30より ソニーデジタルカメラ「α」の"アンバサダー"として1ヶ月弱活動をすることになりました。数回ほどこのBlogにも記事をPOSTしてみたいと思います。

αアンバサダーのハッシュタグからこのブログに到達した方のために簡単に自己紹介をしておくと、当方は
・教育をICTの活用により、更に良くするための個人的な活動を行っている
・全国各地で行われている教室や教育現場でのICT活用の様子を記録・伝達するための
 ツールとしてαを使っている
・教育系イベントや公開授業をTwitterで実況中継し即日Togetterに纏める

という活動をしています。そのため、当方はいわゆる”写真家”クラスタの人間ではなく、短時間でより品質の高いレポートを作る課題解決ツールとしてαが現状ベストの選択肢であると考え、使っています。よって他のアンバサダーさんよりは「ユースケース」に関する記事が多くなると思われます。

まず、実際にどんな実況中継を行っているかの一例ですが、こんなのです。

このイベントは全国の小学〜大学までの先生が、ICTによって授業や活動の質を高めたり、今まで出来なかった事を実現している様子などを広く伝えてきたものです。年に数回開催されていて、今年の4/26は200名の会場が早期に満席になる程注目を集めるイベントとなりました。

で、このイベントで使ったのが以下の組み合わせです。
Apple - MacBook (12" Retina)

α7S | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー

Remote Camera Control  | ソニー

やりたい事は「αで撮った写真を使いなれたMacから説明文を加えて瞬時にTwitterする」ということ。これ簡単なようで結構難しいのですが、それを可能にしたのが最後に紹介している「Remote Camera Control」というPC/Mac用ソフトでした。このソフト、USB接続されたαなどのソニーデジタルカメラに対して
・PC側からシャッターを切る
・PC側からF値/シャッタースピードなどを制御する
・αで撮られた写真は自動的にPCに転送されてくる
ということが出来る素敵ツールです。これを駆使することで、
 スライドを撮影->内容を120文字くらいで纏める -> Twitterにスライドと一緒に投稿
という流れが非常にスムーズに行えます。それをひたすら繰り返したのが先のリンク先のTogetterです(一部、同じハッシュタグの他の人のTweetも混ざってます)


なお、カメラとしてα7Sをわざわざ選んでいる理由は
・薄暗い会場でスライドを撮影する際に(今の所)α7Sが最も綺麗に写る
・サイレントシャッター機能が使える
・コンパクトなので登壇者に対する威圧感(?)が少ない
などです。レンズは色乗りが良いという意味で35mm f2.8 の ツァイス単焦点を使いました。あとTwitterにまとめるのが目的なので画素数はそんなに要らない、むしろMAX解像度で撮影しても1200万画素のα7Sは最近のデジカメと比較してもストレージを圧迫しないという意味で結構、ありがたい存在だったりします。

ということで、机のある会場だと、上記のRemote Camera Control を使う方法が最も早く、かつ正確に講演の内容をリアルタイムに近い形で残せます。が、難しいのが机がない時で、当然Macが使えません。私のユースケースでは公開授業のように、教室にお邪魔して授業を邪魔しないように気を使いながら、生徒児童がICT機器を活用している様子を撮影させてもらう場合がこれに該当します。
そこで活躍するのが、レンズスタイルカメラ+スマートフォンの組み合わせです。これについては過去記事をご参照ください。

全国のよく訓練されたSONY党員の中でも、公開授業の記録と発信のためにレンズスタイルカメラを使う人間はそうそう居ないと思いますが、これらの組み合わせは撮影の機動力と即時の記録を両立するツールとして(個人的には)今の所最強です。実況Tweetを繰り返すうちにフリック入力は電車の中で女子高生に二度見されるくらい早くなりました(笑)  さすがにキーボードの入力速度には負けますが。

これらのレンズスタイルカメラは、スマホとの間は「PlayMemories Mobile」というアプリを通じてカメラとWiFiで通信し、カメラの捉えた絵を飛ばす仕様になっています。レンズスタイルカメラには液晶モニタが付いておらず、スマホに映像を飛ばすことで「ファインダー」代わりに使えます。また、撮った写真はその場で縮小されたものがスマホに無線転送されてくるといった機能も持ってます。しかし、先のiTeachersのような大きなイベントや、大規模な展示会ではWiFiがあちこちに飛んでいるため、電波の混雑の影響か、画像の転送が非常に遅くなったり、途中でカメラとの接続が切れたり、スマホへの撮影画像の転送に失敗するといったトラブルによく遭遇します。本末転倒な気もしますが、本音を言うと有線で高速・安定した通信ができるバージョンが欲しいなぁ。

ちなみに、レンズスタイルカメラを購入しなくても、α7Sなど最近のαシリーズには「アプリ」と呼ばれる追加機能をダウンロード可能で、「スマートリモコン」というアプリを入れることでレンズスタイルカメラと同等の使い方ができます。
が、私が敢えてレンズスタイルカメラを使っているのは
・公開授業では見学者が非常に多く、人の合間を縫って撮影が必要
・一方で(許可は得ているものの)生徒児童の顔がハッキリ写り込むのはNG
・そのため中望遠域を多用する
という制約条件があり、カメラを片手持ちにしてアングルフリーに撮影できるレンズスタイルカメラの方が利便性が高いのです。例えば以下のような写真を撮るには、レンズスタイルカメラだとやりやすいです。
(写真は同志社中学校iPad×Skypeを使った"英語のスピーキング"練習の授業風景)

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※上記の公開授業の詳細は過去記事を御覧ください。


なお、今回はαアンバサダープログラムに参加し、ソニーさんから最新のコンパクトミラーレス一眼「α6000」という機種を1ヶ月ほどお借りする機会に恵まれました。手持ちのα7Sよりもコンパクト、かつAPS−Cサイズのセンサーを搭載するほか、オートフォーカスが極めて高速という特徴を持ったカメラです。
早速昨日、友人の結婚パーティーがあったので使ってみましたが、コンパクトさに似合わぬ連写・速写・AF性能を持つことが実感できました。特に公開授業の機会があれば、QX1やQX100と比較をしてどの程度の使いやすさなのか、スマホと組み合わせた実況中継にも耐えられるのか、などを検証する用途で使ってみようと思います。

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また、ちょうどタイミングよくGoogleからGoogle Photos」が発表されましたSONYさんにはちょっと申し訳ないのですが、ちょっと使ってみた限りでは本家のPlayMemoriesというアプリよりもGoogle Photosの方がだいぶ使い勝手が良い感じなので、次回はこちらとの組み合わせでどんな利便性が得られるかを記事にしてみようと思います。

開発者の論理、運用(利用)者の論理

このブログは教育関連の話題を扱うブログですが、今日はちょっと教育に限定しない話題を書いてみたいと思います。組織内で、システムを開発(または導入)する側と、それを利用する側の話です。
たぶん、すごくあたり前のことが書いてあるだけなので、そんなに気負わず読んでみてください。あー、あるある、くらいの気持ちになっていただければそれで充分です。

基本的に多くの組織内では仕組みやシステムを「作る」もしくは「導入する」担当と、それを「使う」もしくは「運用する」担当に分かれていると思います。当方は社会人まだ7年目ではありますが、これまでに両方の立場を経験させていただきました。その中で、立場が変わるとモノの見え方が変わるということを「社内システム」を例に挙げて話をしたいと思います。

 

社会人1年目、私は社内システムを「使う」、いわゆるユーザーとしての仕事を経験します。

そこで日々感じていたのは
・なぜ使う側の立場をここまで考えていないシステムなのか
・何でもかんでも備考欄で吸収するのはいかがなものか
・この手作業でやる所をシステム化すればもっと人件費が浮くのに
・1分1秒が惜しいのに、なぜこんなトロいシステムを使うのか
・業務手順の変更や改善をなぜきちんと作り手は説明してくれないのか
といった不満でした。

大学〜大学院で一つの研究室内システムを作り上げた経験もあったので、「ちょっと手を加えれば直せそう」と見える部分は沢山目に付きました。そこでいくつかは「具体的にこうしてはどうか」と提案をしたこともありますが、ちょっとした仕様変更(文字を入力する枠を追加したり、条件フラグをひとつ増やすなど)だけでウン十万円かかる、などと言われて玉砕し続けました。
とはいえ、ただで引き下がるのは嫌だったので、ExcelVBAなど使えるものを活用して効率化ツールを作るなど、工夫や提案を続けてみました。そうしていたらある時、社内システムの開発プロジェクトに関わる機会に恵まれました。

そこで、今までとは正反対の立場を経験します。

システムの開発や改修は、ヒト・モノ・カネ・時間との戦いでした。限られたリソースの中で結果を出さなければなりません。しかも、ユーザーに要望を聞くと、とても消化しきれないほど大量の意見が出るし、最初に聞いた時に出てこなかった要望が、締め切りをだいぶ過ぎた後に出てくる(しかも重要で絶対に実装しないといけなかったりする)ということもよくありました。
こうした事情から全ての希望を満たすことはまずできないという現実に直面します。よって「割り切り」をするわけですが、その時に真っ先に削られる候補に挙がるのが「システム内であったら便利だけど、別の方法でカバーできるよね」という機能です。

例えば、画面内にひとつ入力枠を追加してほしいというケース。Excelや紙であれば枠を書くだけでOKなので「簡単でしょ?」と思われがちです。しかし、システムとなると、枠を増やすためにはデータベースやそのテーブル構造をまず理解し、どこに変更を加えれば良いかを把握し、その変更による影響がありそうな部分(特に他のシステムと連携する部分)を特定し、試験環境で動かしてみて大丈夫か、では本番の環境に導入したらどうか…などかなりの部分の精査が必要になります。こうした検証や試験に加え、仕様書の書き換えや、新機能の説明会とその資料の作成するなど、相当な手間がかかります。このあたりは実際に経験してみて、なるほどこれは「ウン十万円」というコストは適正だったんだな、と納得したのを覚えています。(ちなみに、この話は”内製開発”、つまり業者に発注せず自分で作る、という経験を元に書いています。もし外注していたらたぶん桁が違う数字になっていたでしょう…) 

結局、ここにかける時間と手間をかけるのであれば、現場には数秒間の負担や手間になってしまうものの、「申し訳ないですけどExcelで…」とか「備考欄に手入力で追記してください…」というのが費用対効果という意味で現実的な答えになるわけです。

細かい例を挙げるとキリがないのですが、開発をやってみた結果、過去の自分の持っていた不満について自分自身で回答すると、以下のようになってしまいます。

・なぜ使う側の立場をここまで考えていないシステムなのか
 -> ヒアリングを重ねても、システムを毎日使っている人と同等に詳しくなるのは難しいです…。

・何でもかんでも備考欄で吸収するのはいかがなものか
・この手作業でやる所をシステム化すればもっと人件費が浮くのに
 -> 上記の例の通り。システムを使う人の人件費が浮いても、作る側や展開する側の人件費がそれを上回ってしまうと「やらないほうがベター」なんです…。勿論コスト以外に人命や安全などもっと重視するものがある場合は、この限りではありません。

・1分1秒が惜しいのに、なぜこんなトロいシステムを使うのか
 -> システムの動作速度はいろんな要因で決まるため、全体的なパフォーマンスの向上はかなり難易度が高くコストに見合わないケースが多いです…。これについてもコスト以外の重要要因がある場合はこの限りではありません。

・業務手順の変更や改善をなぜきちんと作り手は説明してくれないのか
 -> すみません本当はもっとちゃんと説明したいんです。でも人や時間が足りないというのが本音です。説明文書や資料はきちんと作っているので、最低限そちらをみていただければ…。

 

とはいえ、双方言い争っても何の解決にもならないので、それぞれ持てる手段で歩み寄るためにも対話は絶対に必要です。どうしても利用者にカバーしてもらわないといけない場合は、そのほうが全体を見た場合に効率的であることを理解してもらえるよう、きちんと説明することは最低限必要でしょう。

一方で両方の立場を経験してみて重要だと感じたのは、システムを「使う側」の人間も、こうした「作る側」や「導入する側」の事情を理解するように努めることです。開発や提供をする側に文句や愚痴ばかり言ったり、費用対効果が低い機能改善を強く求めてばかりいると、開発/導入を行う側はどうしてもその人を避けたくなってしまうものです。

実はこの話は、システムに限ったことではなく、仕事をする上でのあらゆる面で重要なことだと私は考えています。異なる立場同士で話をする時には、相手の事情をまず理解しようと考える。不満に思っていることが実現できないのには、なんらかの理由や制約条件があると考えて、事情を聞いてみる。実はこれができる人は意外と少ないので、大抵の場合は「この人は自分を理解してくれそうだ」と見てくれて、腹を割って話してくれます。すごくあたり前の話ではありますが、改めて、自戒も込めて書き残しておきます。


最後に、一応教育についての話題を扱うブログとして、自分が大事にしている言葉を示して終わりにします。
 

学びの多くは相互理解から。争いの多くは相互不理解から。

 

今後も様々な立場の方とお話しをし、知らないことを補うため自らも学ぶ、ということを続けていきたいと思います。

 

※ちなみに、今回のエントリーはあくまで組織内に閉じた話をしています。これがモノの売買など「組織外」が絡む話になるとだいぶ事情が変わってくる部分がありますが、その辺は要望があればまた書きます。

清教学園が挑む「eポートフォリオ」の活用と「学びのステークホルダーに対するコミュニティ作り」

先日、大阪府河内長野市にある私立の中高一貫校「清教学園中・高等学校」を訪問してきました。同校は全国の私立中高一貫校で唯一、文部科学省の「高大接続」「高校教育の質の確保・向上」「大学入試改革」の調査研究の委託先に選定されています。しかも”グローバル時代や教育の多様化を見据えた「大学受験」だけに縛られない人間教育を目指す”という方針も掲げており、それを実現する仕組みのひとつとして「e-ポートフォリオ」というシステムが運用されている点に筆者は注目しました。このシステムを授業に積極活用している、同校の特任教諭 田邊 則彦先生と、同システムを開発した 株式会社NSDの川畑 雅哉様にお話を伺いました。

(田邊先生にはご厚意により高校3年生の授業も見せていただきました)

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左:清教学園 特任教諭 田邊 則彦先生、右: NSD 川畑 雅哉様

eポートフォリオは、生徒の学習履歴や成果物を集約し、中高6年間の学びの「ポートフォリオ※」を形成するために導入されています。webベースのシステムで、PC、タブレットスマートフォンなどOS/デバイスを問わず閲覧することが可能で、生徒や教員だけでなく保護者も閲覧や利用が可能となっています。

ポートフォリオ:画家・写真家・デザイナーなどが自分の作品などを集約してまとめ、自身を知ってもらうために利用するものを指します。ここでは自身の学習成果物が「作品」として集約されているという意味合いになります。

一般的なLMSと大きく異なることは、単なる「課題の出題・提出」といった「蓄積」の要素だけではないことです。”自己評価”、”相互評価”、”教員による評価”といった「多面的評価」を実現するプラットフォームとしても機能しているのがポイントで、システム上に提出された課題や作品に対して教員やクラスメートがコメントをつけ合い、そこでディスカッションすることを通じてさらなる改善を押し進める「学びのPDCA」を加速するための仕掛けが用意されています。
(相互評価を実施するかしないかは教員が課題ごとに選択できる)

田邊先生は、このポートフォリオとここに集約される様々な作品に対する評価を「進路先が求める人物像にマッチするよう、学習成果物を適切に組み合わせ、自身の”軸”に合わせたストーリーを構築する材料にしてほしい」とお話されていたのが印象的でした。
現在進められている大学入試改革では、各大学が明確に「アドミッションポリシー」を制定することが求められているほか、いわゆる「知識の再生」だけに依存しない大学入試における選抜方法として「面接」や「小論文」などの活用も挙げられています。そうした動きを先取りして生徒達が準備できるような「ポートフォリオ化」を今の段階から進めている、と見ることができるでしょう。
実際にこのe-ポートフォリオを活用している授業を見学することができたので、その模様をお伝えしていきます。
※写真掲載には学校および生徒から事前に許諾を得ております

一人1台のiMacがある情報科教室

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今回授業を見学した教室は一見、理科室のような大きめな白い机が並んでいるだけの情報科教室。しかし、机上に見える枠のような部分をあけてハンドルを引き出すと、なんとiMacが登場。このiMacを使って、今回は2時間連続の授業を使い、「卒業論文」を「iBooks Author」を活用して「iBooks形式」に変換し、手元の「iPad」で確認しながら作品として仕上げていく活動を行っていました。国公立大学の前期試験直前でこういった授業は珍しいなと思っていたのですが、このクラスは当初から推薦により大学進学が確定しているコースの生徒とのこと。

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授業はまずQuipperを使ったアイスブレイクからスタート。Quipperは日本人が英国で立ちあげた教育系ベンチャー企業で、主に学習のプラットフォームを提供している会社です。田邊先生はQuipper社と連携しながら同システムを独自にカスタマイズやバグフィクスした上で生徒に提供しているそうです。当方が知る限り、学校としてQuipperを使っているのは日本ではここだけではないでしょうか?

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アイスブレイクの後、本題のiBooks作成作業に移行。こちらが冒頭の「eポートフォリオ」の画面。ここには、生徒達が卒業の要件として制作した40000字規模の「卒業論文」が格納されていました。ちなみに、生徒は論文の書き方(いわゆるアカデミックライティング)を高校2年の頃から約1年かけてしっかり学んでいるとの事で、iBooksにリデザインする中で「引用はどう表現するのか」といった質問が生徒より出ていました。また、iBooks Author特有の表現に戸惑う生徒の様子を見て、「出典にはハイパーリンクなどを使ってジャンプさせるのも手」「Wordから図表がうまくコピペできない場合はスクリーンショットを活用しても良い」といった指示も飛び交っていました。

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写真のようにwebなどから素材をうまく持ってきて見栄えのするデザインに変更するなど工夫をしている生徒も見られました。

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ちなみに、章立てやセクションの関連性などiBooks独特の仕組みなどについては特に先生から指示や説明はありませんでしたが、理解が早い生徒が他の生徒に共有しながら習得していく様子が見られました。普段からこうした生徒同士の学び合いや問題解決を行うよう指導しているということで、授業中生徒達は座席を離れて様々な場所で情報交換をしながら作業を進めていました。

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実際にiPad上でiBooksから出力した作品をプレビューし、完成イメージを確認している様子です。完成作品は.pdfと.ibooks、およびiBooks Authorで編集可能なファイルの.iba の各種形式でeポートフォリオ上に格納し、授業は終了となりました。

成果物に対する相互評価と「学びのコミュニティ」化

この後は、eポートフォリオ上で教員が作品に対してコメントをつけたり、場合によっては生徒に公開して「相互評価」を行うという流れになります。冒頭に述べた通りeポートフォリオwebブラウザベースのシステムなので生徒手持ちのスマートフォンでも閲覧ができます。このため、授業の中だけで使うのではなく、適宜授業外で先生やクラスメートからつけられたコメントを確認したり返信したりすることができます。なんとなく教育SNSに近い形に見えますが、田邊先生は教育SNSはもっと日々の相談や話題などの一般的な用途について使うシーンを想定しており、eポートフォリオは”学習成果物”を通し地域社会や保護者、教員などの「学習者を取り巻く全てのステークホルダーに対するコミュニティに育てていきたい」という考え方をされています。
(逆に、小学校から中学校に上がる時の不安などを生徒や先生・保護者や先生などが会話するような機会は教育SNSに任せる方が良い、とシーン別で利用イメージを明確に分けていらっしゃいました)

株式会社NSDと田邊先生の連携により生まれたeポートフォリオ

授業後には株式会社NSDの川畑様にも詳しくお話を伺うことができました。
このプロジェクトには2011年ごろから関わり始め、ほぼゼロから現在のeポートフォリオを作り上げてきたそうです。2011年から2年程度、海外で使われている近いコンセプトの商品を研究したり、田邊先生の授業サポートなどに関わっていく中でシステムとして必要な要件を集約したり、日本特有の学習評価の考え方などに触れていきます。ベースとなるシステムは2013年に作られ、同年に清教学園に田邊先生が着任してから約2年間、同校が推進しているルーブリック(※2)の活用も踏まえながら進化を続けていき、現在の形になったとのこと。ただ、現時点ではまだプロトタイプという位置付けで、2015年度の早い段階での製品化にむけて活動中とのことでした。
(※2:熊本大学のホームページからの引用「ルーブリック(Rubric)とは、レベルの目安を数段階に分けて記述して、達成度を判断する基準を示すものである。学習結果のパフォーマンスレベルの目安を数段階に分けて記述して、学習の達成度を判断する基準を示す教育評価法として盛んに用いられるようになった。これまでの評価法は客観テストによるものが主流を占めていたが、知識・理解はそれで判断できたとしても、いわゆるパフォーマンス系(思考・判断、スキルなど)の評価は難しい。ポートフォリオ評価などでルーブリックを用いて予め「評価軸」を示しておき、「何が評価されることがらなのか」についての情報を共有するねらいもある。」 http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/2Block/05/05-2_text.html )

また、田邊先生からはアダプティブラーニングの仕組みと連携して、e-ポートフォリオの中に診断機能的なものが入ってくるともっと面白くなる。システム側から学習状況に対していろんなサジェッションが出てくると面白いよね」というコメントもあり、各方面で始まりつつある「学習ログ分析」や「教育のビッグデータ解析」とも連携できると、とても面白そうです。実際に、株式会社NSDもこの部分については非常に期待しているとのことでした。

eポートフォリオの抱える課題

最後に、お二方にお話を伺う中で三つほど顕在化した課題についても記載しておきたいと思います。
1点目は「校務支援システム」の連携です。一般的にこれらは機密性の高い情報を扱うためにネットワーク的に分離された場所に置いてあるケースが大半ですが、eポートフォリオwebブラウザで外部からアクセスできます(eポートフォリオで扱うのはいわゆる”成績”や”評定”よりも前段階の参考情報という位置づけ。もちろん、IDとパスワードによる個々の認証はきちんと行い、情報管理も含めて生徒には学んでもらう意図があります)。
とはいえ、こうしたe-ポートフォリオが扱う情報が適切な形でセキュリティを保ったまま、校務支援システムと連携できると何かと利便性が高いでしょう。このあたりは、e-ポートフォリオが製品版として登場する際には是非とも検討されてほしいですね。

 

2点目は「多面的評価」に対する教員への負担感をどうするかという問題。田邊先生も川畑様もこの点は非常に気にされていて、従来やっている手法+αでなるべく負担感がない(場合によっては現状の先生が個々に手で管理しているものと比較して手間が減る)ように見えるような仕掛け作りを考えているとのことでした。

最後の3点目は、こうしたシステムが広く整備されていく前提として学校内の学習環境(ハード・ソフト・インフラ)の整備が進む必要があるという点。そういう意味では学校そのものにネットワークがなくても使えるセルラータブレット端末や、生徒が個人で持っているスマートフォンを教育にうまく活用すると良いのでは、というコメントが田邊先生よりありました。(当方がKDDIの人間ということを気遣ってのことかもしれませんが、実験的にセルラー端末を導入して検証を行うという事例もいくつか出てきており、当方もその可能性を感じ始めているところなので、このあたりは何かできることがあればなぁと”個人的には”思っています)

 

以上、清教学園の取材レポートでした。

授業だけに注目すると「iMacを使ってiBooksで卒論を加工している」という見え方になってしまうかもしれませんが、実際にはe-ポートフォリオを使った「授業の前後」にその価値があるという点が、今回の取材での一番の気づきでした。「学校の中」に閉じたICTの活用ではその真価は活かしきれない部分がありますので、田邊先生のおっしゃっていた「学習者と取り巻くすべての学びのステークホルダーに対するコミュニティ作り」というコメントには大いに賛同するところです。

今後の清教学園の動きが楽しみですね。

同志社中学校×オンライン英会話「ベストティーチャー」コラボ公開授業

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2015年2月9日(月)、京都にある同志社中学校にてICTを活用した英語の公開授業が開催されました。オンライン英会話スクールを運営する「ベストティーチャー」とコラボレーションし、Skypeを使った海外とのリアルタイムコミュニケーションを同時多数並行で実施するという内容でした。

ベストティーチャーについての詳細はITMedia TechTargetの拙稿“世界に1つだけのテキスト”で正しい英語が話せる「ベストティーチャー」を、また同志社中学校のICT環境や特色ある教育については同Tech Targetの神谷 加代氏の記事 同志社中学校がiPad miniで実現した“英語が話したくなる授業”とは?  および 「iPad mini導入」は始まりにすぎない――同志社中学校がIT活用に挑む訳  を参照をいただくとして、本稿では公開授業の内容に絞ってお届けします。

 

「会話」の機会を最大化する授業設計

一般的な中学英語の授業では、生徒が「発音」をする機会はあっても、第三者と「話す」機会は実はかなり限定的。ネイティブのALTや授業担当教諭との掛け合いは、授業時間を生徒数で割ると、一人あたり2,3分レベルになってしまいます。しかし、英語が「伝わる」経験や「相手の発言内容を理解できる」経験は非常に重要で、英語力の向上や自身の課題を知る絶好のチャンスでもあります。多くの先生がそうした「話す」機会の創出に悩む中、今回のベストティーチャーとのコラボではなんと12人の英語講師が生徒のためにSkypeにスタンバイし、2−3名の班に一人の講師がいるという非常に贅沢な状態で進められました。「一人ひとりの生徒が英語を”聞く”機会、”話す”機会を最大化」した英語の授業と言えそうです。

 

授業の設定は以下のような流れです。

・6人の英語の先生(それぞれ出身国はバラバラ)がiPad上のSkypeに待機

・授業の初めにToday's Taskの確認

・3分で先生の名前と出身国、そしてその先生の特徴(好きな食べ物や趣味など質問内容は自由)など、
 なるべく多くの情報を聞き出す
・ただし、出身国についてはズバリ「どこの国出身ですか?」と聞いてはいけない。

・3分経ったら、次のSkype講師にスライドし、また3分間で新しい先生のことを聞き出す
・これを6回繰り返し、各班で先生の名前と出身国をリスト化したものをロイロノートで提出

・最後に、特定の先生を紹介するスライドをロイロノートで作成し先生に提出

つまり、各班で最低でも3分×6回=18分間程度「会話」を行うチャンスを与えていることになります。これを2クラスで同時に実施していました。もともと同志社中学校では英語についてはハーフクラス制度を導入しており1クラスの人数が少ない状態で授業を受けられるのですが、さらにそこにハーフクラスごとに6名の講師がつくので、非常に贅沢な「英会話」の環境と言えるでしょう。


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ベストティーチャーのサービスの特徴として、事前にSkypeの会話に使う台本「スクリプト」を専任のライティング講師と一緒に作成し、その内容に沿ってSkypeレッスンを行うというものがあります。が、スクリプト作成には通常のベストティーチャーのスキームだと少々時間がかかるので、今回の公開授業では各班ごとに固定の質問(名前と出身国を聞き出す、ただしその表現方法は自由)と自由質問をグループで10問程度を英作文し、事前に授業担当教諭にチェックをしてもらった上でSkypeレッスンに挑むという方式を行っていました。写真は、その事前に用意した英作文シートに質問の答えを記入しながらSkypeレッスンを受ける生徒の様子です。

 

ロイロノートスクールの比較機能も併用

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3分×6のインタビューが終わった後、担当教諭(写真は今回の公開授業にお招きくださった反田先生)がロイロノートスクールの「集約(比較)表示機能」を使って各班の回答を一覧表示しながら答え合わせをしている様子です。ほとんどの国名を当てたツワモノグループも登場。
このあと、特定の一人の先生を選んで、その先生を紹介するスライドをロイロノートスクールで作成するという作業に各自が取りかかりました。あまり馴染みのない国の先生もいたようで、各自のiPadSafariをつかってその国の状況を調べる生徒が目立ちました。

 

公開授業を終えて- インタビュー

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公開授業のあと、今回の授業を企画した背景についてベストティーチャーの宮地社長と、同志社中学校の反田先生に個別にお話しを伺うことができました。
(写真左が反田先生、右が宮地社長)

ベストティーチャーと同志社中学校とのコラボのきっかけは、Villing Venture Partners という教育向けベンチャー支援組織のイベントで出会ったことだそう。ベストティーチャーとしてはすでに同志社が中学校1年生全員がiPadを手にしていることも追い風になったそうです。出会ってから数ヶ月後となる12月、ベストティーチャーは同志社中学校の「特別講座」で希望者に英会話Skypeレッスンを実施、これが大変な人気を博し、一部保護者も参加、見学に駆けつけたということから、今回の公開授業でのコラボが決まったそうです。

公開授業について宮地さんは「講師の確保が大変だった」と振り返っていました。通常はすべてがオンラインで完結するベストティーチャーにとって、今回のような”公開授業”は初めての経験。常時7−8名のネイティブ講師がSkypeレッスンのために待機しているとはいえ、今回はそれを上回る人数で、さらにクイズの性質上”すべて異なる国籍であること”や”中学生でもわかりやすい表現ができること”などの条件も加わっています。しかし、もともと多彩な国の英語に触れることが必要というベストティーチャーの講師採用ポリシーもあり、無事に対応できたそうです。宮地さんは今回の公開授業で「ある程度感触を得たので、今後学校向けの展開も検討していきたい!」と意気込んでいました。
(実際に、ベストティーチャーのホームページでは学校向けの案内が掲載されています)

一方反田先生は、「こうした形の授業を取り入れることで、これからの英語学習に求められてくる”4技能”の育成に大きな効果があるのではないか」と期待しているとのこと。ちなみに、Skypeを使った「国当てゲーム」はEdTech業界に詳しいデジタルハリウッド大学の佐藤昌宏教授のアイデアとのこと。反田先生はそのアイデアを3分×6セット、かつジグソー方式を取り入れたゲーミフィケーションを盛り込んだ授業デザインに仕立てたということです。特に今回の3分×6という方式は「最初の先生との会話で失敗したり、自分が出せなくても次の先生の回に気を取り直して”再トライ”できる」「一先生あたり3分の時間制限を設けることで質問を一つでも多く発話しよういう気持ちが後押しされる」という点がポイントということ。確かに、作文が正しくできても限られた時間でそれがうまく相手に伝わるように「発音」できるかは全く別問題。それを複数回、トライする機会があるのは非常に良いことかもしれませんね。

 

今回の見学で、教育におけるICTの活用が「これまで難しかったことが普段の教室で可能になる」という実例をまた一つ、垣間見た気がします。

2014年の振返りと、2015年の抱負

皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年初の投稿ということで、昨年の振返りと、2015年に向けた抱負を投稿したいと思います。

まず、昨年にあった幾つかの出来事を振り返ります。昨年も多くの教育関係の皆様とつながることができ、一部で点と点が線になり始めた感触を得た年でもありました。特に象徴的な出来事を5つほど示すと

ITMedia Tech Target  (教育IT)への寄稿を開始(2月)

webメディアデビュー。iPadを活用している学校への取材と、EdTechの先端を走る方々の製品紹介記事を執筆しました。記事を〆切までに書き上げることの難しさ、「編集」により自分の文章が生まれ変わることへの驚きを経験させていただきました。なお、昨年最も読まれたのは「EdTechフロントランナー」の「アオイゼミ編」で、教育ITのサイト内でも頻繁にアクセス数1位を獲得しています。

iOSコンソーシアム 文教WG(ワーキンググループ)が成立(6月)

本職と別に無給で兼業をしている”一般社団法人 iOSコンソーシアム”に、念願の教育系組織を立ち上げました。当方は同WGの共同リーダーに就任し、「企業と教育者をつなぐ」ための活動を進めてきました。iPadで教育サービスを体験するイベントを3回、30−40名程度の教育ICT企業と学校関係者が集まり、あらかじめ決めた「お題」について情報交換する「月例会」も6回、開催しました。今年は関西支部でも月例会を実施していく予定です。

ICT教育ニュースに記事を寄稿(7月)

「先生のための初級ICT教育講座」シリーズの第一弾として寄稿した「教育現場でiPadが選ばれる5つの理由」が、同サイトの年間ビュー4位に入りました。この世界ではiPadWindowsが人気を二分していますが、それぞれに良さはあるものの、現時点では特に豊富な教育向けアプリを擁することが強みと言えます。しかし、各種企業におけるキャッチアップや、文科省総務省が連携して進めている教育のクラウド化に伴うHTML5ベースのwebアプリが増えてくると、この記事の5つ理由が過去のものになってくるかもしれません。

iOSコンソーシアムとして 文部科学省共催のイベントに3回の出展(9月、11月、12月)

9月に文部科学省で開催された「情報教育担当者連絡会」を皮切りに、11月に横浜、12月に大阪で開催された「eスクール ステップアップ・キャンプ」に、それぞれiOSコンソーシアム 文教WGとして小ブースを出展。iPadを学校教育に活用している現場の模様や、コンソーシアム会員企業のソリューションを教育委員会や学校関係者向けにPRしてきました。iOS関係の展示が全体として少なかったこともあり、いずれもかなり多くのお客様がブースに立ち寄ってくださいました。

・人事異動でKDDI内でも教育とICTの活動を開始(10月)

これが当方としては昨年最も大きな出来事でした。それまでは完全に本業と切り離して活動していた教育とICTの活動が一部仕事になったことで、この分野について調べたり、研究する時間をより多く取ることができるようになったのは大きな前進です。とはいえ、これはあくまでスタートラインであり、昨年10−12月を準備運動期間とすれば、今年からが本番とも言えます。仕事として教育とICTの成果が残せるように努めていきたいものです。

 

以上が昨年の振返りです。次に2015年の抱負ですが

「教育ICTの推進のためにあらゆる面で戦う」

ということを宣言したいと思います。
何と戦うのか、ですが、大きく5つあります。ほとんどが教育ICTと関連します。

1.既存の常識と戦う

一つ目は、教育ICTをあるべき姿で推進していくために「これがベストプラクティス」とされるものを(自分自身の常識も含め)「それが本当にベストなのか?」と疑い、そこから解決策や代案を考え、提言し、広げていきたいと思います。例えば昨年は、学校へのタブレット導入にWiFiや電子黒板が必須であるという考えや、学校にMDMは必要ないのではという考えがそれぞれ塗り変わりました。重要なのは、教育ICTは未来の子供たちのために推進することであり、大人の都合で進めていることではない、という事実です。特に本職でも教育とICTに関わることになったことで、この部分はより強く意識していこうと思っています。

 2.時間と戦う

2014年が教育ICTの方向付けをする年であるとすれば、2015年はそれを実行する年であり、各所で下準備されてきたものが一気に動き出してくると私は見ています。時流を読みながら素早く動いていくには、常に時間との勝負が重要だと思っています。自身もICTをより上手く活用しつつ、それに多くの時間を取られて判断が遅くならないようにしたいと思っています。重要なのは情報を収集したり出力することではなく、そこから「判断」をすることであると肝に銘じていきます。

 3.世の中の動きと戦う

これは既存の動きの反対勢力になる、という話ではなく、足元で起きていることと国や自治体、組織の計画を頭の中でリンクさせ、背景や理由を理解した上で、分かり易く世の中や組織に対して発信をしていくこと。そこから、新しい動きを作り出すことを重視する、という考え方です。否定や批判をしても世の中や組織は動かないし、仲間がいなければ動きは大きく鈍ります。ただ、これをやるには情報のアンテナを相当高くすることが必要ですし「自分の頭で考える」ことも重要です。具体的には、文科省や国の動きをきちんと把握し、解釈し、世の中に発信し、指摘や批判も受けながら、自らも成長していくという覚悟です。

4.自分自身と戦う

3を進めていくには、自身の積み上げてきた理念や信念を場合によっては変えたり、捨てる覚悟が必要です。少なくとも私は企業の人間であり、学校現場のことで先生方に、政策や方針のことで官僚の方々に、教育の各分野のことでその道のエキスパートの方々に、それぞれ勝てるわけがありません。ですが、そこに少しでも近づこうとする努力は絶対に捨てたくありません。ですので、私は素人なりに自分で考え、こうではないか、と発信をし、それにより各々の世界の人たちから批判や指摘いただく(直接言っていただかなくても、自分からそういう指摘を見つけ出す)ことができれば、そこから学ぶことで先に進もうと思っています。もちろん、企業人として得うるスキルや知識も並行して伸ばすのは言うまでもありません。「完璧でなければ情報を発信しない」では先に進めないので、とにかく考え、表現し、修正していく中で「自分自身」が弊害になるのであれば、どんどん変えていくことを進めたいと思います。 

5.ワークライフバランスと戦う

昨年の反省も踏まえ、KDDIの社員、iOSコンソーシアム 文教WGの共同リーダー、そして家庭の3つの立場のいずれもきちんと両立させ、年齢相応のワークライフバランスを得る術を磨こうと思っています。今回、年末年始に6日間ほどSNSを使わない期間を設けたことで再認識しましたが、情報収集や発信は重要なものの、それ以上に重要なものも沢山あります。それぞれの場所に強くコミットすればするほど、他のものを見失ってしまうので、常にバランスを意識して、メリハリをつけて動くようにしていこうと思います。 

ということで、今年も様々な面で教育とICTを推進していきますので、なお一層、皆様のお力添え、ご助言をいただけますと幸いです。おそらく「お前それ間違ってるから」と言われていちいち凹むようなヤワな人間ではありませんので、直接会った時でも、飲みの席でも良いので遠慮なく突っ込んでいただければと思います。

引き続き、どうぞよろしくお願い致します。