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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

【結果共有】情報機器を使って休校中に遠隔での教育に参加した児童生徒へのアンケート(n=73)

 本日は、昨年公開して各方面から好評を頂いた「学校で「一人1台」環境で1年以上学んだ児童生徒170名に実態を聞いてみた」の続編を書いてみます。

it-education.hatenablog.com

 今年3月から急遽始まった休校対応においてICTの活用が注目されている中、いち早くICTを活用したオンラインでの教育を実施したいくつか学校にご協力いただき、「学校との間の遠隔(オンライン)教育を受けた生徒(一部児童)へのアンケート」を行ないました。その結果を公表したいと思います。

 以前はGoogle  Formsのアンケート結果ページにこのブログから直接リンクをする方式にしたのですが、このアンケートは継続的にしばらく実施してもいいかなと思っておりまして、アンケート回答ページをあえて閉じずに結果を公表するという方式にしたいと思います。この方式だと、今後回答数が増えて結果の傾向が変化してきたときにも追跡ができるので、面白そうかなと。

 なお、アンケートへの回答ページは一般には公表しておらず、学校の先生経由でのみ展開することにしています。「ウチも回答したい!」という場合は、ぜひ筆者までご連絡ください。見ていただくとわかりますが、学校名や生徒児童の個人名は一切収集していませんので、純粋にオンライン・遠隔教育を受けた感想が分かってメリットも多いと思います。

 ということで本日はアンケートの公開(4/3)から一次締め切り(4/24 23:59)までにご協力いただいた73名の生徒児童の生の声を紹介したいと思います。

  • 回答者の学習に使った端末に関する質問
  • どのような教科が遠隔・オンラインで教えられているのか?
  • 生徒児童は遠隔・オンライン教育のどこに困っているのか?
  • 生徒児童が遠隔・オンライン教育をやってみて「よかったこと」は?
  • では、みんなこれからも「オンライン・遠隔」教育を受けたいのか?

 

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もし自分が学校ICT導入責任者だったら…「今ならこうする」の一案 -ノートをデジタル化して学習者の機動性を高める-

最近、世の中の話題がインフラ・OS・端末の話が中心になっていますが、これらを適切に選ぶには「何に使いたいか」「それで何を成し遂げたいか」が大事、という話は何度かこのブログでも触れています。

 しかし、なかなかその具体例の明示って少ないな、もしくは、今の時流を踏まえて新しくなっていないな、と感じることが増えてきた。今日は ぼくのかんがえたさいきょうのガンダム ではないですが、自分がもしどこかの学校や教育委員会で学校ICTの導入責任者になり、限られた予算で学習者にとってメリットがあり先生の負担が少なく「まず第一歩を踏み出せてみんな幸せ」なモデルを考えなさい、といわれたら「多分こうするかなぁ」というものを書いてみようと思います。

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 先に目次という形で結論を書くと、以下のような使い方を考えました。 

ただ、以下のユースケースは少々成人教育な色合いが強いので教育学的にはどうなのよ、という批判があるであろうことは承知してますが、「現実的かつ効果的」なアイデアの叩かれ台として少々専門家の先生たちの批判が怖いながらも書いてみます。
 


対象は一般的な公立小5年〜中学校以上

 今回は、文科省のGIGAスクール構想の令和二年度の端末整備ロードマップ小学校5年生〜中学校1年生となっていることを踏まえて設計しました。「中学校以上」としているのは、条件が整えばこれ以上(私学や中高一貫、公立の高校も含む)の学校段階でも同じことが十分通用する汎用的な設計だからです。

 汎用的な設計としたのは、ICT導入初期段階においては、できるだけ教科や科目・単元を問わずに幅広く使えて、全体に浸透しやすいところから着手するのが良いと考えたからです。特定の教科のみで劇的な効果を発揮するユースケースも沢山ありますが、導入初期時点で個々の事例を考えるのは難易度が高すぎる(そして特定教科の声の大きい先生や事例に引っ張られて科目間の活用が極端に偏るリスクもある)と考え、敢えて教科横断・学年学校種横断で使える案としました。さらに「導入するにあたって先生への負担感が小さめ」であるが、「導入した児童生徒のメリットが大きく、使い続ける動機になる(死蔵されにくい)」、そして「他に必要なシステムが少なく安価にスタートできる」こと、そして導入後に先生と児童生徒ともに「導入の意義が認識しやすい」こと(=来年度以降も続けるための動機になりやすいこと)を意識しています。

 

インターネット接続できるインフラはあるが、スピードが万全ではなくてもOK

 これは「ずーっと将来に渡ってスピードが万全でなくてOK」と言っているわけではないので先に誤解の無いようにお伝えしておきますねGIGAスクール構想では最大8割引でインフラ整備ができる仕組みを国がせっかく作ってくれているので、それはしっかり活用してください。(ちなみにあまり知られていませんが私学も使えますよ!)

 ただ、なぜこれを書いているかというと、いくら今回のGIGAのスクール構想で校内のLAN環境が1Gbps(一部機材は10Gbps)対応になっても、今回の予算の建付け上、学校からインターネットに出ていく回線の速度が十分でなくなる可能性があることを懸念したからです。例えば全員が一斉に動画を視聴したり、リッチなアプリを活用したりしても、インターネット接続点がボトルネックになって、満足に使えない可能性がある。そしてインターネットに接続するための回線は学校の「外」にあるため、今回のGIGAスクール予算の対象外(つまり自治体なり学校が自分で支払う必要がある)なのです。

 これで「授業が止まってしまう」とか「準備にものすごく時間がかかる」だと持続的な取り組みにはなりません。そのため、スタート当初はもしかしたら校内配線や機器は整っていても、インターネットが遅いかもしれない、というリスクも踏まえて「それでもちゃんと使える」案を考えました。

 

端末は一人一台のiPad WiFiモデル+Lightning接続キーボード+Apple Pencil互換品

 さて、いよいよ具体的に何がやりたいかを書きます。今回やりたいことを実現するための最も安価な構成は以下の通りです。

 ・iPad(第7世代) WiFi 32GB 想定価格 32,800円 (税込 36,080円) 
  https://www.apple.com/jp/ipad-10.2/ ※教育向け価格は少しだけ安い
 ・Lightning接続の有線キーボード 想定価格 税込 1,000円程度
  https://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_parts.php?ic=439671&lf=0
  ※キーボードは消耗品と割り切って高いものにしない
 ・スタンド機能を兼ねるケース  想定価格 税込 1,500円程度
  例えばhttps://item.rakuten.co.jp/loof-shop/lingchen05/
  ※ケースは、個人的には個性を出すものなので家庭で買ってもOKとしたいが
    最低限のものを用意するならこれくらいか?
 ・LogiCool Crayon 想定価格 6,800円(税込み 7,480円)

 上記の合計価格は税込みで46,060円ですが、ある程度まとまった数で調達すれば十分GIGAスクール構想の端末 45,000円 の定額補助に収まるでしょう。ただし、ケースはあくまで傷防止レベルであって、耐衝撃などの性能を持っていない点は注意が必要です。(この辺はiPadに限らずどの製品でも同じですが)

2020.2.10 追記:ケースやペンなどの周辺機器は補助対象外(←の資料6ページ目)だった…。かつ、本体価格が4.5万円を下回る場合は、補助額はその本体価格まで。となると、4.5万円に収めても周辺機器の上記1万円相当分は、自治体の持ち出しになりますね。それならば、というのも変ですが、容量128GBの上位モデルが42,800円(税込 47,080円)なので、自分ならこちらを選びますかね…

 ポイントは、今回はキーボードは「使いたいときだけ使う」としている点。なので最低要件を満たすレベルにしかしてません。今回の提案はキーボードでの文字の入力よりもハードルが低い部分よりも先にやったほうが良さそう、と考えての提案だからです。また、キーボードは何よりもまっさきに壊れやすい部品なので、交換が利きやすい安価なものを外付けにしておく(本体一緒に壊れるリスクを最小化する)という考え方です。

 

SAMRモデルに基づき、まずは学習者の「ノート」のSubstitution(代替)から
   →受益者負担で「Notability」というアプリを買ってもらう

 今回の提案の最大のポイントはここです。導入したICT端末で何をやりたいかというと「ノートをデジタル化する」。以上です。

 いやそんな単純でいいの?と思うかもしれませんが、効果は絶大です。ノートのアプリとして筆者が以前からパワープッシュしているのが「Notability」というものです。 

 

Notability

Notability

  • Ginger Labs
  • 仕事効率化
  • ¥1,100

apps.apple.com

 

 お値段1100円。ですが、これを1回買えば、もうノートを文具屋さんで買わなくてよくなります。在学中ずっと使えるノートが1100円で買えると思って良いです。なのでここは「受益者負担」としました。学校が校納金、あるいは教材費として一括で集めて児童生徒に配布するのが良いと思います。

(2020.2.9 21:30追記: 上記イタリックの部分の「受益者負担購入」が、WTO調達の仕組みを回避しようとしている(違反)のでは?という指摘がありましたので追記しておきます。この部分の適法性については識者の皆様のご意見を仰ごうと思います。)

https://www.mext.go.jp/content/20200130-mxt_syoto01-000003278_15.pdf

 

この提案でできるようになること

 45,000円 の端末+周辺機器と、上記のアプリでできることは絶大です。

 ・生徒はiPadとペンで日常のノートをとる(縦位置がおすすめ)
 ・ノートをとるのと同時に録音ができて、授業内容はいつでも聞き返せる
  (自分の筆跡と録音がリンクするので、聞き返したい部分の頭出しも即座)
 ・ノート内に板書の写真や授業の様子も挿入できる
 ・録音付きのノートは友達にAirDropを使って即座に共有できる
  (欠席した時も友達のノートを受け取れば音声もついてくる
 ・先生にノートを提出する時には、PDFに出力してGoogle DriveでもOne Driveでも
  好きな方法で提出するだけ
   →先生も提出されたノートにiPad上でPencilで赤入れをしてPDFを戻すだけ。
    物理的な回収と返却作業が不要
               ロイロノートスクールMetaMoJi Classroom  などを組み合わせるのもGood
 ・児童生徒は過去のノートふくめ書いた内容を「検索」できる
   →あの内容いつ習ったっけ?を即座に検索して探し出せる
 ・ノートは全部、クラウドにバックアップされる
   →端末が故障しても児童生徒に学習ログ紛失のリスクが少ない
 ・上記の「バックアップ」をするときだけインターネットにつながっていればいい
   →それ以外はぶっちゃけオフラインでもOK
 ・なによりも、児童生徒のノートが紙からiPadに置き換わるだけなので、先生は
  必ずしも授業スタイルを変えなくてもよい
   →もちろん、今後もずっと変えなくていいわけではない。でも、児童生徒が
    ICTに慣れている状況になれば、先生たちの授業スタイルも自ずと変わる。
    後述するようなインタラクティブなやり取りをきっとやりたくなる。

 筆者はiPad Pro 初代(およそ4年半くらい前)から今までおよそ4年半、iPadをノート、議事録・講義講演録、メモとして紙をできるだけ使わない生活をしてきた経験があります。そしてこれを経験すると、大抵の人が抜けられなくなります。事実、筆者が実際にNotabilityを使って色々やっているのを見て周囲に同じ組み合わせでiPadを購入した人の数(通称:被害者)も多数。学習者にとって明確なメリットがあるものは、ほっといても使われますので死蔵される心配が少ないのです。

ちなみに、ノートをデジタル化するメリットは前回の記事にも少し書きました。

it-education.hatenablog.com

 PCは「キーボード」に慣れないと使いにくいという考え方がありますが、最近のパソコンやタブレットは、ペンの性能が10年前とは段違いに進化しており、ほぼ紙と同等の感覚で書けるようになっています。手をついたまま書き込んでも誤作動しない、かなりのスピードで字を書いてもちゃんとついてくる、など。
 しかも、最近では手書きで書いた文字をあとから「検索」できる技術も進歩しています。大量の授業ノートの中から特定の単元の情報を検索することだってできます。綺麗な字で書いた方が検索に引っかかりやすくなるので、字を綺麗に書くわかりやすい動機も生まれます。
 さらに、書いた後に、書いた文字や図を移動させたり、拡大縮小ができるという、紙には絶対にできない芸当も可能です。一人一台の手書きが可能なPCが児童生徒の手元にあれば、ノートを代替することも可能になるのです

特に、書いたあとの移動や修正、図や写真のコピペという、デジタルならではのメリットとアナログの良さが融合しているのがポイントです。

 

一人1アカウントの「Managed Apple ID」を用意し、200GBのクラウド容量割当
   →書いたノートをすべてクラウドに集約

 あまり知られていませんが、Appleは一人1つのIDがこれからの教育に必須になることを見越して、学習者用のIDを大量発行できる仕組みを教育向けに無償で提供しています。それがApple School Manager です。
 当方も使っていますが、少し発行に技術的知識が必要なところを乗り越えれば、とにかく大量発行できて、すぐに生徒児童一人ひとりに必要なIDが発行できるので超絶便利です。小中でまずスタートするには、これで充分でしょう。惜しいのが、この仕組みは有料であるMDM(Mobile Device Management)というApple以外のメーカーが提供する仕組みとセットで導入しないと効果があまり出ないということ。ここはMDM側にスペシャルプライスを教育機関向けにだしてほしいところです…。

 なお、この方法だと事実上いくらでもIDを払い出せるのですが、注目すべきはその払い出すID一つ一つに対して「1IDごとに200GBの無料のiCloudストレージがついてくる」ということです。なので、前述したノートはほぼすべてこの中に放り込んでも、卒業までに充分余りがあるくらいの容量です。

 さらにIDの維持にも特に費用がかかりませんので、卒業後もそのままそのIDを活かしておく、ということも可能です。このあたりは小中を一緒に管轄している公立の教育委員会は「小中連携」という意味で一緒に管理しておくとよいでしょう。今後この仕組みがどう変わるかわかりませんが、中学校卒業後以降も、IDをそのまま「卒業生」扱いで残しておいても、今のところ問題はなさそうな設計になっています。

 

先生が慣れてきたらClassroom Appを段階的に使う

 もう一つ、Apple の学校向けサービスには無料で使える授業運営支援「Classroom App」アプリがついてくるという点も注目です。先生のiPadまたはMacから、児童生徒がいまどのような作業をしているかを見ることができたり生徒児童が発表をするときに先生のiPadMacに生徒のiPadの画面を大写しすることができます。(児童生徒がわざわざ前に出てきて、ケーブルをつないで、切り替わるのを待って、はい発表、という流れを組まなくても、着座もしくは座席で起立してその場で発表、ということがかなりスピーティーにできます。)
使いすぎると授業の統制が厳しくなるのでそこは注意すべきアプリですが、無料でここまで使えるのか、と感心するアプリです。

 また、ノートをiPadに置き換えたとき、先生が期間巡視をするときに紙のノートと比べて状況を見にくい(画面が角度によっては光ったり、暗い画面で使っている児童生徒のものが見にくい)という課題があるのですが、これは先のでClassroom App を使って手元で児童生徒のノートを大写しして見ることで代替できますし、児童生徒の立場では横や後ろで立ち止まってノートの内容をじっくり見られると「監視されている気がする」と嫌がるケースもあるので、一つの手段として知っておくと良いでしょう。

 さらに、GIGAスクール構想での整備対象にはなっていませんが、iPadを活用している学校が独自予算で整備している場合が非常に多いのがApple TVです。これを使うと、iPadの画像を無線でプロジェクターや電子黒板に飛ばせます。このため、先生はケーブルから開放され、自由に期間巡視しながら提示する内容を変えたり、場合によっては生徒児童の作業の様子を無線で投影することもできます。似た技術としてMiraCastやChromeCast、WiDiなどiOS意外でも使えるものもありますので、導入時に是非併せて検討しておきたいオプションです。

 

 ということで、ここまでの内容については、46,060円+個人負担のアプリ代+MDMなどのシステム代だけで実現可能です。(Apple TVは共用でもよいのであると便利なオプション)

 iPad の最大の武器はなんといっても「手書き」です。Word や Excel のような標準のオフィス系アプリも無料で使えるのですが、これらがすべて手書きに対応しているのもポイント。しかも、書き心地がほとんどノートに書いているのと変わらないので、紙のノートから移行しても最も違和感が少ない。そして、「手書き」を重視するならば、実はノートブック型よりもタブレット型のほうが断然使いやすいし、ノートをiPadで置き換えれば、机の上に置かれるモノが「増えない」のもポイント。ということで、今回は「ノートをiPadで置き換える」ということによる児童生徒のメリットに焦点をおいた場合の、おそらく現時点での最適解を提案してみました。

 

おわりに、「○○が絶対にいい」と断言する人には要注意

 最後に大事なことを。もし児童生徒に使ってもらうPCや端末を選定するときに、どういうことをやりたいかを伝えずに「何がいいんですかね?」と聞いて「Windows」「Chromebook」「iPad」と回答する人は、要注意です。そう回答する人は、おそらくその環境しか使ったことがないか、何らかの理由でその端末を勧めたいケースが多いからです。同じ理由で「○○なんて学校に導入するのはムリ」と、具体的なシーンも付さずに断じて憚らない人も要注意です。

 大事なのは繰り返しになりますが「何をやりたいかによって最適なPC・端末は変わる」ということです。なので、上記の質問をしたら「どういうことをやりたいですか?」と聞いてくれる人に相談するのが良い。さらに「こういうことをしたいんだけど、iPadChromebookWindowsってそれぞれどうかな?」と聞いて、各OSごとに具体的なアプリ名や使い方が出てくる人であれば、ぜひアドバイスをもらうべきでしょう。

 よく、「ハードウェア(パソコンや周辺機器)のことはソフトを作っている人にアドバイスをもらうといい。逆にソフトウェアのことは、ハードウェアを作っている人にアドバイスをもらうといい。」という考え方があります。これはけっこう正しいと思っており、両方にある程度精通している人であれば、かなり的確なアドバイスをくれるはずです。

 今回の記事では「手書き」という要素を活かして「ノートをiPadに置き換える」という割とシンプルで現実的な提案をしていますが、あくまで「この用途であればたぶんiPadが記事執筆時点では最強」というだけの話であって、Windows や Chromebook を否定しているわけではまったくありません。(筆者は仕事とプライベートで、Windows,Mac,Chromebook,iPad,iPhone,そしてAndroidスマホをそれぞれ使い分けており、自称6OS並行利用ユーザーです)
 さらに「執筆時点で」と断ったのは、Microsoft の Surface はペンや製品の品質が年々すごく良くなっていて、そこにOneNoteというアプリを組み合わせると手書きが相当いい感じまなところ来ています。あとはAirDropに代わる仕組みが実装されればiPadと同等か、とも感じていますが、まだ価格的にiPadのほうが優位、というのが実態なだけです。

 
 逆にいえば、みんなでスプレッドシートや文書(Word、Pages、Google Docs)上に一緒に書き込みをして共同編集作業をするならば、現時点ではChromebookが最強です。

 既存のパワポやワードの文書・教材資産を活かすならWindowsのエコシステムの大きさは強力です。

 それぞれに良さがあり、それぞれに弱点がある。そして4.5万円ですべてを満たすのは難しい。すべてを一つのデバイスで満たすのが難しいからこそ、大人たちは一人で複数のデバイスを使っているというのもまた事実です。とはいえ、最初の一台として大事な選択をするのであれば、やはり「なにをやりたいのか」を明らかにしてからOSのやハードを選定したいところ。時間的な制約でなかなか難しいですが、今回はそのような悩みを抱えている方に向けて情報提供できればと思い、一つのユースケースに絞って書いてみました。

 

補遺:

小5-6から紙ではなく画面上で「手書き」をさせることに対する抵抗感はあると思います。そこは自分も認めるところです。果たして教育学的な知見からアリなのかな?とも思います。ただ、児童生徒の目線から見たときのメリットはとても大きいため、成人教育的な観点が強い案とは認めつつ、当方個人がとっても恩恵を受けていることなので、これを小中高に広げられたらな、と思っています。

いろいろご指導いただけますと幸甚です。

なぜ「学校にPC一人一台」が必要なのか?-生徒児童と先生の立場で考えてみる-

「小学生に一人一台のパソコンを配る意味なんてあるの?」

「今まで無くたって授業できてたんだから、そんなの無駄でしょ?」

 年末から1月にかけて、こんな声がよく聞こえるようになってきました。改めて、「なぜ一人一台だといいんだっけ?」と思い、そういう記事を探してみました。ところが、意外にも、ない。

 特に、ICTが苦手な方でもわかりやすく、短くまとまっている記事が少ない。ならば、書いてしまおうと思って今回のエントリーを書きました。7000ー10000字クラスが多い本ブログとしては短めの4000文字弱にまとめました。

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  • 1.試行錯誤の回数が紙より圧倒的に増えるから
  • 2.ちょっとしたことをすぐ調べることができるから
  • 3.いまやPCで紙とほぼ変わらない(むしろ上回る)手書きができるから
  • 4.過去の学習資産をすべて持ち歩くことができるから
  • 5.今までの学校で発揮できなかった才能が発揮されるから
  • 6.一人一台のPC配布は生徒児童の「選択肢」を増やすから

 

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GIGAスクール構想(学校PC一人一台)成功に向け、SE時代に配慮していたことを公開してみる

 当方は以前、教育機関向けのICT導入を支援するSEとして動いていました。GIGAスクール構想の実現に向けて全国の教育委員会や私立学校がインフラ・端末整備のために動いている(そしていろいろ困っている)現況を勘案して、そのへんのノウハウをせっかくなのでまとめて無償で公開してしまおうと思います。

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 通常であればこういう話はいわゆる「飯の種」でもあるのであまり堂々と公表する企業人は少ないのだと思いますが、今回は

学校向けのICT環境整備についてきちんと取り組んだ経験がある企業の関係者は結構少なく、今回のように全国一斉に調達に向かって動く中では間違いなく技術者不足が起きると懸念していること
・当方は現在Z会に所属しており、オンライン英会話やCBTベースのアセスメント、AI技術を用いた教育用ソフトウェアなどを提供する立場にありますが、自社のものを使ってもらえるかどうかは別として、こうしたソフトウェアが「ちゃんと動作するICT環境」が担保されないと誰も幸せになれないと懸念していること
・「一人一台」が長年の望みであった当方としては、個人とか組織の枠なんてどうでもよくて、今回の多額の税金を投じて行われる国家プロジェクトを通して一人ひとりの児童生徒がICT環境をある意味「当たり前」の学習手段として定着させ、(これをあくまで一要素として)次の世代が自分たちを遥かに上回る「すごい人たち」になれる素地を作りたい

という考えで書いてみます。ということで例によって所属は明らかにしていますがこの記事も「個人の見解」であり「組織を代表する意見ではない」ということを明示したうえで以下の内容について情報提供したいと思います。

 なお、以降記載することはすべて「筆者の経験や見聞きしたこと」によるもので、情報元となるソースはほとんどありません(聞かれても困る)。というのも、ICT導入における世の「失敗事例」や「トラブル事例」ってほとんど表に出てこないからです(これはこれで収集したいとも思っていますが)。あくまで本記事の文責は筆者にありますが、この記事内の情報のどの部分を信用するか、そしてどの部分を活かすかは読者の裁量と責任であるという点も明記しておきたいと思います。

 

  • やりたいこと編:そもそも「ICT」で実現したいこと、解決したい課題は何か?
  • ソフトウェア編:やりたいことを実現するソフトウェアは何か?
  • ・ハードウェア編:やりたいことを実現するのに近いハードはどれか?
  • ・インフラ編:やりたいことが実現可能なインフラ設計とは?
  •  制度設計編:やりたいことを生徒児童が実現できる制度設計とは?

 

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2020年の抱負:教育用コンピュータ「一人一台」の実現に向けて

 2020年が明けました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 今年はいろいろと決意をしている部分があり、2015年以来となる「昨年の振り返りと今年の抱負」について書いてみたいと思います。

 タイトルの通り、今年の抱負は”教育用コンピュータ「一人一台」の実現に向けて”、組織人・個人としてできる限りの支援を行うことを掲げたいと思います。

 

筆者は、2020年1月1日現在、組織人・個人として以下のような活動をしています。

株式会社Z会の「経営戦略部 事業企画課」という部署にて主に新規系事業を担当する管理職として従事しており、その業務として中央省庁と一緒に働かせていただいている(経済産業省「未来の教室」実証事業文部科学省「Edu-Portニッポン」等)

※昨年より担当させていただいてる業務

経済産業省「未来の教室」実証事業 

文部科学省「Edu-Portニッポン」公認プロジェクト

 

一般社団法人iOSコンソーシアム代表理事として、学習者中心を軸とする「教育のICTによる拡張」を目指し、主に全国の教職員を支援する活動をさせていただいている

「一人一台」に成功している先進校の取り組みの普及促進活動

近畿大学附属高等学校 乾 武司教諭による「一人一台」の目的と効果を啓蒙する活動の一環として、講演の模様をYouTubeライブ配信アーカイブ配信)

 

(主に教職員の方向けに毎月テーマを変えた「月例勉強会」を開催し、先端を走る方を講師に招き最新動向や事例を共有、昨年は静岡、札幌、広島への出張開催も実現)

※こうした活動は2015年の6月から行っていましたが、2019年4月からは所属会社の承認を得て、iOSコンソーシアムを「教育特化型の組織」として再編成し、当方がその代表理事に就任する形で運営をしています

 

個人として、本ブログを通じた情報発信や課題解説・解決策提案

(昨年は「プログラミング教育」によく用いられているWebのプログラミング学習環境”Scratch 3.0”がIEをサポートブラウザから外したことに端を発する学校のブラウザ問題について3回に分けて記事を執筆しました)

また、昨年暮れにはこのようなアンケートを企画、個人として実施し、結果を本ブログで公表しました。

 

 

このように、当方は公私ともに「教育とICT」というキーワードで動いており、その基本的な行動原理は以下のスライドに示す考え方で進めています。

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野本の行動原理

 本ブログ(特に先に示したIE縛り問題に関する記事)では幾度となく「相互理解」が重要になるという言葉を使っていますが、教育とICTという領域は、教育者とITエンジニアという、かなり異なる言語を話す人たちが協働しなければ成立しない領域です。当方はKDDIでの8年間の勤務で主にITエンジニアとして、そして現職のZ会で2年半強の勤務を通じて教育の領域で活動する企業人として、また、両親がそれぞれ大学と公立中学校で教鞭をとっている元に育った個人として、異なる文化の間のインターフェースとなり、「教育者」と「ITエンジニア」のよき通訳として動くことを目指してきました。上記で示してきた昨年の活動は、その一部です。

 

 そんな中、今年はいよいよ、国家施策としての「義務教育課程における教育用コンピュータ一人一台の配備」が動き出します。筆者の今年の抱負は、この動きに対し、これまで従事してきた公私様々な活動の知見を投じて支援をしていくこと、言い換えれば、この動きを進めるにあたって課題を抱える自治体の教育委員会や私立学校をできる限り支援していきたい(具体的には外部アドバイザーのような形で、既存の教育現場が一人一台を実現する上で発生した様々な課題とその解決策を、これから動き出す学校設置者に継承し、よりよい学習者中心の学びの拡張を実現する)と考えています。

 

www.mext.go.jp

 この中で特に重要なのが上から二つ目のリンク(GIGAスクール構想の実現パッケージ :https://www.mext.go.jp/content/20191223-mxt_jogai02-000003329_002.pdf)で、文部科学省だけでなくインフラ面で総務省が、ソフトウェア面で経済産業省がそれぞれ補正予算を計上し、この動きをバックアップしているということです。令和5年度までに小1〜中3の義務教育課程には公立・私立を問わず「一人一台」が実現できる工程表が引かれ、かなり多額の補助金がこの実現のために投入されます。

 特にコンピュータやインフラについては国庫からの半額補助、従来より措置されている地方交付金を組み合わせることでなんと整備に必要な金額のうち最大8割(地方交付金が利用できない自治体もあるのであくまで”最大”)が支援される形となり、特に財源不足で教育用コンピューターとそれを支えるインフラを整備できなかった自治体(公立学校)にとっては千載一遇のチャンスとも言えます。(そして意外と見逃されていますが、私立学校にも119億円の補助金予算枠があります)

 また、省庁のみなさんは「インフラについては令和元年〜令和2年の間のワンチャンス」とも言っています。この好機を逃さないよう、前職でインフラエンジニアとしての業務経験(特に私立学校を中心にSEとしてICT環境の導入サポートをしていた経験)と現職で教育分野の言語をある程度理解しているという強みを生かして、学校が理解しやすい形でICT化のメリットの浸透、超えるべき課題の共有、デメリットに対するワークアラウンドなどを教育機関と同じ目線で提供できればと考えています。ここには、2018年度に取得した「教育情報化コーディネーター2級」(日本に200人程度の認定者がいる、教育のICT化に対して一定のスキルを保有することを証明する資格。基礎的知識を問うCBT、他国の事例などを踏まえ出題される記述式試験、仮想自治体の課題解決のための模擬提案書作成、その内容を説明するビデオを撮影し、口頭試問による面接合格が必要で、一般的に「ICT支援員」の指導育成ができるレベルとされている)の知見も動員し、現場との相互理解を大事に協働していきたいと思っています。

 ということで、GIGAスクール構想」の発表を受けて「どうやってこの流れをつかもうか…」「課題は盛り沢山だけどこれを前向きに捉えて進みたい」という教育委員会の方、私立学校の方、ぜひ当方に連絡をいただければと思います。また、Z会iOSコンソーシアム、あるいは当方個人を通じて趣旨に賛同いただき、ご一緒いただける企業・組織団体の方とも是非連携をできればと思います。

 当方一人ではできることには限界がありますが、Z会、およびiOSコンソーシアムという「組織」も動かしつつ、今年は一つでも多くの教育機関が「一人一台」を「学習者中心」での価値づくりを目指して実現できるよう、全リソースを投下していきたいと思っています。といっても、抱えられる案件には限度がありますので、できるだけ早く、そして強い達成志向を持っていらっしゃる自治体・私学の先生たちと一緒に戦いたいと思いますので、ぜひ「ご一緒したい!」という方がいましたら、当方までご連絡ください。なお、GIGAスクール構想は義務教育課程までが明確なサポート対象ですが、高等学校以上については主にBYODを中心とした設計になると見ておりまして、学校向けBYODの導入についてもご支援ができればと考えています。

 ご参考までに、当方の技術面での強みはiOSiPad)とその周辺ソリューション(フィルタリング、MDM、各種コンテンツ、これらの導入支援および保守運用)になりますが、公私を通してWindowsChromeBookMacBookなど各種端末を日常的に使い分けており、複数OSが交錯する領域についてもぜひやってみたいと思っています。加えて、進化の早いIT業界であれば必ずどこかで「未知の課題」に直面するので、そこについては決して「知っているフリ」をすることなく、課題を丁寧に検証することを通じて私自身も常に「学び続ける」ということを宣言したい(これがある意味今年のもうひとつの抱負)と思います。

 連絡手段ですが、Facebookをやっていらっしゃる方は、Facebookで「野本竜哉」を検索していただき、メッセンジャーからメッセージをいただくのが最も早いです。Facebookをやっていらっしゃらない方は、当方あてにメールをいただければと思います。メールアドレスは:i.found.it.in.the.river70【あっと〕gmail.com です。

 

 最後に、あくまで「一人一台」の教育用コンピュータとインフラ整備は、「学習者中心」の教育的価値を実現するための手段でしかありません。導入や整備を目的とするつもりはありませんし、導入をするのであればなぜ多大な労力と知恵を投入してこれを実現するのかという「目的(大義)」がとても大事だと思っています。そこには「どのような教育を提供したいか」「生徒児童にどのように育ってほしいか」というビジョンがあり、それを「ICTでどのように補強するか」「ICTでいかに加速するか」という観点が必要不可欠です。

 少なくとも、当方の現所属は教育用コンピュータとインフラ整備のどちらも生業としている会社ではなく、端末やインフラ機器の販売を通じて利益や売り上げを挙げたいとは全く思っていません。あくまで当方は、多少なりとも教育の言語を理解するICTのエンジニアに近い立場で双方を通訳し、相互理解を促進する立場を志向しています。ICTで何ができるか、どのように教育が拡張できるかを具体性を持って組織と関係する企業が認識し、同じ目的を共有し、様々な課題解決に向けて協働できる状況を目指したいと思っていますので、ICTに対する苦手意識がある方でも、遠慮なくお声がけください。当方は高校3年生の時からICTを「学習者」の立場で活用してきて、学習者目線でこの領域の課題や利点を見つめてきた人間ですので、きっとお力になれると思います。

 

 ということで、本年もよろしくお願いいたします。

学校で「一人1台」環境で1年以上学んだ児童生徒170名に実態を聞いてみた

 本日は、独自に収集したアンケートの結果を紹介しながらこのブログらしい「学習者中心」の目線で教育におけるICT機器の活用について考えてみたいと思います。

 このブログでは過去、一貫して「学習者」の立場で自分専用の端末のメリットを(資格試験や情報のインプットなどの具体的なシーンを挙げながら)紹介してきました。そんな中、今年の後半に入ってから、急速に国が「一人1台の教育用端末を義務教育で当たり前の環境にする」べく、動き出しました。

 特に12月13日に発表された「GIGAスクール構想」では2200億円という巨額の補正予算が組まれ、この補正予算は2019年度の補正予算ということもあり仕組みさえ整えばすぐにでも執行可能というスピード感で動き始めました。こうした報道や急速な動きに、当方の周囲の教育ICTを推進すべく活動している多くの方達は、まさに千載一遇のチャンスとばかりに大いに盛り上がっております。

www.mext.go.jp


 ただ、その中で気になっていたのが、学習者に配布される端末の仕様やその予算、そしてその端末の通信環境を支えるネットワークやソフトなどの話は盛り上がっているものの、「その一人一台環境で学んだ経験のある学習者の声があまり意識されずに、大人たちの都合で議論がなされている」という印象が強いことです。

 学習者中心で物事を考えていくには、特に私立学校などで先行している一人一台の環境の先行事例から大いに学ぶ必要があります。もちろん私立と公立ではかけられる予算が根本的に違いますので全てを同列に語ることはできないわけですが、そうは言っても同様の環境を構築していくにあたって、児童生徒の生の声は非常に有益であることは疑いがありません。

とはいえ、これまでこうした声がなかなか集まってこなかったのは
・率直すぎる意見は学校のイメージに(特に私立学校では生徒募集にも)影響する
・一人一台を実現している学校の情報が断片的で、それを網羅的に知る人が少ない
・一見上手くいっている個々の学校にもそれぞれ課題があることが見えてしまう
など、いろんな理由があって表に出てこなかったのであろう、と考えました。

 そこで今回は
・学校名、個人名、学年など個人の特定に繋がる情報は一切問わない
・個々の回答内容を表に出さず分析データのみを利用する
・上記を条件に、当方が直接つながりのある「一人1台」を実現している学校の先生を
 経由してアンケートを実施していただく
・アンケート自体は1年以上、一人一台の環境を利用していて、現在中学生以上の方を
 対象として限定(これらの条件を満たす生徒を学校の先生を通じて抽出)
・1校あたりの回答上限数を10名までとしてできるだけ特定の学校のバイヤスを排除
・回答者が中1〜最大でも大学生程度ということを意識して質問を簡素化
という手法を用いて、どこまで回答が集まるかをやってみました。基本的にはFacebookの個人的なつながり(といっても学校の先生の友人が300名はいる)を通してヒアリングをし、費用は一切かけず、とはいえ学校の先生を間に介することによってできるだけノイズを排除する工夫をしてみました。

 その結果、表題の通り171名の回答を得ることができました。中には一人が複数回回答している可能性もあり、有効回答は160くらいになるかもしれませんが、いち個人として取れる「学校・学校種・学年横断」のデータとしてはまずまずの分量だと思います。

 もちろん、質問紙の書き方、サンプル数、何よりもサンプルの選び方など、この調査結果はまったくもってアカデミックな分析に耐えるものではありません。
 
しかも、当方の個人的なFacebookでのつながりをベースに進めているので、ものすごく偏りのあるサンプルからの回答になっているとは思います。そういう意味では、このアンケート結果は論文などの引用や参照に耐えるものではないですし、本当は「こういう質問もしておくべきである」などの基本を抑えていないです(逆に言えば、最低年齢が中1であることを考慮してかなりライトな質問量に抑えている)。

 ただ、得られた情報は非常に示唆に富んだものです。少なくとも、回答者の年齢から大人たちがイメージするよりもずっと回答者のリテラシーも内容も深いもので、大人たちの決めた杓子定規によって一人一台の環境でもその機器の可能性を「大人が課した制約のせいで」十分に引き出せていない現実が浮かび上がってきました。
(もちろん、いかにも中二病っぽい回答も散見されますが、その辺りから生徒があまり忖度せずに素直に答えてくれていることも見えると思いますので、それはそれでよしとします)

 とはいえ、先に申し上げたようにこのアンケートは手法もサンプルもかなり乱暴なものであり、鵜呑みにすることは推奨しません。ただ、こうした傾向が本当に一部のものであるのか、ということをぜひ研究者の方や今後「一人一台」を進めていこうとしている事業者の方々が意識して、より広範囲で正確性を担保した調査を「学習者」を対象として実施するきっかけになればと思っています。

※なので「なんでこういう質問してよ」といった要望に対して当方の答えは基本的に「より良い調査ができるのであれば、ぜひ貴殿がそれをやってください」になります

 

 このアンケートにあたり、ご支援をいただきました先生方、そして回答いただきました170名の生徒の皆さまに心から御礼を申し上げるとともに、ここにアンケートの結果を公開させていただきます。

 なお、Google Formsを使ったアンケートの分析共有機能を使っているので、回答内容についてはすべて原文ママです。
 また、選択肢については長くて画面表示しきれないものがありますが、それについてはグラフのバーの部分などをポイントすることで選択肢の全体がみられますので、参考にしてください。

 最も重要なのは、「自分専用端末があることのメリット」と「デメリット」に関する自由記述回答の内容かと思います。

docs.google.com

 

 

アンケートの回答についての筆者の所感

・当方のつながりだと(ブログの過去記事をみてもわかるように)どうしてもiPadシンパな方が多いため、端末の利用者サンプルが異様にiOSに偏っている
 ※ただし、できる限りChromeBookWindowsの一人一台環境の学校や、そうした
  学校との接点を持っている人へのアプローチは試みました
・全体として回答者が高校生に偏っているが、別の質問を見てもわかるように、一人一台環境の利用年数が1-2年、2-3年、3年以上で意外と均等になっていることから、回答者の利用経験は中学校時代も比較的多い
・170名の回答者のうち、約8割が「端末を壊さず1年以上使っている」
 ※自然故障は5%くらい、画面割れ修理経験者は11%程度
   →個人的には、思っていたよりも「少ない」印象
・もっとも端末を活用している授業1位が英語というのは想像通りだとしても
 第二位が国語というのはちょっと意外であった
 (そして総合的な学習の時間での利用率は思ったよりも少ない)
・一人一台環境のユーザーの8割がメリットとして「ちょっとしたことがすぐ調べられる」を挙げている
視力への影響を挙げている生徒が3割いる
困ったことの自由回答で圧倒的多数なのが「フィルタリングが強すぎて調べ物に支障がある」 → これは非常に由々しき課題
・先生端末と生徒端末のWebフィルタリングのレベルが異なると、先生がお手本として
 指示したサイトをいざ授業で生徒に見せようとしてもブロックされることがある
  →フィルタレベルは生徒と先生で揃えるべき?
iPadだとできることの制限があるという人も少なくなく、本当はやはりMacBookやPCなど自由度の高い端末が欲しいという本音が見える
・学校のインフラ(特にWiFi)が貧弱で問題になっているという声もかなり多い

 あとは、この結果をもとにどのように感じて、どのように動くか、はそれぞれの関係者の皆様次第だと思います。もちろん、この結果を参考にするかも、しないかも、皆様の選択に委ねられています。

 願わくは、一人一台の学習用端末の整備が、どのような形であれ、これからの未来を担う子供たちの目線で「ちゃんと役立つもの」になる、ということに尽きます。筆者は教育の究極の目的は「自分たちの世代よりも次の世代をすげぇ奴らにする」だと思っているので、そのためにも大人たちが余計な制限をかけて端末が文鎮化するような事態ができるだけなくせると良いなと思っています。

重要な真理:端末は、配布した最初の1ヶ月の活用状況でその後数年間の命運が別れます。初動で思ったよりも活用されず、あとからリカバリーに成功した学校はほとんどありません。ソースは当方がこれまでいろいろ聞き取りをしてきた学校の意見で、明文化された論文や情報源などはありません

ベトナム出張トラブルで試された情報リテラシーと英語

 久しぶりの更新は、仕事でベトナムに出張に行く際、人生で5本の指に入る冷や汗をかいた経験について書いてみたいと思います。先に概要を書くと、一連のトラブル対応で「ああ、英語やICTを身近に使えるようになっておいて良かった」と心から思ったという「個人の経験とそれに基づいて感じた個人の主観」を書いた記事になります。

 このブログは教育系(特にTech系)の話題を扱うブログで、筆者が所属する組織を代表するものではなく、個人としての考えを綴っている場所です。特に今回の記事はあくまで個人の主観であり意見であり、その内容を全体化したいとか絶対に正しいとかそういうことを言うつもりはなく、単に個人が直面した事実から個人が思ったことを書いただけ、エビデンスとか言われても…という性質であることは最初にお断りしておきます。

 

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