EverLearning!

モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

コルベカトリックカレッジ レポート編集を終えて

今回のレポートを作成する中で「企業の普通は学校では異端」という気持ちを新たにしました。

昨日のレポート読者の一部から「感動したけど、そんなに突出したことはやっていないよね」という意見を複数聞きました。実は何を隠そう、私も最初はそう思った一人です。

学校という環境とスタートラインを考えると、同校の取り組みは革命そのもの。なので、時間をかけてレポートにしようと思ったわけですが、なぜ最初にそう思ったのかな?を考えてみました。

上記の意見を挙げたのは(母集団が少数なので断定はできませんが)「企業」の人が多かった。私も企業の人です。たぶんここに答えがあります。
ある程度の企業であれば、ICT活用は当然で、稟議の回覧や承認、給与明細の公開や管理、人事評定の記録や集約、打ち合わせ議事等を集約するポータル等は、レベル差はあれど導入されているでしょう。昨今ではペーパレス化のためにiPadを活用し、打ち合わせ資料は電子媒体だけ、各フロアに無線LANインフラ完備なんて環境は珍しくない。「当たり前」なんです。

なので、企業の人から見ると、「普通に存在する事を組み合わせている」「会社的な仕組みが学校にも入ってきたんだ」と感じるのではないかな、と。

ということは。実は企業のICT導入先行が、「学校現場に適した製品を提供できない」「学校と話が合わない」という現状は、年々強まっているのでは?

でも、学校にはネットワークやサーバーの専任者が居る訳でもなければ、ITのヘルプデスクもない。そうした状況をきちんと類推し、学校に合わせた解決策を打ち出している企業は、少数派なのかもしれません。これは先日、Facebookに投稿した教育ICTソリューションEXPOの感想にも繋がると思います。以下がその内容。

教育ICTソリューションEXPOを見学に行き、考えたこと。
セミナーで紹介された実践事例や得られた効果は、有意義かつ現実的なもので、レポート等を見る限りでも「有料でも行きたい」と思わせるものだった。実際に大人数が殺到していたことから見ても、時代が求めている、知りたいのはこっち。
・一方で展示会場は「未来」は感じられるけど、導入や説明になると「普通の人」に理解しにくく、「すごいけどウチには無理そう…」というものが多い。いいものも沢山あったのに、資料が完全に企業向けの作りだったり、学校の現状に即していなかったりするのが残念。(理想を提示するのは必要だとは思います)
・意外だったのは(この世界を個人的に見て回っている人間としては)もっと「アプリ」のPRがあるかと思っていたが、ハードやプラットフォームの押しがやたら強い傾向が変わってなかった事。そりゃ、売り上げが出やすいから無理もないですが、少なくとも学校などでは「1台買って試してみるか…」的な先生の「個人」としての動きが結構大切なので、大掛かりすぎて小回りが利かなさそうなこの手の提案はちょっと敷居が高いのでは。これではエンドユーザーである先生の意図はなかなか反映されない。
・総合的に見て、展示会場は出展者の多くが「BtoB」の発想から脱却できていないと感じました。企業が「他の企業」に売り込むのと同じ動きでは、大学や企業内研修などはよいとしても多くの学校、ことさら公立学校は興味を示さないでしょう。
(以下略)

 

アベノミクス効果や教育再生の流れの中で、教育向け市場の拡大を狙っている企業は多いと思うのですが、そうした中で本当に教育に貢献できるソリューションを打ち出すには、まず企業人が今回のコルベの事例を「心の底からすごい」と思えるようになる事が重要かもしれません。

少なくとも、今回は私はレポートを書くなかでそれに気づけたのがよかったな、と思います。