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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

LINE悪者論に見る情報リテラシーの問題

最近、テレビやwebを見ているとLINEを絡めた犯罪やトラブルの報道がとても目立ちます。その最たる例が先日の広島県での遺体遺棄事件で、犯罪者一同がLINEで連絡をとっていたことが大きく報道されたのは記憶に新しいかと思います。
※この件については千葉大学の藤川教授のコメントが非常に的確なので是非ご覧下さい
http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2013/07/post-a8c9.html

多くのLINEユーザーは「別にLINEが問題では無いよなぁ」と感じられたのではないでしょうか。これまでのLINEがらみの事件やトラブル報道の多くは、LINE特有の問題であるケースが殆どありません(強いて言うなら、ID検索により見ず知らずの人とつながれてしまう問題はありますが、これはキャリアごとに制限を実装されつつあるので、じきに解決するでしょう)。

本来、報道というのは中立的で、LINEそのものについては良いとも悪いとも言っていないケースが大半ですが、残念ながら「LINEはとても危険なものであるらしい」という考えを持つに至る人が少なからず居るのも事実です。そうした人の大半は、実はLINEを使った事が無い人であるように思われます。

こういう話は何も今に始まった訳ではなく、インターネット、掲示板、出会い系サイト、学校裏サイト、プロフ等など、これまで同じようなトラブルが表に出ては、大人達がヤバいと言い始める頃には既に問題は別のサービスに移っているのが実態かと思います。これまでいくらでも同じような話は繰り返されてきたのです。
※ただ、LINEは世界で2億のユーザーを抱え、ひとつのインフラとして生活に根付いているという意味では次元が違うと言えるかもしれません。

結局、これらのすべてに共通する話は「大人達の情報リテラシーの貧弱さ」に尽きると思います。とはいえ、新しい概念を受け入れるのは年を取るほどに難しくなるというのもまた事実。ただ、分かる人が近くに居れば、教えてもらうことでキャッチアップすることも出来る(事実、LINEは子どもと親の連絡手段として便利なので親世代にも波及している)のです。そういう意味では、若い人たちがきちんとしたリテラシーを持っていることはとても重要な事だと考えています。

そこで私は以前、日本大学経済学部で講演させていただく機会を得た際に、こんなスライドを差し込みました。

f:id:nomotatsu:20130805222747p:plain

この考え方はどこかから引用したものではなく、自分で勝手に考えたものです。ですが、そんなに外していないと思っています。
どんなICTサービスにも、リスクがあるのは間違いない。新しい事が出来るようになることの裏には、見えないトラブルが潜んでいる可能性は常に有りますので。

なので、私はICTサービスを使ってリスクを感じたり、実際にデメリットを被った結果、使う事をやめる判断をした人は「+」としています。

しかし、昨今のLINEがらみの報道の中で、残念ながら「−2」的な行動をしている人を時々見てしまいます。残念ながら、会社の中でも、社会の中でも、使った事の無いものを否定する人が少なからず居るのが現実です。これは、人の話になるので一朝一夕にどうにかなるものでは無いと思います…。

ですので、このスライドを表示して大学生の皆さんには、「かならず-2的な動きをする人に困ることはあると思う。だが、それを乗り越えたり、変えられる力を持っているのが皆さん。学生のうちに、いろんなサービスをまずは”使ってみて”、そしてリスクもなるべく多く理解しておく。最終的に、+が付いている状態のサービスを1つでも多く増やすようにすると良いと思います。少なくとも、多くの大人たちは、若者の新しい感性や考え方に期待しているものですよ。」という話をしました。

もちろんこの話は大学生に限らず、殆ど一般的に当てはまります。情報リテラシーを伝えることはとても難しいと考えられますが、私はシンプルに上記の図における「+を増やす事」に取り組む事で、リテラシーがかなりの部分は養えると思っています。

言い換えれば、使ってみなければ何も動かない。使わせないように制限するようでは、当然リテラシーも何も育まれない、とも言えます。