教育ICT推進の背景6:就活/研究室編
PCと同等のブラウザ環境を出先でも使えること。これは、この数年でスマートフォンの普及で当たり前になったものの、自分が就職活動をしていた2008年の3-4月頃ではまだ、珍しかったのです。iPhone 3Gが日本で発売されたのが、この年の7月だったからです。
担当していた受験学年を無事に送り出し、塾講師を引退したのが3月初頭。ほぼ、就職活動が本格化する時期に、身体を身軽にして短期集中決戦を挑もうと思っていた私は、このタイミングまでに色々な準備をしてきました。
具体的には
− はじめから大学の支援をあてはせず、推薦に頼らず自由応募で戦う前提で情報収集や事前準備を進めた
− 業界は通信業界を第一志望群に据え、子会社にて教育関係を扱うメーカー、教育関連のソフトウェア企業、出版関係の順に優先度を割り振った(この辺りの明確なポリシー決めが無闇に受験企業を増やさない事につながり、余裕のある就職活動ができました)
− 企業のマイページ等を早急にチェック出来るようにするため、快適にPCのサイトが閲覧できるイーモバイルの「EM・ONE」を購入(販売員特権もあり色んな機種を比較検討し、安価に購入できた)
− SPI対策にニンテンドーDSのソフトを試験が本格化するよりかなり前に購入塾講師への移動中や隙間時間に適宜実施(それでも在庫確保に苦労したが、最終的には中古ソフトショップで購入)
− mixiなどのSNSで受験すべき会社の情報や口コミを自己発信型で収集しつつネット上の様々なサービスで情報も日々収集して回った(投稿も積極的に実施、その反応から別の情報を引き出す技も利用)
特に、当時の就職活動はPCが前提のものが殆どだったのですが、EM・ONEのおかげで移動中の電車でマイページやリクナビ/マイナビ、大学のwebメール等がすべて確認できました。そのため、企業の会社説明枠争奪戦や選考通過後の日程予約も楽勝で、別の企業の選考を受け終わった後の駅のホームでKDDIの一次選考の結果を確認、その場で二次選考の日程を予約した事を覚えています。
また、SPI対策は全開のノートでも書いた通り、塾講師の経験のおかげで答えを素早く、なるべく暗算で出せる手法を身につけていた事が大きなプラスになりました。当初は全く想定していなかったメリットがここで活きたので、世の中何がどこで役立つか分からないものだな、と思ったものです。
おかげで、大手企業の選考が本格化する前に内定も確保し、安心して選考に望めました。結果的に、この就職活動の段階で概ね4年半ほど販売の現場でお世話にもなってきたKDDIから内定を頂くことができ、GW前に私の就職活動は終わりになりました。
ちなみに、私に教育ICTの道を拓いてくれたソニーは、最終面接まで進んだもののご縁がないという結果に終わりました。高校受験や大学在籍中も、自分はずっと周囲にソニーに行きたい、と話していた事もあり、この結果だけは就職活動において悔しさを残しました。
ただ、受験勉強を勝ち抜く勇気を与えてくれた事、自分に強い軸を与えてくれたソニーの事は今でも大好きですし、自分にとって大切な存在です。今後、仕事などでソニーと一緒に何かが出来る機会があれば、それは本当に嬉しい事だと思います。
無事に就職活動を終えた私は、携帯販売と教授から紹介してもらった別大学へのティーチングアシスタントにより生計を立てつつ、研究室中心の生活に移行します。(このときWordとExcelの指導を行い、資格も確保した事は社会人生活の中でも地味に役立っています。)
大学の研究室は、当初大学を選ぶ時に基準としていた「教育とICT」を結びつけた研究を行っている
「教育情報システム研究室」に在籍し、「マインドマップによる知識の可視化」と「マインドマップ的構造をわざとバラバラにして生徒に提示し、自力で組み直してもらう」手法の検証、その完成度を「得点化」するというプログラムを作成し、大学内の同級生や研究室の後輩、付属高校の学生さんに協力いただき効果を実証するといった活動を行いました。
修士論文は、この得点情報を利用し、マインドマップを完成に近づける為に最大の効果が出そうな「グループ」を作成、議論を行ったあとグループで再度「マインドマップの修正」をしてもらうと理想型のマインドマップにどんどん近づいていく事を実証しました。(また、この議論の中で「理想型」と考えられていたオリジナルのマインドマップが「変更」されより良いものに生まれ変わるという発見もありました。生徒側の目線が活かされたのです)
こうして、充実した私の大学・大学院生活は修了。無事に大学院も自分で稼いだ学費で卒業し、KDDIにて働く事となります。ちなみに、同じ代に入社した同期の中でも、大学院出身の人の大半は「推薦」を利用しており、自由応募で入社した人は数名しか居ないという狭き門だった事を後で知る事となります。しかし、実際に入社が難しいかどうかを考えるのではなく、様々な工夫をし、自身の「軸」をしっかりと持ってた事で、結果的にこの関門を突破できたのだと思います。そこには、挫折から立ち直るためのツールとしてのICTがあり、その活用が有り、その活用には「世の中を良くしたい」という純粋な想いがあったからこそ、2年浪人、非有名私立大学(というと失礼かもしれませんが…)というビハインドから今の会社に入社する事ができたのかもしれません。
次回が多分最終回になります。社会人になり、教育ICTの改革に向けた具体的な行動を取るに至った背景と、それに対する想いを書いてこのシリーズは終わりにしようと思います。