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EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

JMOOC と 国立大二次試験制度改定に期待するところ

今週は教育関係、特に大学に大きく関わる二つの報道がありました。早速、当方なりの考え方を書き連ねてみようかと思います。

まず、10/11朝に、国立大学の二次試験から原則として筆記を撤廃し、面接など人間性重視の試験に切り替える事とする考えを、政府の教育再生実行会議(座長、鎌田薫さん/早稲田大総長)が示したというもの。

http://mainichi.jp/feature/exam/news/20131011k0000m040148000c.html

最初に思ったのは、早稲田大学の総長が国立大学の二次試験の在り方に提言するというのは面白い構造だなぁという事でしたが、この鎌田薫さん、2011年からは文部科学省で科学技術・学術審議会委員を努めていらっしゃる模様。ですので、文部科学省としての意思決定要素もあるのではと思われます。

 

さて、この記事曰く「下村博文文部科学相が、毎日新聞の単独インタビューで明らかにした。」とあるので毎日新聞の記者の誤解釈や予測、および長距離砲的要素(数年後には忘れられている前提でPV稼ぎの為に”盛った”記事を配信する行為)が紛れ込んでいないとまずは”仮定”します(笑)
その上で、最初は「これダメなんじゃないか」と思っていたのですが、このニュースのすぐ後に出てきた「JMOOC」を組み合わせると「いけるんじゃないか」に変わった、です。
大学のオンライン講座の無料化を目指す「JMOOC」発足--ドコモがシステム開発
http://japan.cnet.com/news/business/35038431/
MOOCはオンライン上で大学の講義を配信し、基本的に無料で学べる仕組み。しかも単位も認定されるということで米国などではかなり一般化しつつ、単位の修得率が非常に低いとか、反対する大学の教員からバッシングを浴びるなど、いろんな意味で話題になっている教育フレームワークです。

知識辺重な日本の教育や入試に楔を打ち込むという意味では、どちらも非常に重要なスキームだなぁ、ということで、今回の二つのニュースを好意的に解釈して、二次試験改革とJMOOCを成功させるために必要になりそうな要素を考えてみました。


まず、最初の国公立大学二次試験の変革については

1.実施する大学だけでなく高校や予備校にも支援をすべき

高校に補助金とまでは行かなくとも、制度移行期間だけでも人的・物的・情報的支援を行うことも重要だと思います。大学はこれで延命できる所も増えるかもしれませんが、無駄に多い大学を救済する事よりも、入試に振り回される高校と受験生を慮る事はとても重要だと思ったりします。

2.新生センター試験はICT化してしまう

これは「従来のマークシート型試験では問えない発想力・思考過程」が二次試験で問えなくなると、大学が二次試験を「人物評価」に切り替えずに制度が形骸化するのを防ぐための提言です。
要は、コンピュータによる試験を導入し、そこで選択式や組み合わせ式だけではなく、思考過程や発想力、語学ならばコンピュータの音声質問に対する即応力、作文力などを問えるようなシステムをしっかりと作り上げる。文脈判定とか、思考過程評価とか、手書き入力の解析とか、話した音声の解析とか、すでに民間にある仕組みを最大限投入すれば、コンピュータでもかなりのことがフェアに判定できます。例えば語学評価についてはVersant (http://www.versant.jp) のように、15分程度、電話経由でコンピュータの質問に音声応答をすれば、ほぼ即座に採点がされるという仕組みがすでに実現されています。こういうのを使わない手は無い。
(なのでコンピュータで思考力・発想力を適切に測る仕組みの開発をしておくと大きなビジネスになるかも、とか思った)
ちなみに、新生センター試験がこのような形式になると、教育上「模擬環境が必要」という話から学校のICT化が進む可能性があるかもしれません。(むしろ補助金はこういう明確な方向に使ってほしい)
が、その為に導入される機器がガチガチの制限で固められている物であればかえって「障害物」になるかもなぁとか心配する所もありますが…。

3.面接とセットで適性検査を二次試験で実施する

面接だけで採用をする企業が殆ど無いように、大学も同様な方策を取るべき。適性検査はいろんなノウハウがすでに蓄積されており、性格的な問題傾向(嘘を取り繕う傾向とか、詳細を見ずに突っ走る傾向とか)をかなり精密に分析できるようになっています。合否の基準や判定も大学側に任せて、面接で志願者を落とすなんて事になったら、生徒や保護者からクレームが殺到して、大学業務に影響が出かねません。
また適性検査をすることで、その人に向いている研究室などを選定するひとつの材料にもなるので、大学運営には役立ちそうです。
ただし、適性検査だけというのもダメで、面接は是非ともやってほしいなぁと思います。学力が多少足りなくても、人として魅力のある人を大学が採って、きちんと学力を補いつつ育ててあげるという考え方も重要でしょうし。


そして最後は本論からひっくり返すような提言ですが

4.大学入試の重要度を相対的に下げてしまう

 

入試が変われば教育が変わるのであれば、今やるべき事は大学入試偏重な教育こそを変えるべきです。
この考えには二つのサブ要素があって、
 ・日本の大学に入りたい人は、ある程度入りやすくなるが、出るのは難しくなる
 ・日本の大学だけが選択肢ではない事を示す
というのがポイントだと思っています。

新生センター試験は、国際バカロレアの思想のうち”高校在学中に何回か「受験」のチャンスがあり、一番良い得点を大学に提出できる(一発勝負の現状の是正)”の要素を取り入れるとされています。が、例えば数学IIICの履修が終わっていない段階でこれを受けたとしても、良い得点が出せるとは思えません。仮にその段階で「今回は数学IIICは範囲外」として受験できて、その時の得点が最高点だったとしたら「数学IIIC」をきちんと理解していなくても「大学の求める知識レベルはクリア」になってしまいます。つまり、今回の施策に乗っかると「大学の求める知識レベルは入学前には問えない」となる可能性も出てきます。
ただ、これを「入学前に問えるようにする」という方向で進めてしまうと実態は何も変わらない。そこで、大学側はリメディアル教育(入学後に大学で学ぶ為に必要は中高の内容を再教育すること)をがっつりやる方向に舵を切るようにすれば良いのではと思います。補助金を貰うならこういう用途前提、にするならまだフェアかなと。
そして、大学1年生のあるタイミングで改めて一斉に試験して、基準を満たせなかったら容赦なく即留年決定、みたいにしてしまう。ここで、教材としてJMOOCを活用するように仕向ければ、入学前の高校生や、入学後の大学生の自己学習・復習にも使える訳で、入学前後からJMOOCを使う「強制力」を発揮できます。
一度その利便性や意味を知れば、以後それを適宜使う習慣になりうるので、JMOOCの発展にも貢献しそうです。リメディアル学習の内容は高校の授業ベースなので、結果的に無料に一般に公開されるJMOOCが高校生の支援にも役立つというポジティブサイクルが回ります。

また、後者については、昨今では海外の大学に進学するという選択肢も敷居が低くなっており、これはグローバルで戦える人材育成という面では非常に有用な選択肢の一つです。しかし、日本の教育の悪い所である「普通」で有る事を極度に求める風潮(今勝手に「普通ハラスメント」と命名)がこれを阻害しているとも言えます。
良くも悪くも海外は実際に目で見て触れてみないと分からないので、机上で「分かった気になっている」人よりも「実際に世界を歩いて知見を得ている人」が日本に増える事は大変な価値に繋がると思います。受験でいろんな「力」を問えるようにすることよりも、本当はこっちの方が大切なんじゃないかなと思う次第。


ということで、今の仕組みを維持する前提だと「この場合はどうするんだ!」という個々の議論に終始してしまいますが、こんな感じでもっと大きな変化を前提にした仕組みづくりを是非共議論してほしいなぁと思っています。
(上記の提案もぶっちゃけ穴だらけであり、まったく完璧とも思っていませんが、こういう方向で考えるのも有りじゃないかなーと、企業人は思う訳です)

ただ、あくまで「個人」の意見ですが、JMOOCSのニュースは相当好意的に捉えており、先述の国立大学二次試験の改訂とうまく組み合わせれば、本当に日本の大学教育が変わる「きっかけ」になるとも思っています。特にNTTドコモさんが深く関与し、システムの開発を担当するという部分に大いに期待していて、エールを送りたいと(勝手に)思っています。
通信事業者が教育に参画する事はとても大事で、それがどの事業者であるかはそんなに問題ではないと思っています。ただ、NTTグループには教育関連や自治体と連携している東西の方や、グループ会社のNTTラーニングシステムズのノウハウがありますので、現場目線が反映されたモノ作りができないかなとかなり期待しています。
(そういう意味ではドコモさんがiPadを今後取り扱って、iOSプラットフォームとこのJMOOCの相性がかなりいい感じになるようにデザインしてほしいなーと思ったりしてます。現状の教育現場での活用を考えると、ベストチョイスはPC + iPad ですし。)


いずれにしても、これら二つの動向は今後も大注目、です。