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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

たまには本業について書いてみる

このところ「野本竜哉=教育系の人」と言われることが非常に多くなってきて、それはそれで嬉しいのですが、教育系の顔は実は「2足目の草鞋」の部分であって、本業はまったく違う事をやっています。
本業は所謂「保守・運用系」なので教育とは凡そ関係が無いように見えるのですが、実は本業での経験が教育方面にリンクしていたり、原動力になっている部分も少なくありません。ということで今回は珍しく(?)本業についてちょっと書いてみます。

ご存知の方も多いかと思いますが、KDDIKDDとDDIとIDOという通信系3社の合併で発足した会社です。当方の居る「グローバルサービス運用センター」という部署は旧KDD(国際電信電話)の色合いが強いところで、海外の現地法人や通信事業社と一緒に仕事をする事が多く、英語の使用頻度が高いのも特徴です。

私の担当している業務はこれまで色々と変わって来ていますが、基本的には
1. 海外の通信事業社と共同で企業向けの通信回線やサービスを提供すること
2.提供している通信回線やサービスが故障したら迅速にそれを直すこと
3.これらの業務を効率化するためにシステムや業務フローを整える事
の3つに集約されます。

1.については配属直後に携わったのですが、英語での電話やメールで海外と連携し、様々な無理難題(納期、お国事情、仕様のミスマッチ等)と戦いました。
国によって全く対応や考え方が違うことを学べた事はとても大きく、「日本の常識は世界の非常識」という言葉の意味を身を以て経験しました。それと同時に日本の品質に対する拘りや要求レベルの高さを客観的に見つめることもできました。
また、この業務を通じてネットワーク機器の挙動や通信が成立する基本的な概念を実態を伴って理解する事ができるようにもなりました。(といっても、奥が深い世界なので自分としてはまだまだヒヨッコ、ですが)

2.は実際に交代勤務のシフトに入り、24時間365日、常に誰かが障害が起きていないか監視し、発生したら即座に対応する、という現場で働きました。
障害が発生し、その場所が海外であった場合にはすぐに海外の通信事業社に問合せをして、情報提供や早期復旧に向けた様々なアクションを行います。日本のお客様への報告以外はほとんどが英語対応で、どのようなやり取りを行ったかを記録するシステムへの記載も英語。いちいち文法や語法を意識していてはとてもスピードが足りない。結果的に、なるべくシンプルで分かりやすい英語を使うように鍛え上げられました。
これはとても重要な事で、連絡する相手がアジア諸国であれば、実は向こうもノンネイティブ。難しい単語は伝わらなかったり、誤解されるリスクも高いので、「中学生レベルの英語+技術的なキーワード」がきちんと話せる事の方が圧倒的に”重要”だと気づいたわけです。
ちなみに、現在も時々この業務はピンチヒッター的にやることがあります。

3.は現在のメイン業務でもあり、海外の現地法人にシステムを導入するために何度か出張もさせて頂きました。システムについては大手企業で一般的な「外注」ではなく、実際に動作ロジックを作り込む「内製開発」にも少しだけ参画させてもらいました。正直このへんはプロにはまったく叶わない、素人に毛が生えた程度のモノですが、それでも内部の仕組みや動作ロジックが分かるので、海外に行って現地の技術者と話をする(これも全部英語です)にあたってこの辺の全般的な知識、そして学生時代にC#で1万行くらいのプログラム(今みると随分と遠回りしている残念なコードですが)を構築した経験がある事も意外と役に立ちました。

このグローバル系の業務の辛い所は「時差」。定時が終わる頃に欧州の案件が動き出し、長時間残業になる事もしばしばですし、時には海外の都合に合わせて深夜出勤することもあります。システムのリリースやメンテナンスの為に泊まりがけで勤務して、朝までかかったけど失敗…という苦い経験もしてきました。

当方はこのグローバル系の業務をけっこう楽しんでいて、最近では海外から来るゲストと一緒に昼食・夕食に行ってコミュニケーションしたり、英語Onlyな打合せで様々な課題に取り組むといった業務を通し、「英語力」というスキルが日々向上しているのを実感出来ています。

以前よりも明らかに電話やメールでのやり取りは早くなったし、ミスコミュニケーションもかなり減りました。英語そのものに対する抵抗感も薄れ、Facebookなどで友人がシェアしている英語の記事を読んで、海外からの違った角度の意見に触れるということも「日常の中」でやれるようになってきたのは大きいなと思っています。次は情報発信を英語で行うことにチャレンジしてみようかな、とか考え中…。

という実務での経験を踏まえて、「学校教育の評価軸と社会の評価軸のずれ」という問題に疑問を持つようにもなります。特にITや英語のスキルは必然的に求められるようになって来ているものの、「なんかそれって企業側の勝手だよなぁ…」と思い、じゃあ自分ができる「ギャップを埋めるための活動」をやろうかなというのが教育関連の活動の原動力のひとつです。(もう一つは最近講演でもよく話している、「先生が原因で数学アレルギーを発症、浪人中にその数学の疑問がネット上の”動く教材”で氷解し、教育にITをもっと使うべき!と考えるようになった」というアレです)

なお、ここ数年は月〜金の常日勤で、基本的には土日休み、時々2.のピンチヒッターで変則勤務、という動きが定着してきたので、業務との折り合いを見ながら「9時〜17:30以外および土日祝日」を教育系の活動の時間に当てています。これが「教育系活動は二足目の草鞋」という所以でもあります。なので、色々と活動には制約条件があって、平日にどうしても行きたい公開授業とかがある場合は、業務を調整して休暇を取得し、出かけています。

ちなみに、現在の上司や所属部署長は当方のこうした活動に対して非常に理解がある方達なので、「新潟の公開授業に行きます」とか「名古屋で講演してきます」と素直に言っても却下されることは殆どありません。業務調整は当然ちゃんとやる前提で「外との交流は積極的にやるべき」と、毎回送り出してくれるわけです。

そこで、これまで教育分野のいろんな方々にお会いしてきましたが、企業の方には教育関連専業(機器/ソフトの開発や販売、インフラ構築など形は様々)の方は多いですが、「本業はまったく違う畑だけど教育分野で活動している人」というのはそんなに多くありません。

が、それ故に自分には見えて他の人には見えにくい部分もあるな、と思って最近ではいろいろと出来る範囲で色んな事をやっています。

といいつつ、1ヶ月間ブログを更新出来ないくらいには本業も忙しいです(笑)
が、自身が考える「教育でのIT活用推進」については、現状多くの学校の先生にとってある意味「本業ではない事」を求める側面があり、しかもその先生たちが既存の業務でめちゃくちゃ忙しい事を考えれば、自分もこのくらい頑張んないと何も進まないなー、と思っていたりもします。


この間、ある方が「野本さんは制約条件がある中でこれをやっているっていうのがいいんだよね」と仰ってくれたので、この言葉を大切に頑張って行こうと思います。