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EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

【特別寄稿】広尾学園ICTカンファレンス2014レポート 午後編 by 神谷さん

本日は特別寄稿として、フリーランスライターである神谷 加代さんから当ブログにご寄稿をいただいた記事をご紹介します。当方が業務の都合上、午後の部に出られなかったのですが、その部分を見事に補完してくれている記事です。
 -> 神谷さん、ありがとうございます!
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広尾学園ICTカンファレンス2014にて、野本さんと一緒になりましたフリーランスライターの神谷です。午前の部しか参加できなかった野本さんに代わり、午後の部の模様を寄稿します。(写真はすべて、広尾学園の金子先生よりご提供頂きました)

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(午後は3部構成・①生徒パネルディスカッション、②情報共有、③教職員パネルディスカッション×質疑応答

①生徒パネルディスカッション

生徒はこの日通常授業だったのですが、中学生と高校生それぞれ2名ずつ、昼休みの間に会場へ駆けつけてくれました。モデレーターは医進・サイエンスコースの木村健太先生。生徒にはiPadを学校で使って良かったこと、困っていることは?」と尋ねられました。

中学生女子)良かったことは、写真の共有が簡単にできること。困っていることは、鞄が重いこと。教科書とiPadを持って通学するのは大変なのでデジタル教科書を使って欲しい。

中学生男子)演劇部に所属しているが、演技を録画し、スクリーンを覗きながらみんなで意見交換できるのが良い。またGoogleのグループメールやクラスのサイト(*広尾学園ではGoogle Apps for Educationを利用)を使い、係や委員会活動などの連絡がスムーズに行えるのも良い。アプリやフィルタリングの制限が多くて困る。

続いて「生徒からみて、“こんなことができればいいのに”と思っていることは?」という質問が投げかけられました。

中学生女子)ednity (学校専用SNSサービス・株式会社Ednity)を使っているが、内容が更新されても通知がこないのでメールで知らせてほしい。

中学生男子)もっと自由に使えるようにしてほしい。アプリのインストールは自由にやりたい。

木村先生の話では、ednityの話に限らず、そもそもメールチェック自体をしない生徒もいるとのこと。そのため現場では、クラスのサイトを更新した時は、書き込んで終わりにするのではなく口頭でも伝えるなど、コミュニケーションも工夫していると話されていました。

次に登場したのは、高校生の2人。同じく「デバイスを使って良かったところ、困っているところは?」という質問がされました。

高校生女子)分からないことがあった時にすぐに調べられるのが良い。分かるまでのサイクルが早くなったと感じる。困っていることは、自宅にWi-Fi環境がないこと。自宅では家のPCを使っている。

高校生男子)(*インターナショナルコースに在籍)インターではグループで取り組むプレゼンの宿題が多く、Google スライドなどを使い、自宅から同時にアクセスして共同作業が出来るのが良い。困っていることは、ついついYouTubeを見てしまうこと。家での使い方を考える必要がある。

分からないことがすぐに調べられるのはICTのメリットでありますが、生徒にはもちろん、ウェブに書いてあることがすべて正しいとは限らないと、現場の先生は伝えています。「調べたことをもとに、あなたはどう考えましたか?」という問いかけを大事にしていると木村先生。一方で、ウェブで調べることを通して、生徒は教科書や辞書に載っている情報がいかに精査されたものであるかにも気づくといいます。生徒が情報の質について考える場面が生まれているようです。

広尾学園では、中学生に対してのフィルタリングやアプリの規制は厳しいようですが、高校生に対しては緩和しています。これについては、目的意識を持たせやすい高校生とその成長段階にある中学生の発達年齢を考慮しているとのこと。パネルディスカッションに登壇した高校生も「中学生の頃に比べて自律精神が芽生えていると思う。iPadは学習のための端末だと認識している」と話していました。

 

②情報共有

続いては、「情報共有」の時間が設けられ、3人の先生が登壇されました。1人目はICT化の現場指揮官である教務開発統括部長・金子暁先生です。

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金子先生がお話のポイントは、下記の3点。

 ①広尾学園のこれまでの歩み

 ②どのような考えでICT化を進めているか

 ③これからの方向性について

創立96年の歴史を誇る広尾学園は、もともと女子校でしたが、生徒数が激減し学校経営の危機に陥った経緯があります。そこから“変わらなければいけない”という意識を強く持ち、2007年に共学校化、進学校化を断行しました。普通の学校になってしまったら生徒は来ないかもしれないという危機感から、「次に目指す教育は何か?」を考え続け、辿り着いた答えのひとつに“ICT化”があったといいます。

ICT化の取り組みついては、2014年9月8日にNHK総合クローズアップ現代』の番組内で放送された広尾学園の様子が紹介されました。「学びを変える? ~デジタル授業革命~」(http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3547.html) と題したこの回では、ICTを活用して自分が興味をもった微生物を追求していく医進・サイエンスコースの生徒の姿が取り上げられました。金子先生は、「日本の教育がこれまでに積み重ねてきた良い部分にICTを繋げるような使い方をしていきたい」といいます。今後の方向性については、教育の内容と質をさらに高め、プログラミング教育などを中心に、「活用から創造、活用プラス創造」のフェーズに入っていきたいと述べられていました。

 

続いて、医進・サイエンスコースの木村先生が登壇。医進・サイエンスコースでは今年度からiPadを辞めてChromeBookを導入し注目が集まりました。

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木村先生は開口一番、iPadが悪かったからChromeBookに変更したわけではない」と述べ、医進・サイエンスコースにおいては、高校生といえども本格的な研究活動を行っているため、タブレットよりもPCの方が使いやすいと説明がありました。

医進・サイエンスコースは、校内に研究施設を構え、高校1年生から英語の学術論文を読んだり、論文を書いたり、その研究内容を学会で発表するような活動を行っています。研究テーマも「世界で誰も知らないこと」を条件にし、教員も答えの知らない研究に生徒は取り組んでいます。このような研究活動においては、知識の端っこを知る情報収集を多くするわけですが、その際にICTの活用は欠かせないといいます。一方で「知識を教えているつもりはない」と木村先生。研究の世界では、知識はひっくり返る可能性があるため、あくまでも問題解決に辿り着くアプローチを大切にしているようです。

研究活動を円滑に行うために、現場ではさまざまな工夫がされています。まずは、研究活動の時間をできるだけ確保するために、数学は「EDUPA」(http://edupa.org/)を使って反転授業を取り入れているとのこと(下記写真)。

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加えて、Googleのサービスはかなり重宝している様子。Google カレンダーやTo doリストを用いて研究の進捗状況をチェックしたり、Google DriveGoogle Docsを使って、同時に書き込みをして進めることもあるそうです。「学校内の時間や面と向かってできることにこだわってしまうと研究自体が進まない」、そう話す木村先生の姿からは、ICTのメリットを多いに生かして研究活動に没頭させたい、そんな意気込みが伝わってきました。

肝心のChromebookについては、「教員にとってはキッティングが楽で、管理コンソールがウェブベースなのも使いやすい」(木村先生)ようです。MDMを導入しなくても、MDM的な管理ができのるのもメリットではないかといいます。ただし「ChromeBookの利用は、ネット環境が悪いところでは難しいだろう」と指摘もありました。

 

「情報共有」の最後はインターナショナルコースのMr.マクルアー。外国人教員中心のインターナショナルコース。そこでのICT活用について報告されました。

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Mr.マクルアーからは、午前中に公開された中学1年生の「English Reading Class」という科目について説明がありました。この授業では、生徒同士が互いのエッセイに目を通して意見を交わし合うPeer Review(ピアレビュー)が行われましたが、その過程で使われた剽窃防止ソフト「Turnitin」(ターンイットイン http://turnitin.com/ja/について紹介されました。

Turnitinは、生徒が英語で書いたエッセイに対し、どのくらい“コピペ”した文章があるのかを自動的に検出してくれるソフト。インターナショナルコースでは、エッセイを書く時にウェブで調べても良いとしていますが、きちんと文章を書くことや自分の言葉でまとめることを徹底しており、このようなソフトを使ってチェックしています。Turnitinではコピペした文章のパーセンテージだけでなく、どのサイトの文章をコピペしたのかまで分かるようになっています。

Turnitinには、匿名で友達のエッセイにコメントを残すフィードバック機能だけでなく、生徒が書いたエッセイの内容が、きちんと相手に伝わったかを学習できる機能もあります。手順としては、先生が、生徒の書いたエッセイをもとに質問を作り、それを違う生徒に渡します。渡された生徒は、エッセイを読んでその質問に答えるわけですが、この時、きちんとした文章でエッセイが書かれていなければ、友達は答えを書くことができません。伝わる文章になっているかを、友達の返答をみて判断するという考え方で、Turnitinではこの一連のプロセスがサイト内で出来るようになっています。

 

③教職員パネルディスカッション×質疑応答

最後は、公開授業を担当した先生が前に出て、会場からの質問に答えてくれました。主な質問を紹介します。

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Q1. 「ICT化を反対する教員に対してはどのように対応したのか?」

広尾学園では、いきなり本科に大規模導入したわけではなく、インターナショナルコースや医進・サイエンスコースで小規模な導入からスタートしたため反対意見は少なかった。使い方においても、最初から授業で活用するのではなく、まずは辞書や分からないことを調べるためのツールとしてスタートした。その後、連絡ツールやクラスのサイトへと広げていった。徐々に活用の幅を広げていったことが、反対する教員を巻き込めた要因ではないか。

Q2.  「ICT化をすれば教員の役割も変わると思うが、実際の授業はどのように変わるのか?」

従来の知識伝達型の授業スタイルに、生徒が自ら調べる時間が増えたイメージ。教員の言ったことに対して、Wikipediaなどで生徒が調べ「先生、違います」と言われてしまう場面ができる。ただし、そう述べた生徒は主体性があると評価して、そこからさらに学びを追求できるような展開が大切になってくるだろう。一方で、知識伝達型の授業を見直すようになった。生徒が自分で知識を体得できるプロセスを用意するようになった。

Q3.  成績評価はどうしているのか?

社会科の場合だが、iPadでできる一問一答の小テストを用意しており、その点数は平常点に反映させている。授業態度もリアルタイムアンサーチェックアプリの「PingPong」を使って、デジタルデータとしてログをとり評価につなげている。

 

・・・とこのような感じで、その後も質疑応答が続いたのですが、あいにく私も次の予定があり、ここで退席。最後まで居ることができませんでした。

iPadの導入も4年目に入った広尾学園。現場ではChromeBookも導入されるなど、それぞれのコース、目的に応じて活用している姿がとても印象的でした。今後、この環境から何が生まれてくるのか、その動向を追いかけていきたいと思います。
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神谷さんの寄稿部分は以上です。

ChromeBookの導入理由の部分は本当に納得することしきりで、まとまった文章の作成についてはキーボードがある方が便利ですし、キーボード入力に慣れることは高校生〜大学生くらいにとっては重要なことです。(個人的には小〜中学生くらいであれば自分にあった文字入力ができることのほうが、入力の方法にこだわることよりも大事だと思っています)
また、すべてをwebベースで管理できるChromeBookはWiFiなどの通信環境さえ整っていれば、手がかからないICT機器として大いに期待できるものと言えます。

個人的にこのレポートを読んで、近畿大学附属高等学校の乾先生がおっしゃっていた「本当の理想は、1 to 1 ではなく、 1 to 2だ」という言葉を思い出しました。
いわゆるiPadなどのICT機器を一人1台の生徒に持ってもらう「1to1」にとどまらず、2台目のデバイスとしてMacなどの”ノート型コンピュータ”を状況に応じて使い分けることが理想の世界という意味合いです。
一人1台ですら多くの学校や自治体が望んでも叶わない世界です。なので2台なんてとても無理!と思ってしまいそうですが、なんでもタブレット1台で満たそうとして周辺機器をゴテゴテと付け足すくらいなら、ChromeBookのような比較的安価で管理が楽なデバイスを2台目として導入する方がコスト対効果に見合っているのではないか、とも思います。そういう意味でも、広尾学園の取り組みは非常に先見の明がある動きとも言えるかもしれません。