EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

ICTによる教材共有を成功させる3つの視点

今日は「教員間のICTを用いた教材の共有」について考えてみます。

ICTによる教材の情報共有手段としてCONTETを活用していく方針は文科省の中間方針でも示された通りです。CONTETは国立教育政策研究所が、同組織が開発しているNetCommonsを活用した教材共有プラットフォームとして立ち上げた同サイトです。


教育情報共有ポータルサイト


「情報共有」は企業にとっても永遠のテーマです。そこで今日は、企業などで取り組まれている情報共有の事例や、自身の過去の失敗をもとに、「情報共有」が成功するために必要な要素を3つのポイントを示してみます。
 実は、上記のCONTETは民間企業の人間は見ることができません。そのため、私は現状がどうなのかを知らずにこの記事は書いています。ですので、もし認識誤認や間違いがあれば、ぜひ閲覧権限のある先生から情報をいただきたいです。なお、以下では「教材・副教材・素材・プリント類」をひとまとめに「情報」と表現します。また、情報共有サイトは原則無料で利用できる前提としていますので、あらかじめご了承ください。

 

1. 情報を発信する側に明確なメリットがある

 情報共有プラットフォームの大前提はこれです。情報が集まっていれば、「利用する側」には大きなメリットがあります。欲しかったもの、作るには時間がかかるものがそこにあると知れば、校務や雑務で時間が取れない教員には非常にありがたいでしょう。
 一方で、情報提供側のメリット、正確には「情報を共有しても良いと”事前に”考えられるメリットがデメリットを上回ること」はどうでしょうか。これを明確にするのが鍵ですが、結構難しい。
 例えば、情報公開により「外部から感謝される」「有名になる」「認められる」といったメリットがありえます。有益な情報であればあるほど、その可能性は高まります。でもこれらは共有する前にはわかりません。逆に、人目に触れることで情報の欠陥や間違いを指摘されたり、場合によっては炎上するような「デメリット」の方が、共有の経験したことの無い人には非常に強く感じられます。そのため、公開に足るものを作り、自信をもって共有するという”一線を越える”のには、非常に勇気や手間・時間が必要なのです。
 自身から情報を発信、共有が出来る人は、実はほんの一握りしかいません。その経験がない人には、下手に情報を展開すると「誰かから指摘される「直せと言われる」「面倒なことが増える」と思うものです。「ただでさえ忙しいのに、そんなことやってられないよ」というのが偽らざる気持ちでしょう。この「大多数の人」を動かすには、事前にわかりやすいメリットを提示できることが重要です。
  このわかりやすいメリットの例として、表彰があります。提供された情報を様々な角度で評価するのです。が、往々にして情報提供の経験のない人は「そんなすごい情報、提供できないよ」と思っており、一線を越える勇気にはなりにくい(むしろ負担に感じる)でしょう。そこを動かす最大の力は、職場の同僚による承認や推薦です。多くの方が経験していると思いますが、周りが「すごい」と思っていることは、自分には当たり前のことの中に潜んでいることが多いものです。これを管理職など、ある程度立場のある人が行ってあげることが、一線を越える勇気につながるケースは多いのです。
 ただし注意すべきことは、情報の提供するよう圧力をかけてはいけないということです。これが起きると、仕方なく投稿された質の低い情報が溢れ、利用者は優れた情報を探しにくくなり、離れていってしまうでしょう。両者にとって不幸です。提供者からこういう動きが出てきたら、注意が必要と言えるでしょう。

2. 情報をプッシュできる

 どんなに優れた情報でも、その存在が知られていなければ、ないものと同じです。わかりやすい例を言えば、企業のホームページがまさにこれです。素晴らしい製品、技術を持っている企業はたくさんありますが、その多くは知られていません。何か事件やすごいニュースなどがなければ、わざわざブラウザから検索して、サイトを見に行ったりしませんよね?利用者が能動的に情報を「プル」して初めて入手できるものなので、これをやるには目的意識が必要です。大多数の忙しい教員にとって、わざわざ時間を作って情報提供サイトにアクセスし、なんらかのキーワードを入力し、表示された候補を上から見ていく…なんてこと、日常的にはとてもじゃないですが、できないでしょう。 
 そこで「プッシュ型」の情報提供です。FaceBookTwitter、古くはRSSやメルマガ配信などは、勝手に自分のところに新着の情報が(ある程度カスタマイズされた形で)届くというところが、普及のポイントになりました。情報共有サイトにおいては、投稿された情報の中から、その教員の属性に近い情報(小中高、学年、教科、職位、地域、その時期に取り扱うことが多い単元に関わる情報など…)、かつ一定の基準を満たしたものが投稿されたら、自動的に通知されるような機能はおそらく必須です。これをトリガーにサイトに誘導することができれば、かなりの活気が出ることでしょう。同様に、情報に対してコメントや「いいね!」的なフィードバックがつけられ、それに対するリアクションも通知されるような機能もあると良いでしょう。
 人が処理できる情報量には限度がありますので、このあたりの情報推薦アルゴリズムをきちんと作り込むことが重要です。Facebookの標準ニュースフィードも、様々な工夫をしてその人に合った情報が上の方に来るように工夫されています。こうした民間のノウハウは、きちんと情報共有基盤にも反映してほしいものです。
 ただし、この手法はまず「最初の一回、サイトにアクセスしてもらう」という大前提が必要です。優れた情報共有の基盤があることを知ってもらい、そこにアクセスしてもらえなければ、プッシュもプルもありません。 そして当然ながら「役立つ情報が無い」のも論外です。立ち上げ段階で「目玉」となる情報が存在しないと、最初のアクセスが最後、プッシュ配信の登録もしてもらえないままサヨナラになってしまいます。このあたりは、CONTETならば運営する国立教育政策研究所 ならびにその支持者、その他民間の基盤であればその運営企業の、最初の頑張りどころということになると思います。

 

3. 管理が行き届いている

 最後がこれです。いろんな企業の方にヒアリングをすると、少なくない企業でSNSや情報共有基盤が提供されてはいますが、大多数は「あまり使われていない」という回答です。その理由を聞いてみると、大半は以下のようなものです。
 ・特定の空気を読めない人が場を荒らしている(本人にその自覚がなさそう)
 ・少数のヘビーユーザーが「内輪」な雰囲気を作り出しており、入りづらい
 ・たんなる宣伝・自慢の場になっている
 ・役立つ情報がない、または多すぎて探せない
最後の一つは上記の1. 2. の段階で失敗している場合に良くあることなのですが、それ以外の理由については、いずれも「管理」がきちんとされていない、もしくは明確な利用規定が存在していない場合に発生しうる問題です。
 何を隠そう、私自身もFacebookで教育関連のグループをひとつ運営していますが、率直に言ってこの「管理」がうまくできていません。管理が行き届いているように見せるには
 ・なるべく定期的に役立つ情報を配信する(多すぎると鬱陶しいので匙加減が重要)
 ・投稿された情報やコメントには管理人が必ずフィードバックを返す
 ・同一投稿者の多重投稿、誹謗中傷や不適切な情報には厳正に対処する
 ・運営ルールを明確に示す
 ・特定少数の人たちだけに向けた情報を投稿しない(内輪グループにしない)
といった工夫が必要です。つまり、相応に「管理の時間と手間」がかかるので、それを「維持」するために必要な時間や人を予め確保したり、不足する場合は速やかにそれを拡充することが重要なのです。当方の運営グループが参加人数の割に過疎化しているのはこれが要因なのです。(分かってるならなんとかしろよ、って話ですよね。すみません)

ということで、CONTETにしても、それ以外の民間の情報共有基盤にしても、こうした3つの要素を併せ持つことが非常に重要だと思っています。このあたりの事情は企業では「ごく当たり前」のことなのですが、それでも器だけ作って結局使われない、というケースは多くの企業が経験しているものと思います。

 教育の情報化、ICT化が叫ばれてもう随分とたちますが、重要なのはこのあたりの民間のノウハウをいかに「盗むか」です。いい情報があれば自然と人が集まるなんていうのは幻想です。そして情報は集めることが目的ではなく、それを活用してさらに磨いてもらうことが目的でなければいけません。このあたりを意識してうまく進められるかどうか。日々、情報を「発信」する側の人間の一人として、注意深く見守っていきたいと思います。