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EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

大学入試の”英語の4技能測定”は本当に必要なのか?

本年最初の記事は、2020年の大学入試改革(およびそれに影響を受ける高校、中学、小学校の連鎖改革)のひとつの懸案事項である「英語の4技能測定(読む・書く・聞く・話す)」について考えます。
【想定読者層】=============
文科省周辺で議論されている
・今後の英語教育の改善・充実方策について
・新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について
・初等中等教育における教育課程の基準などの在り方について(諮問)
に関心を示している学校教育関係者、およびその動向に関心を持つ企業の方々

【英語の4技能測定】
従来のセンター試験(リーディング、リスニング)を廃止し、新しく導入される試験において英語では民間の英語試験(CBTを用いる場合が多い)要素を取り入れ「スピーキング」「ライティング」を加えた4技能を問うという考え方。ここでいう民間の英語試験としてはTOEIC+TOEIC SW、TOEFL系、ケンブリッジ英検などが候補としてあげられています。
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まず、これらの話題に関係しそうな記事をいくつか紹介します。


<岐阜市>英語 4月から小1、2に正式教科 2015年1月10日 gooニュース - 子ども関連ニュース - 保護者 - キッズgoo


公用語化でどうなった?楽天社員の英語力 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

烏賀陽弘道の時事日想:ネット上で、日本人が“残念”であり続ける4つの壁 (1/5) - Business Media 誠

※ちなみに筆者は鳥賀陽弘道さんの記事について、Facebookで英語で記事を書いたときに英語圏が反応することや、余暇を使って見ているSNSにそこまで力をかけたいと思う日本人が少ないのは当たり前と感じていますが、日本人の常識は海外から見たら極めて非常識であるという点はきちんと理解する必要はあると思ったので紹介しています。

当方は上記の記事や文科省の関連資料を一通り読み、企業人の目線から(いち個人の意見として)大学入試改革案における「英語の4技能測定」は必要であるとの立場です。ただ、教育現場(特に高等学校)視点については理解が浅いため、記事に足りない視点や問題点などを是非、現職の先生やこの界隈に詳しい方にコメント等いただけますと幸甚です。

 

前置きが長くなりましたが、今回の「本当に必要なのか?」という問いは以下のような話題から出ています。
1. 昨今話題のAIや自動翻訳の技術の進歩により、一定精度でリアルタイム翻訳ができるようになれば、必ずしも全ての人が英語を学ぶ必要はなくなるという論
2. そもそも日本人で英語を必要とするような仕事に就く人はそれ程多くないという論
3. 英語以前にもっと他のこと(国語とか日本の文化とか)を学ぶべきだろうという論

3点目については確かに重要ですが、今回の議題では論点のすり替えになってしまうのでひとまず置いておくとして、1, 2 については筆者の周りでもよく聞かれます。(何方が仰っているか、などの出典は敢えて明記しません。)


これに対して、当方が賛成(必要である)としている理由は以下です。

a. 2020年度(10年後)にはまだそこまで技術は進歩していない
現在の小学校6年生が大学を卒業する「10年後」にはまだビジネスシーンで引き続き英語が重要視され、自動翻訳やAIがビジネスレベルに到達できていないと予測しています。
b. 語学を学ぶ事は文化を学ぶ事でもある
語学の背後にある文化を意識しないと、単純翻訳で意思疎通が図れるとは限りません。これは冒頭に挙げたネット上で、日本人が“残念”であり続ける4つの壁 (1/5)  を読んで改めて実感したことでもあります。
(追記:英語を英語で理解するという感覚も結構重要です。そもそも一生懸命頑張っても、英語を日本語に完全に翻訳すること自体に無理があるケースが出てきます。その逆も然り)
c. 企業がAIや自動翻訳を使えるとは限らない
クラウド上でAIや自動翻訳の結果が得られるとしても、企業がビジネス上の重要な機密情報などを含む会話・文章をそこを通して翻訳させることは(現時点では)リスクが大きく、自分だったらやらないなぁと思います。企業は概してセキュリティの課題などから、コンシューマーICTと比べて何年か遅れているものです。
d. cを解決する技術面の進歩が間に合うかわからない
cの課題を楽にクリアできるネットワークとセキュリティの技術が10年前後で、中小企業も含めて遍く利用できるほど安価に提供されるまでには、もう少し時間がかかりそうと見ています。勿論、これは予想を裏切ってほしいですし、そうすればcは解決です。
e. そもそも日本”で”英語を使う機会が増えるかもしれない
海外に出て行く、または英語が必要な仕事をする日本人の比率はそんなに変わらないかもしれませんが、もし日本が人口減に対応するために移民の受け入れをしたり、なんらかの問題で海外へ移住せざるを得ない状況が生まれたりすると、日常生活の中に英語を使うシーンが(年齢問わず)増えてくる可能性もあります。


以上から、とりあえず10年後というライムラインでは「まだ英語を学ぶことは重要」と考えます。私自身、昨年まで英語を毎日使う職場にいたのですが、上記のaとc,d を根拠として「英語による意思疎通ができる力」は10年後も引き続き重要であり続けるでしょう。英語を学ぶことの重要な目的の一つは「相互意思疎通」ですので、翻訳率が9割程度レベルでは理解上のトラップが結構な頻度で埋まっていて誤解を招くでしょうし、文化や背景をきちんと理解しないで訳されてはそもそもの「相互意思疎通」という目的は果たせません。技術がそこを満たせるレベルにまで進歩するのには、もうちょっと時間がかかるのではないか、というのが持論です。

また、個人的に英語でスピーキングとライティングを扱うことでプラスに作用しそうなのが、「瞬発力」「要約力」の育成です。
瞬発力については「正しい表現に拘るあまり、出力が遅い」という問題に関連します。文法にこだわる(人が多いと筆者が感じている)日本の英語教育で変えないといけない課題です。
要約力については、英語を話す人口の多くは英語ネイティブではないので、話す相手が英語や文法に長けているとは限らないという観点に関連します。私も仕事で英語を使っていた相手の8割はアジア向けでした。そのためシンプルな表現を選び、素早く明確に伝えるスキルはとても重要です。

お気付きの通り、これらは英語に限った話ではありません。国語でも、プレゼンでも、協働学習でも、全てにおいて重要、かつ2020年に向けてより重要視されていくスキルかと思います。スピーキングやライティングの強化を一つのきっかけとして、とにかく間違え、場数を踏んで、まずは間違っていてもいいから瞬間的にリアクションできる度胸を身につけること重要だというのが私の考えです。(もちろん、他の教科でもそうなってほしい)

 

以上は10年後時点を想定した私の考えですが、では20年後ならどうか、と言われると、現時点ではちょっと自信がありません。2020年度までの間に、もし人工知能がその国特有の文化や背景まで踏まえて見事な翻訳を瞬時に行えることが見えて、それが超安価かつセキュリティも万全でビジネスユースでもOK! というレベルにまで進化しそうだと予測できれば、次の機会から少しずつ英語にかけるウェートを下げ、AIにはできない部分を伸ばすことに注力すれば良いでしょう。
ただし、
・翻訳が(文化的背景なども含めて)正確にできる技術が登場する
・それが安価になり、日常的に利用する機器で使えるようになる
・それが多くの人に認識される
・それを多くの人が使えるようになる
という各段階間には一定の時間が必要なので、上記のどの段階にあるのかということと、新方針で学んでいる生徒児童が社会に出て行くまでの数年間のギャップを勘案しながら、「AI時代」を見据えた教育課程を今の段階から考えていくことも重要だと思います。

ということで、年末から年始にかけて様々な情報を取り入れた中、「英語の学び方はどうあるべきか」という点について、いち企業人的な目線で考えてみました。
拙い文章ですが、ご意見・コメントなどをいただけますと幸いです。
(コメントは当方による承認制ではありますが、批判的意見でも原則的に承認しますので遠慮なくご投稿ください。もしくは、FacebookなどのSNS経由でのご連絡も歓迎いたします)