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野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

多摩市立愛和小学校「i和Designプレゼンテーション」2015夏 訪問レポート

2015年6月27日土曜日、多摩市の愛和小学校にて公開授業とカンファレンスが行われました。保護者、他校の教職員、企業の職員、議員、行政関係者など多様なバックグラウンドを持つ方々が約200名が訪問。午後のカンファレンスでは総務省の情報通信利用促進課の元山 和久さんの講演やEdTechをテーマにしたパネルディスカッションおよびPitchが行われるなど、盛りだくさんの内容でした。

愛和小学校は全国的にも珍しい、公立の小学校で独自に児童が一人1台”以上”のICT機器を利用できる環境を整えている学校です。「20年後にこの学校を卒業していった子どもたちが社会で活躍できるようにするには、ドッグイヤーよりも早く進化していく世の中を相当、先取りしていく必要がある」と、同校の学校長、松田 孝 先生は「最先端が学べる学校」作りを意識して進めてきました。

本稿ではソニーデジタルカメラ”α”を使って撮影した公開授業の模様を中心に、同校の特徴を示す部分を紹介していきます。

1. 先導的教育システム(通称:教材クラウド)を活用

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朝の会で「School Takt」を使い、体調や先生への申し送り事項を入力する児童の様子

愛和小学校は本年2月より始まった「先導的教育システム実証事業」に協力する「検証協力校」の一つ。先導的教育システム(以下、教材クラウド)には、独自にタブレットなどのICT機器とインターネット接続環境を用意することで参加しています。教材クラウド上には複数の企業から寄せられた教材が集約されており、すべてwebブラウザ上で動作するwebアプリです。基本的にHTML5などの標準技術で作られており、協力校はここに登録されている教材やwebアプリの中から目的にあったものを選んで活用しています。
愛和小学校では授業支援システム「School Takt」や、いわゆるドリル型教材「ラインズ eライブラリLite」などを授業時間のほか、朝の学習時間および帰宅前などに活用していました。

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ドリル型教材「ラインズeライブラリLite」に取り組む児童の様子

この「教材クラウド」の最大のポイントは、ブラウザで完結すること。IDとパスワードさえ入力すればICT機器のOSや端末を選ばずに使えるのです。コンテンツを収容するサーバーなどを学校として持つ必要がないので、コスト面での効果も期待されています。とはいえ、ハードやOSの差分の影響有無や、認証、学習履歴の管理など様々な観点から「本格利用に向けた課題」も想定されており、全国各地でその検証が進められています。

2. マルチデバイスの活用

f:id:nomotatsu:20150628005351j:plainChromeBookを利用している児童たちの様子

f:id:nomotatsu:20150628012607j:plainデジタイザ(ペン)操作が可能なWindowsタブレットを利用している児童

先の教材クラウドや各種webアプリの導入により、OSが異なるデバイスを導入しても共通的に行える要素が増えてきました。同校はこれまでAppleの「iPad」を一人1台利用できる環境を整えてきましたが、今回の公開授業では前週の金曜日に配布されたばかりというChromeBook」や「Windowsタブレット」を利用する児童の姿を見ることができました。しかし、まだ利用開始から1週間程度しか経っていない割には、児童たちは端末の扱いには(従来のiPadの活用もあり)手慣れている印象です(スクリーンキーボードに慣れているためか、ChromeBookでの入力がほとんど全員、人差し指の一本指入力スタイルでしたが…)。
ChromeBookは端末価格が3万円台ということもあり、米国では教育分野に急速に広がっています。

3. Googleの各種サービスの活用

f:id:nomotatsu:20150628005355j:plainGmailでその日に使うURLや共有スプレッドシートを受け取る児童の様子

ChromeBookの追加導入に合わせて、同校はGoogle Appsの教育版アカウントを人数分、新規に取得(教育版Appsは無償で提供されます)。これにより、生徒はGmailGoogle DocsGoogle Driveなどのクラウド型サービスを使えるようになりました。

f:id:nomotatsu:20150628005354j:plain「学校の近くのお気に入りスポット」をGoogleMap上で指定する児童の様子

今回の公開授業では、6年生の学級活動で事前に調べてきた「学校の近くのお気に入りスポット」をGoogleMap上で探し、その住所を共有スプレッドシートに入力して、全生徒分を電子黒板に一覧表示するという活動が行われていました。

f:id:nomotatsu:20150628005402j:plain共有スプレッドシートに自分のお気に入りのスポットの住所とその理由を記入

共有スプレッドシートにはほぼリアルタイムで他の児童が入力している作業の様子が反映されています。事前に各児童ごとの行だけを入力済のシートを先生がGmail経由でURLにて配布し、それに生徒が住所や「おすすめする理由」を入力。すでにキーボードショートカットの「コピーとペースト」も習得しているようで、最後の10分は実際に地図の上にずらりと並んだクラスのみんなのおすすめスポットを見ながら、一人ずつ発表の時間をとっていました。

4. EdTechサービスの積極的な導入

f:id:nomotatsu:20150628005357j:plainSchoolTaktで生徒全員のワークの進捗を前方電子黒板にリアルタイムで表示

2年生の国語の授業では、先ほど紹介した「教材クラウド」の中のSchoolTaktを授業の中で使ってる様子を見ることができました。わざと句読点を抜いた文章を児童に配布し、児童たちで句読点を入力してもらうワークを行っていました。

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読点(。)を書き込むワークに取り組む児童。

この教室ではほとんどがWindowsタブレットを利用、一部iPadを使っている生徒も混ざっていましたが、あくまでSchoolTaktはブラウザ上で動いていることから、端末のOSの違いを意識することなく授業が進んでいました。このwebアプリ基本的にはあらかじめ先生が用意した「お題」を配布し、生徒児童はそのお題を動かしたり、手書き文字を書き込むことができます。(これがブラウザで動くことに結構感動します) また、設定次第では生徒児童同士でほかの人の回答をお互いに見たり、比較することも可能です。わからないことがあったり、問題が解けたときには右上の「OK」や「NG」といったアイコンをタップすることで先生に自身の状況を手軽に伝えられるほか、右下に表示されているように課題への「制限時間」を設定してカウントダウン表示したりと、多機能でありながらどの教科でも使えるような汎用性も持っています。また、同校の副校長である田畠先生は「児童が相互にコメントを送ることもでき、それを教師がマッピングしてお互いのコミュニケーションを視覚的に把握する機能が秀逸で、学級内の様子がよく把握できます」とこのアプリを高く評価されていました。

SchoolTaktを開発した会社「コードタクト」はまだ設立から半年程度の非常に若いベンチャー企業でありながら、先の教材クラウドに採用され全国で活用されるなど、注目のプロダクトと言えます。

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5年生の英語の授業では、以前当ブログでも紹介した、多国籍の講師による「Skype英会話」を提供する「ベストティーチャー」を活用。愛和小学校ではネイティブスピーカーのALTは月に1回程度しか来ることができないそうで、ネイティブと英語で「話す」機会が非常に限られていました。しかしベストティーチャー社が本年より月に1回程度、このSkypeを用いた遠隔英語レッスンを同校に提供し始めたことにより、英語を話すチャンスが増えました。この日は同時に6名の先生がスタンバイ。

f:id:nomotatsu:20150628005411j:plainSkype講師の先生の質問に正答すると3ポイント、不正解でも1ポイントとして、とにかく多く「発問する」ことでチームごとにポイントを競うゲーム的要素を取り入れていました。

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児童の手元にはあらかじめ使いそうな単語や表現のプリントと、質問の結果得られたポイントを記録する用紙が配布されていました。このあたりのアナログとデジタルを組み合わせながら進めている姿は、この日の公開授業でもあちこちで見ることができました。
ベストティーチャーもいわゆるEdTechベンチャーの一つですが、昨今では大学受験の英語が原則「4技能(読む・聞く・書く・話す)」を問う方向にシフトしている動きもあり、現在様々な教育系企業と連携して非常にスピード感を持ってサービスを拡充しています。もともとは社会人向けのTOEICTOEFLの対策からスタートした同社のサービスですが、このところ学校や教育機関での活用事例が目立ってきました。
ベストティーチャーについては、以下の拙稿も合わせてご覧いただければと思います。

techtarget.itmedia.co.jp

5. 学年に合わせたプログラミング教育

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同校ではプログラミング教育に力を入れており、成長過程に合わせて利用するプログラミングツールを変えているという特徴を持ちます。その中でも高学年ではレゴ社のマインドストーム EV3 を利用。同校では以前からMacを使ってマインドストームを動かす学習をしていましたが、ごく最近よりiPadから無線(Bluetooth)でマインドストーム本体に命令を出せるようになったことから、早速iPadを使って「ライントレース」を行うプログラミングを行っていました。

f:id:nomotatsu:20150628005404j:plainEV3のライントレースのプログラミングの一部。本体に搭載されている光学センサーを使い、まわりとの色のコントラストの違いから線を認識させ、線からはみ出さないようにEV3を走行させるというもの。一見簡単そうですが、パラメーターを微調整したり、途中からコース上の色が変わるなどの仕掛けもあり、トライアンドエラーを繰り返す必要が有ります。
iPadだとその場でちょっとパラメータを修正してすぐやり直せるので、児童の学びの機動力がMacを使っていた時よりも向上していることを感じました。

6. 電子黒板アプリ「Kocri」を利用

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今年のEDIXでも大変な話題になった、「スライドを黒板で見やすい形に変換して表示してくれるアプリ」である”Kocri(コクリ)”が使われていました。先ほどのベストティーチャーの授業の中では電子黒板とプロジェクタが併用されていて、プロジェクタ側でKocriを使用。iPadの中の資料をAppleTVでプロジェクタに無線で飛ばし、アプリで白黒の反転や色の処理をしていると予測…。(まだアプリが一般リリースされていないため、このあたりの詳細は不明でした)

実は、黒板へのプロジェクタ投影はこうした白黒反転(黒字に白)を行うと劇的に見やすくなることが先生たちの間では「ワザ」の一つとして知られていて、ここに色のチョークで印をつけると、チョークの粉でプロジェクタの光で反射して非常に鮮やかに、見やすくなります。アナログとデジタルがうまく融合している例ですね。

 

そのほか、気になった授業やアイテムはたくさんあったのですが、今回は主だった部分として以上を紹介しました。

午後のパネルディスカッションの部分については、同イベントのモデレータを勤められた為田さんがブログにて紹介する準備をされているようですので、チェックされてみてはいかがでしょうか。

ict-in-education.hatenablog.com

 

また、総務省、元山さんのお話の様子は当方がTwtitterにて実況中継した内容がありますので、こちらをまとめたものをご紹介します。

総務省元山様の教育ICTに関するご講演まとめ - Togetterまとめ

togetter.com