EverLearning!

モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

1年の独学でTOEICを115点上げた話

教育ICTの話題を扱う本ブログらしく、今日は学生から社会人まで関心が高いとされている「TOEIC」について書いてみます。

当方は幼稚園から小学校1年生の2年弱アメリカに住んでいたり、高校で2週間のホームステイを経験したり、入社から約5年間仕事で英語を使う部門にいたりと、幼少期から英語に触れる機会が多い方だった割にはTOEICの点数が低かったのです。それは、仕事で英語を使う相手はノンネイティブなアジア圏向けが多く、「中3レベルで良いから簡単な表現で正確に伝わること」を重要視した故、表現の幅が広がらなかったせいだと思います(一方で、とにかく”相手を動かす”ために多少の文法やスペルミスは臆せず書く・話すこと、わからなければ何度でも聞き返す・確認するといった”度胸”は随分身につきましたが)。

入社から5年経過した後は、英語を全く使わない部門に異動になったので、このままだと英語力が落ちてしまうし、今後英語で仕事をするときに不味いよなぁ、と思い、昨年は「1年かけてTOEICのスコアを伸ばす!」という目標を定めていました。

 

いきなり結論、でどうなったの?

1年間、独学かつ自分の時間で色々やってみたのですが、結果としてスコアは115点上がり、直近のTOEICでは855になりました。

f:id:nomotatsu:20170224235637p:plain

2015年12月13日の結果(740)が年明け早々に出てから1年ちょっと勉強し、今年の1月29日に受験した回(一番上)で855になった、という状況です。ちなみに、真ん中のスコアは、後述する”ある教材”を「使用する前」、上段はそれを「使用した後」のスコアでもあります。

 

で、なにやったの?

740->835 までスコアを持ち上げるために11ヶ月でやったことは主に以下の通り。
ちなみにこの期間、お金がかかるサービスは一切使ってません。

TOEIC English Upgrader をひたすら聞く

TOEIC presents English Upgrader

TOEIC presents English Upgrader

  • The Institute for International Business Communication
  • 教育
  • 無料

 TOEIC対策のド定番とも言える無料アプリです。iOSAndroid両対応(リンクはiOS向け)。1stシリーズから5thシリーズまで63のエピソードが収録されています。しかも、すべての台本について日本語訳と英文スクリプトが付いており、下手な参考書を買うよりもよっぽど勉強になります。ちなみにPodcastも同様のコンテンツがあり、こちらの方が1エピソードあたりの時間が長め。運転中や通勤中のリスニング教材として最適です。

 

Appleの発表会を欠かさず見る

www.apple.com

Appleの新商品発表会のプレゼン(Keynote)は、比較的ゆっくりはっきりとした英語で話してくれるし、平易な単語が中心なのでリスニング教材として良いと感じています。かつ「今回は何が出るかな…?」と楽しみながら視聴できます。(リアルタイムに視聴するには夜中の2時とかに起きないといけないので大変ではありますが)
また、以前も紹介したWWDCのアプリにはこうしたKeynote動画がたくさん格納されていて、ネタには事欠きません。
ただ、これらのムービーには基本的に字幕がないので、ある程度内容がわからないと辛くなってくるかもしれません。

 

・mikan や zuknow で単語力を鍛える

 

英単語アプリ mikan

英単語アプリ mikan

  • mikan Co.,Ltd.
  • 教育
  • 無料

どちらも無料(一部利用方法によっては無料)の英単語学習アプリです。zuknowは紙の「単語カード」を置き換えるような使い方をするアプリで、自分でわからなかった単語を記録して自分で復習したい時にとても便利。mikanはTOEICの目標スコアに応じてあらかじめセットされた単語が次々に出題されるので、新規で単語を覚えたい時に便利です。どちらもプレミアムコンテンツ利用時や一定以上の学習量の時には課金されますが、無料の範囲でもかなり使えます。

 

・興味のある分野の英語記事を読む

知りたい情報は英語でも多少は頑張って知ろうとするものです。私は、教育関係(OECDのレポート)とか、Apple製品に関連する内容の記事を「なるべく単語の意味を調べず、早く読む」ということを意識し、分量を多めに読んでみました。これは時間との戦いであるTOEICのリーディングパートに対応できる「速読力」を身につける目的です。どうしてもわからない、頻出のキーワード単語などはその場で意味を調べて、Zuknowに放り込むことで後から振り返りやすいようにしました。結果、昨年12/11に受けたTOEICではほぼ最後までリーディングパートを解くことができるスピードになりました。

 

こうした結果、リスニングが435->450に15点UP、リーディングは305->385と80点の大幅UPを達成しました。一方で、ある課題に気づきます。

f:id:nomotatsu:20170225003257p:plain

他の項目はだいたい伸びているのですが、文法だけは完全に横ばいだったのです。そりゃ、リスニングやリーディングの勉強ばかりしてても文法力はなかなか伸びないよなぁ、と一人で勝手に納得して、ここで「ある教材」を特定の目的で使うことにしました。

 

Z会キャリアアップコースの「Adaptie」投入

文法ばかりは、きちんと勉強しないと定着しない。高校生の受験英語で痛感していたものの、高校の分厚い参考書を引っ張り出してきて携行するのもカバン重くなるし、勉強のハードル高いよなぁ、仕事しながらだと日々の疲れに負けそう…という思いがあり、これまでよい方法が見出せませんでした。

そこに、本職の仕事繋がりから表題の「Adaptie」という教材を試させていただけることになったので、有り難くその機会を活用することに。ということで、ここからは使わせてもらった御礼もかねてちょっと宣伝色が入りますが、良いところ課題があるところ含め、なるべく素直な目線でAdaptieを紹介します。


Adaptieの詳細は以下の公式HPに掲載されています。決して安い教材ではないですが、TOEICのスコアアップに悩む人が以下の記事を見たら「使って見たいな」と思えると思います。

www.zkai.co.jp

Adaptieは一言でいうと「スマホ・PC・タブレットのマルチ環境でTOEIC対策ができるweb教材」なのですが、その人の英語習熟度レベルに合わせた問題を出し分けるという「アダプティブ・ラーニング」のエンジンが搭載されているのが最大の特徴。このエンジンを最大限活用するためか、利用開始時には本番のTOEICの半分の時間で半分の量の「Pre Test」を解く必要があります。これが心理的なハードルではあるものの、ここを乗り切るとあとは快適です。

f:id:nomotatsu:20170225004850p:plain

こんな感じで、TOEIC本番の受験予定日と学習日、そして目標スコアを最初に登録します。ここにPre Testの結果をもとにその人の弱点をシステムが把握し、その人のレベルにあった問題を出題してくるようになる、という仕組みです。感覚的には解き進めていくとだんだん問題が難しくなる、就活のSPI(玉手箱など)に近い感じですが、ある程度連続して間違えると解説ページや解説動画が出てくるのが親切です。

Adaptieの良かったところは、各パートがさらにcan-doリストで細分化されていて、自分の苦手な部分だけをピンポイントで学習できたところ。

f:id:nomotatsu:20170225005738p:plain

例えばリスニングの「Part1」ならこんな感じ。Part1は写真と合致する英文を答える問題ですが、ブラウザ上で本番さながらの音声が再生されるのでとっても手軽でヨイです。
画面上で▼でマークされているところが自分の目標得点を狙うために必要なレベル。正解を重ねると黄土色のバーが伸びていき、間違えると短くなります。1問正解してもちょっとしかバーが伸びない割に、1問間違えると一気にバーの長さが戻るというなかなかドSな仕様になっております。

今回はこのAdaptieを「Part5」の文法問題対策を中心に使ったのですが、これがとても良かった。何が良いかは、以下の4つに尽きます。
・1問1答形式なので、文法問題を1つ解くとすぐ詳しい解説が見られる
スマホを使って隙間時間に文法問題に取り組める
・必要な時だけ解説動画が出てくるので時間が節約できる
・大量の問題が格納されており、ほとんど同じ問題に出くわすことがない

TOEIC本番は問題が回収され、解説解答も一切公表されません。そのため、ひたすら2時間、問題を解いても「やりっぱなし」になってしまう。一方Adaptieは1問1答形式で、紙の参考書のようにちょっと下や横を見ると答が見えてしまう、ということもない。この辺はICTの良さが明確に出るところです。
4つ目の問題数の多さも、紙の参考書ではなかなか真似できないところでしょう。ちなみに、間違えた問題は「ブックマーク」機能により、間違えた問題だけを後から復習できるようになっています。

またAdaptieでは受講前に行うPre Testの他に、受講期間の中間効果測定として「Half Test」という本番の半分の分量のテストを、仕上げには本番と同量の「Target Test」を受講できます(本番さながらの紙の問題冊子が届けられ、マークシートで解く)。3回のテストを通じて「自分のスコアが伸びている」ことが実感できます。自分の場合は、こんな感じに段階的に点数が上がって行きました。

f:id:nomotatsu:20170225010935p:plain

試験当日の朝に受験した「Target Test」ではAdaptie上で目標として入力した800点にちょうどミートできたので、心理的にも気持ちよく本番に臨めました。

 

結果どうなったのか

このAdaptieを使って約1ヶ月強、詰め込み学習で文法対策をやった結果はどうだったかというと…。

f:id:nomotatsu:20170225011701p:plain

ご覧の通り、文法のスコアが平均レベルから平均+13点まで伸び、また語彙も結果として伸びたおかげで、リーディングパートのスコアのバランスがだいぶよくなりました。(一部対策優先度を下げた項目はスコアが下がりましたが…)結果として835 → 855 に20点スコアアップした要因は、リーディングパートの得点が385 → 410 と25点伸びたことが大きかったとわかります。

その前は独学で11ヶ月かけて95点上げたのですが、Adaptieを使った1ヶ月少々でさらに20点上積みできた(しかもピンポイント対策の結果がしっかり出た)というのは、結構すごいことだと思います。しかも、根詰めて1日集中して勉強したとかではなく、基本は隙間時間、長くても連続1時間くらいの学習でこの結果ですから、忙しい社会人にはなかなか良い教材かもしれません。

 

ただ、改善してほしいところもけっこうある

ここまで書くと超ステマ感満載なので、実際に使って見て感じた課題もいかに列挙しておきます。

1. やっぱりネイティブアプリがほしい
 Adaptieの良さは「OSを選ばずブラウザがあれば学べること」なのですが、これは換言すれば「毎回ID/Passでログインが必要」ということでもあります。正直、これがめんどくさい。個人的には、自動ログイン機能が付いて、あとはApp内ブラウザでいいので、スマホタブレット向けにはネイティブアプリがほしいところです。ネイティブアプリならば「最近サボってるだろ勉強せんかーい」的な学習アプリでは当たり前の「通知」も使えますので、この辺は早期にサポートしてほしいところ。

2. 単語帳アプリと連携してほしい
 Adaptieは1問1答形式で、都度けっこう詳しい解説が出てきます。そこには、問題ごとにキーとなる単語もたくさん載っているので、これらの単語をzuknowなり、同じZ会の「速単教室」のフラッシュカードといった「単語帳アプリ」に送り込みたいなぁ、と何度も感じました。画面内のチェックボックスにチェックを入れると、アプリにその単語が送られる、とか。

3. PreTest、Half Test、Target Test の解説がPDFなのが面倒

 せっかくのWeb型なので解説をPDFファイルでどーんと渡すのではなく、正誤情報をもとに自動的に間違えた問題がブックマークに登録されるとか、復習コンテンツが勝手に生成されるとか、そっちの方にアダプティブエンジンを使ってほしいなぁとも感じます。ICTにより英語学習が効率化されているのに、ここだけ紙に近い環境に逆戻りした体験が強いられるのは勿体無い。

4. 質問機能や問題に対するフィードバックを各設問の解説画面内においてほしい

 Adaptieには質問用フォームがあるのですが、画面としては完全独立した別の場所にあるため、わざわざそこに行って質問する心理的ハードルが(特にスマホだと)高いです。単純に「この問題のこの解説は納得がいかん!」というシーンに即「質問!」がしたいところ。また、絶対数は少ないですが、問題に不備があるのでは?と感じる場面が1-2回あったので、修正要望も同じ画面からできるといいなーと思いました。

5. Terget Test(本番直前の仕上げテスト)の結果入力がめんどくさい

 Terget Testは本番さながらのマークシートに答えを記入するのですが、それゆえに解いた後に答えをブラウザ内に1問ずつポチポチと入力するのがひじょーにめんどくさい。ここは、スマホとかのカメラでマークシートを撮影したら回答が自動登録されるとか、そういう機能がほしい。本番直前に登録に時間を使うくらいなら、1問でも多く演習したいのが本音なので。

 

上記のように、テクノロジーを活用した学習の効率化がやりきれていない、惜しいポイントが散見されます。とはいえ、プロダクトとしてはまだ若いので、今後改善が進むことを期待したいです。

今回はお試し受講だったので1ヶ月強に詰め込みましたが、本来は半年〜1年くらいの長期スパンで使うことが前提の教材だと思います。が、短期で結果が出たので、継続的に学習すればスコアは伸びると思います。当たり前の話なのですが、英語はきちんと勉強すれば結果がついてきます。特にTOEICは860くらいまでなら勉強すれば誰でも到達できる、と自分よりはるかに英語ができる友人・知人からもよく聞きます。ただ、勉強の仕方は結構重要だと感じていて、スマホから1問1答形式でTOEICの本番とほぼ同一フォーマットの問題に手軽に取り組めるのは効率的な勉強方法だと感じます。どーしてもTOEICのスコアが伸びない、という方は、Adaptieを使ってみると良いかもしれませんね。