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Z会 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

【読むな危険】iPad Pro 2018 が割と日常の学習向けに完璧なのでレビューしてみる

さて、予告していたiPad Pro のレビュー記事(教育観点入り)を公開します。

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 読むと欲しくなるので一応タイトルに【読むな危険】と書いておきました。すでに購入している人、オーダーして到着を待っている人は心を平穏にしてこちらの記事をお読みいただければと思います。

 購入しようかどうか迷っている人、気になっているけど家庭内稟議に困っている人、教育関係の人はこれ以降は自己責任でお読みください。間違ってWebでポチっても、店頭で「ください」と口走ってしまっても知りません。

 

 

 フルモデルチェンジの注目のポイントはどこ?

 今回のiPad Proは、各所でレビューされているように事実上、iPad久々とも言えるフルモデルチェンジ。見た目においても中身においても大きく変わっています。個人的には初代iPadの次に大幅に痩せて登場した iPad2 に近いインパクトがあります。

 iPad Proの最大の魅力はなんといっても「Apple Pencil」の使い勝手でしょう。この「書く」という動作のハードルを極限まで下げたことはタブレットというカテゴリーにおいても、iPadを単なる「コンテンツの消費デバイス」というところから次のステージに進める上でも、大きな飛躍であったと断言してよいです。未だにApple Pencilをさわらずに「iPadなんて…」という過去の1時点の経験だけでiPadを評する方は多いですが、そういう人はつべこべ言わず現物を触ってからモノを言って欲しいですね。ザクとは違うでは済まされないくらいの差があります。

 ということで、なんといっても筆者にとって今回の新モデルの最大の魅力は第2世代になったApple Pencilと、それが学びにどのようなインパクトをもたらすか、に尽きます。世の中の92%のPCよりもパフォーマンスが高いA12X BionicなるCPUが搭載されているとか、最上位モデルの1TBモデルだけはメモリーが6GBとか、カメラがHDRに対応したとか、巷のメディアではスペック云々が語られるところが多いのですが、そんなスペック的な話などすべてどうでもいい。

 ということで、今回の新モデルが日常の「学び」や「試行錯誤」にどう貢献しうるかを中心にみていきましょう。なお筆者が購入したのは、12.9インチモデルのWiFi + Cellular版 256GB スペースグレーと、第2世代Apple Pencil、Smart Keyboard Folio のいわゆる「3点セット」です。もちろん、速攻でペーパーライクフィルムを貼り付けて紙のようなフィーリングで手書きライフを満喫しております…。

 

第2世代Apple Pencilだけで飯が3杯食える

 今回のiPad Proは初代12.9インチモデルから数えると第三世代ということになります。その全てを購入して使ってきた筆者からして、今回の新モデルは初代→第2世代と比較にならないレベルでの進化を感じています。

 なんといっても第2世代Apple Pencilの使い勝手。従来の不満点であった以下のポイントが全て解消されています。たとえば以下のようなもの。

 

・丸くて机の上を際限なく転がる
    →一部分が平面加工になったことで、あまり転がらなくなった→ 磁石がくっつくタイプのデスクならばまったく転がらない

・本体がツルツルなので、汗っかきな筆者は長時間使っていると滑りやすくなる
   →マット加工になったので、以前よりだいぶ滑りにくくなった

・ペンが一緒に収納できるカバーなどがダサかったり、使い勝手がイマイチ
  →本体と一緒にくっつけて携帯できる! Surfaceと違い、充電も一緒にできるのが神

・仕方なくペンケースなどに入れて持ち歩くが、いざ使いたいという時に充電が切れていること多々
   →上記の通り、携帯と同時に充電できるようになったので、Pencilのバッテリーが80%を切ることは稀になった

・そんな時、会議では隣に座っている人に申し訳ない気持ちになりながら、Lightning端子にPencilを刺して待つ
・しかし、せいぜい5%くらいの充電でいったん抜くので 、会議の途中で電池切れを起こして地味にイラっとくる
   →これらも必要なくなった。買い換えて以来、まだ一度もPencilの充電切れに遭遇していない

・Lightning端子を保護するキャップもだいぶガタが来ていて、見た目にもよろしくない
   →キャップそのものも無くなったし、これで紛失や劣化のリスクともオサラバ

・Pencil自体がだいぶ長くて、重心がちょっと後ろ寄り
   →新モデルではキャップ分くらい短くなり、重心の位置も好ましくなった

 

 ということで、今回のPencilに関する機構の進化だけで既にこのモデルは充分魅力的なのです。Apple PencilとiPad Proの書き味は、第2世代の段階で画面が120Hz駆動の「ProMotion」になってすでに完成の域に達しています。(余談ですが、未だにiPhoneがProMotionに対応しないのが解せぬ。iPhoneのPencilとProMotion対応を、密かに心待ちにして、今年はiPhoneの買い換えはスルーしました)

 しかし、これは充電とペアリングができていて、Apple Pencilが使える状態であれば「最高のフィーリング」という条件付きでした。実際には、頻繁に遭遇する電池切れにより、今すぐ使いたいのにそれができないもどかしさを感じることが多々。ペンケース運用が標準になってからは、原則として使い始める前に毎回、短時間の充電を行なっていました。これは、WiFiモデルのiPadを買ってしまって、出先で通信をしたい時に毎回、わざわざテザリングしているiPhoneと接続をしてからでないと使い始められない、というあのストレスに似ています。iPadの良さは「すぐ使える」こと。OSの起動や復帰のために待たなくても、思い立ったらすぐ起動、すぐ使える。このモビリティが、教育の場面では極めて重要なのです。偉い人にはそれがわからんのです

 が、第2世代Apple Pencil は、事実上「充電」という概念を無視して使い続けられるようなフィーリングを得ました。実際には、本体の横にくっつけている際に電磁誘導か何かで無接点充電をしているだと思いますし、もしかしたらPencil自体に内蔵されている電池の容量は従来より減っているかもしれない、充電の速度は従来よりも(無接点化によって)遅くなっているかもしれない。でも、とりあえずPencilを一時的に使わないタイミング(考え事だったり、離席だったり、キーボードを使う時だったり)に、いったん本体側面にペタってくっつける習慣さえついてしまえば、ほぼ電池切れとは無縁のPencil生活になることでしょう。

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 なお、今回は指紋認証でロック解除を行う「Touch ID」から、iPhone X シリーズと同様に顔認証でロック解除を行う「Face ID」に変更になりました。これも「使い始めるまでのタイムラグ」削減に一役買ってます。電源を入れたら(電源ボタンを押さなくても、画面ダブルタップでオンになります)、iPadが縦向きだろうが横向きだろうが、画面に顔を向ければすぐにロックが解除されます。ロック解除のためにホームボタンに指を置く必要すらない。純正の「Smart Folio Keyboard」の使用中であれば、スペースキーを1回押すと画面がオンになり、顔認証後にもう一度スペースキーを叩くとロック解除もできます。実際には、スペースキーをタンタンと2回続けて叩けばロック解除されるくらいのスピード。

 これにより、書きたい時に、ペアリングや充電がすでに済んでいて、すぐに書ける。書き味はもちろん、今まで同様の(たぶん)業界最高水準。紙と鉛筆で当たり前のことが、デジタルでようやく実現した気分です。純正のメモアプリに至っては、スリープ中にApple Pencilで画面をタッチするだけで即起動。ロック解除の必要すらありません。この「すぐ使える」というフィーリングの重要さは、iPadをさながら文房具のように日々の学びに使っていくためにはとても重要な要素と言えるでしょう。特に、12.9インチモデルはほぼA4用紙と同等の画面サイズを持っているので、常にA4の紙を無限に持ち歩けて、すぐに書ける、というメリットはなかなか心強いです。

 

Apple Pencil のダブルタップで加速する「試行錯誤」回数

 もともと、デジタルツールでメモを取るメリットには以下のようなものがあります。散々、このブログでも言及してきたのですが、超サマリー的にいうと、

・何度書いても、書き足しても、書き直しても、元の紙を傷づけたり、汚したりすることがない安心感

・全ての手書きメモがiPadの中に入っていて、それをいつでも参照できる安心感

・(原稿の校正などにおいて)色がベタ塗りされている部分にもハッキリ見える赤文字が入れられる

・Notability や Good Notes などのアプリなら、手書き文字を「検索」できるという、紙には逆立ちしてもできないことが可能
   (過去の大量のメモの中から目的の情報を探し出すための大きな助けになる)

・Notability で録音しながらメモをとると、音声の再生に同期してメモの筆跡が再現される
   (もう授業のノートとか全部これで取っちゃえばいいじゃん、という使い勝手)

・すべてをクラウドにバックアップできるので、端末が仮に故障してもデータのロスがない

AirDropを使えば上記のNotabilityで撮った「録音つきメモ」をそのまま編集可能な形で他の人に渡せる
   (授業を欠席した友達にNotabilityの録音+メモを渡せば、大部分の内容はフォローできるでしょう)

などなど。詳しくは以下の過去記事あたりを参照。

it-education.hatenablog.com

it-education.hatenablog.com

 

 ここに新型iPad Proの場合に加わるのが「ペンのダブルタップ」動作の利便性です。

 対応状況はアプリによりますが、ペン先に近い方(ちょうど鉛筆を持っている人差し指のあたり)をトントンと叩くと、あらかじめ設定した動作が自動的に起動します。標準のメモアプリであれば、トントンするとペン・鉛筆ツールと消しゴムツールが切り替わります。

 よく従来のApple Pencilに「ペンのお尻が消しゴムとして使えたら良いのに」という声がありましたが、その動作だといったん Apple Pencil を持ち変える必要があります。しかし、この方法ならペンを持ったまま(持ち替えずに)消しゴム機能がすぐに使える。もう一度トントンすれば、鉛筆やペンなど直前に使っていたツールに戻る。単に「ひとつのアクションがショートカットできるだけでしょ?」と思うなかれ。もう一度言いますが、iPad Proが「日常の文房具」になればなるほど、このワンアクションが一瞬でできる恩恵が積み上がっていくのです。イメージ的には、サイドボタンで「戻る・進む」がワンタッチでできるマウスと、普通の左右クリック+ホイールしかないマウスの違いに近い感覚かな。トントンすれば、書き間違えたときにすぐ消しゴムモードに切り替えできるので、ミスを恐れずどんどん書ける。修正の手間が減るので、より試行錯誤がしやすくなる、とも言えます。

 この「トントン」は少々慣れも必要で、最初は意図せず鉛筆モードと消しゴムモードが切り替わってしまうこともありましたが、コツを掴めば大丈夫。すでに筆者はこれがないとストレスというレベルなので、1日も使えば大丈夫でしょう。

 

 なお、アプリによってこの「ダブルタップ」の挙動は変えられるのですが、面白い使い方を提案しているのが、過去のこのブログでも紹介した「Liquid Text」です。

 このアプリでは長文のPDFなどを読む時に便利な「アンダーラインを引いた場所に瞬時に飛べるショートカットを蓄積していける」という機能(Excerptという)があります。PDF本文の横にメモとして残しておきたい内容を残せるエリアがあり、本文中のテキストを範囲指定してそのエリアにドラッグ&ドロップするとそこに蓄積されていきます。(タップすると、本文の該当エリアまで一発ジャンプできる)

 これが、第2世代Apple Pencilだと、PDF本文のテキストを範囲指定をした状態で「トントン」すると、即座にExcerptされます。

 

 これがもう!長文のPDFをじっくり読み込みたい時に、最高なのですよ!ひ、人の想いが、人の意思が力となっていくのか…これがニュータイプ… と呟かずにはいられません。仕事で使っている iPad Pro & Apple Pencil が前の世代なのですが、すでにその使用感がニュータイプのなり損ないであり粛清買い替えてもらいたくなるレベルです。

 

純正キーボード(Smart Keyboard Folio)もなかなか良い 

 この記事は全て新型iPad Pro上の「はてなブログ」アプリから書いておりますが、入力はすべて純正の「Smart Keyboard Folio」から行なっています。入力フィーリングは前モデルより明らかによくなっており、音も少しだけ静かになっています。最近のMacBookのキーボードはキーストロークが浅めで押下間があまりないのですが、Smart Keyboard Folioは比較的きっちりと「押した」感があるので個人的には好きです。

 なお、前モデルではiPad本体との接点が本体の長辺の側面にあったのですが、どうもこの接点がときどき調子を悪くするのか、入力中に急にキーボードを認識しなくなることがありました。だいたい、一度接点から取り外して付け直すと直るのでたぶん接触不良を起こしやすい構造だったのだと思います。しかし、新モデルは今のところ、そうした自体が一度も起きていません。背面の大量の磁石でがっちりと密着しているからなのでしょう。

  ちなみに、12.9インチモデルには純正およびLogicoolでいくつか外部キーボードの製品がありますが、今回の新モデル+Smart Keyboard Folio の組み合わせは歴代のキーボード製品の中でも「組み合わせ時の重量が比較的軽い」という点でメリットが大きいです。ご参考までに、歴代モデルとSmart Connectorを使うキーボードを組み合わせた時の重量を一覧にしてみました。
iPad 本体の重量はいずれもセルラーモデル

 初代12.9 インチモデル 723g + 純正Smart Keyboard1(12.9) 336g=1059g

 初代12.9 インチモデル 723g + Logicool iK1200 725g = 1448g

 第2世代 12.9 インチモデル  692g+ 純正Smart Keyboard(12.9) 336g = 1028g

 第2世代 12.9 インチモデル  692g+ Logicool iK1272 640g = 1332g

 第3世代 12.9 インチモデル  633g+ 純正Smart Keyboard Folio(12.9) 400g※ = 1033g

※公式に重量に言及しているリソースがないのですが、だいたい実測で400gです

 

 ということで、第2世代のSmart Keyboard+iPad Pro 12.9と重さはほぼ同じ、ただしSmart Keyboard Folioは先代のSmart Keyboardと違いちゃんと背面も保護してくれるので、安心感的には新型の方が高いです。

 ちなみに、背面は磁石での固定ではありますが、普段使っている時に背面の部分がズレたりすることはまずありません。一方で、取り外したいときには割と軽い力で取り外せます。この辺りはAppleらしい作りですね。

 

この技術が近い将来の「スタンダード」になるのが待ち遠しい

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  ということで、新型のiPad Pro は非常に良いデキであり、予算を気にせず学習用途に最高の端末が欲しいという人は買ってよし、なモデルです。しかしながら、「予算を気にせずに」と前置きをした通り、現時点では「Pro」という名前が付いているだけあってお値段はかなり高いです。最安モデル(11インチモデル、WiFi ,64GB)で89,800円(税別)からと、先代からベース価格で2万円くらい高くなっています。しかもApple Pencilも従来の10,800円から第2世代は14,500円に、純正キーボードも 19,800円から22,800円とそれぞれ値上がりしており、お値段的に、子供の学習用タブレットとして持たせるにはあまりに躊躇する値段です。

 

 ただ、昨年のiPad Proの主要機能が今年3月のエントリーモデルiPad(第六世代iPad, 37,800円)に移植されて一気にハードルが下がったという事実もあります。
 今回の新型で培われた技術は、たぶんどこかのタイミングでエントリーモデルにも反映されるのではないかと期待しています。それが2ー3年度なのか5年以上後なのかはわかりませんが、ライバルの動きや市場動向などによりデジタルデバイスは常に進化をしていきます。個人的には、キーボードは非対応でもよいので、今回の新型Pencilと充電の仕組みが来年の3月あたりにiPad miniのリニューアルに合わせて身近なお値段(教育機関を意識するならば、税込で5万円以内が目安)になってくれると最高だな、とも思っています。

 それだけ、「すぐに書ける」「紙と同等の書き味」というメリットは教育分野において意義があり、学びやクリエイティビティ、インスピレーションを妨げないために重要な要素とも言えるので、期待しています。

 

余談

 ところで、ここまでiPad Proが高性能化したのであれば、そろそろ教職員や教育関係の人たちにとって疑問に思っている「なぜ、iBooks AuthoriPad で使わせてくれないのか」への答えが欲しい頃です。

 iPad版のWord/Excel/PowerPoint 的な役割を担っている(しかも無料)なPages/Numbers/Keynote はこの3月にApple Pencilに対応し、手書きのイメージを追記したり動きのある資料が簡単に作れるようになりました。

 しかし、iPadに最適化され、ビジュアル的にも美しいブックが作れる「iBooks Author」はまだMac版しかなく、UIも古い世代のMac版iWorksのそれを引きずったままです。iBooksに手書きのインスピレーションを持ち込みたいという方は少なくないと思いますので、ここは是非とも対応して欲しいところです…。

 

※そして、Gsuite はいい加減Pencilの手書きに対応してほしい。MS Office も iWorks もすでにPencilなどの手書き入力に対応しているのに、iOSでは未だにKeepが申し分程度に手書きに対応している程度、JamBoardは悪くないけどPCとの連携がイマイチ、という感じで、中途半端。対応はよ。