EverLearning!

モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

ベトナム出張トラブルで試された情報リテラシーと英語

 久しぶりの更新は、仕事でベトナムに出張に行く際、人生で5本の指に入る冷や汗をかいた経験について書いてみたいと思います。先に概要を書くと、一連のトラブル対応で「ああ、英語やICTを身近に使えるようになっておいて良かった」と心から思ったという「個人の経験とそれに基づいて感じた個人の主観」を書いた記事になります。

 このブログは教育系(特にTech系)の話題を扱うブログで、筆者が所属する組織を代表するものではなく、個人としての考えを綴っている場所です。特に今回の記事はあくまで個人の主観であり意見であり、その内容を全体化したいとか絶対に正しいとかそういうことを言うつもりはなく、単に個人が直面した事実から個人が思ったことを書いただけ、エビデンスとか言われても…という性質であることは最初にお断りしておきます。

 

 

 

出発日の無茶なスケジュール

 今回は11/4ー7という日程でベトナムに出張に行ってきました。これは文部科学省による「日本型教育の輸出」を手掛ける「Edu−Portニッポン」というプロジェクト関係です。当方の所属するZ会(正確にはZ会グループ)は2018年度に採択され、当方は本年度4月からその事務局を担当することとなり、グループ会社や現地法人との間の調整や、本年度のプロジェクト遂行をしています。

www.zkai.co.jp

 

 Z会グループのEduPort事業は、日本の家庭科に登場する「食育」をベトナムの現地事情に合わせてローカライズし、特に都市部で深刻になっている子供の肥満問題に教育面からアプローチできることはなかろうか、と試行錯誤をしているものになります。Z会グループの一員である「スマートキッズ株式会社」という会社が手掛ける食育コンテンツを日越の栄養教育の専門家の支援を得ながら、日本的な小学校の授業と教案・教材を現地に提供するところからまずスタートしています。そのため、出張には栄養教育の専門家と一緒に赴くことになります。
 で、その専門家と当方の出張日程が両方確保できるのが11/4(月・祝))〜7(木)であった(さらに8日(金)はEduPort事業をベトナムで展開する事業者同士の情報共有会合があった)のですが、まずこの日程がとてもキツかった…。というのも、11/4−5には国内の大型教育イベント「Edvation × Summit 2019」が開催されており、このイベントにて当方がもう一つ事務局を担当している経済産業省「未来の教室」実証事業 の業務があったこと、そして当方が社外活動として代表理事を務めている「一般社団法人iOSコンソーシアム」が主催する「AIラジコンカーグランプリ」という一大イベントがあったことなどから、出張前は多忙を極める状況でした。

 結局、11/4(月・祝)は、始発の新幹線で自宅(静岡県内)を出発し、8時からEdvation × Summit 2019 で「未来の教室」の活動を訴求するブース出展の準備(午前中のみ)を行い、同日午後1:30から iOSコンソーシアム 主催の「AIラジコンカーグランプリ」の開会挨拶をし、そこから羽田空港まで急行し、フライト出発の2時間前くらいに空港に到着、というかなり無茶な動きになりました。おかげさまでEdvation × Summit 2019 関係はそれぞれのチームメンバーが本当に頑張ってくれて、なんとか良い形で終えられそうだ…と空港で一息ついていたとき、悲劇がおきます。

 

保安ゲートがくぐれない

 今回の渡航ANAコードシェアをしているベトナム航空便を利用してハノイノイバイ国際空港に入る予定。フライトは16:45発、空港到着は14:40くらいでほぼ2時間前。大きな空港からの海外出発としてはちょっと時間的にタイトです。

 ただ、手土産は事前に全て購入してあったし、Web上でチェックインも座席指定もしてあったので、出発2時間前に保安ゲートをくぐれればまぁ、余裕でしょ、と思って保安ゲートに向かいました。すると

 

係員:「ベトナム航空はWebチェックインしていても手荷物受付カウンターをいったん通る必要があります」

 

 なにー。

 

 今回、その手荷物受付カウンターを通らなくても良いように、すべて機内持ち込み可能なサイズと量に収めていた(そして8月にも初回出張で訪越した際はダイレクトで保安ゲートに行けた)ので、それWebチェックインの意味ないやんけ、と思いつつ、渋々手荷物受付カウンターに行ってみたら、案の定、かなりの行列…。まぁ、仕方ないか…と思いつつ、並びながらこの時はまだ余裕ぶっこいてこんな投稿をFacebookにしてました。

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 が、並んでおよそ30分。ようやくカウンターにたどり着いたとき、衝撃的な事実を告げられます。

 

 

係員:「お客様、パスポートの有効期限が半年未満です。この場合、ベトナムには入国ができません」

 

 

 な、な、な、なんだってー!!!

 

 いや、完全に自分の事前リサーチ不足なんですが、そんな制約あったんかいな…。てことは、今回、自分はベトナムに行けないってこと…? 6日に現地の学校で授業があるんだけど、どうしよう…。と、頭の中が真っ白になる。が、そこにベトナム航空の係員の方からアシストが。

 

係員:「e−VISAはお持ちではないですか?」

 

 ああ、そうだ。

 そういえば昨年の実証事務局の担当から、短期間に複数回のベトナム渡航を行うことになった場合など、特定要件のときにはオンラインでビザを発行し、それを用いて暫定的な入国ができるという仕組みがあるなと。今回は8月に続く2回目の渡航なので、事前に少し調べてあったのだった…。が、「短期間」に該当しないから大丈夫、ということでe-VISAは申請はしていなかった。ということで、持っていない旨を伝えると…

 

係員:「そうですか…。保安ゲートは出発1時間前に閉まるのですが、それまでの間にe-VISAをメールで受け取ることができれば、出国いただけます」

 

 という、タイムトライアル案件発生!!まじかー!!

 

係員:「e-VISA発行のためにWebサイトにアクセスいただき、必要な情報を入力します。情報が正しければ、相手からメールが飛んできます。そのメールに書かれているいくつかの質問文に返答し、数往復すると、メールにPDFでe-VISAが添付されて来ますので、PDFファイルを受けとったら改めてカウンターまでお越し下さい。なおやりとりはすべて英語です。

 

 えっと。

 

 飛行機の出発時刻は16:45。遅延はない。

 

 つまり保安ゲートは15:45にクローズになる。この時、15:05。残り40分で、フォームの入力と数往復の相手とのメールのやりとりをしなければならない。

 フォームの入力はたぶん終えられるだろうけど、その後のメールのやりとりがスムーズにできるかどうか…。とはいえ、やってみないとどうにもならない。大丈夫。英語ちゃんと勉強してきたし、現地の栄養の専門家のやりとりも英語メールでここまで調整してきたし、やれるはず。

 

 ということで、内心相当焦っていましたが、なんとか心を落ち着けて鞄からMacBookを出してカウンター近くで作業開始。

 

 

お客様、そのサイトは…

  ということで、事前に調べていた時に参考にしたWebサイト(日本語でe-VISAの取り方を解説しているサイトがあることは知っていて、それを見ながらステップバイステップでやればいける)を参照しながら、ひとつずつフォームを入力。

 顔写真とパスポート画像をWebフォーム上から登録する部分もあった。あー、顔写真はどっかにあったな。パスポートはさすがにスキャンしたデータなんて持ってない。どうするか。

 あ、そうか、顔写真の載っているページを撮影すればいいのか。大丈夫。俺にはカメラ最強のiPhone 11 Pro Maxがある。そう、iPhoneならとれる。写真もe-VISAもね。

 

 で、とりあえずパスポートの写真を撮り、AirDropMacbookに送る。AirDrop。なんて素敵な技術なんだ。今の中高生にはAirDropが使えることから、機種の新旧を問わず「とりあえずiPhoneを持っていることが重要」という考え方があるらしいけど、納得だ。これならスキャナがなくても大丈夫。そう、iPhoneならね。

 

 このタイミングで、手荷物カウンターに同行予定の専門家の方が来たので、最悪の事態に備えてスーツケースの中の授業の資料や媒体一式を託す。

 

 で、意気揚揚とAirDropしたパスポート画像をWebフォームにUP。その他の入力項目もチェックし、よしこれならば大丈夫。送信!現在時刻15:20。なんとかなりそうだ。

 

 とおもったら、赤文字のエラーが返ってきた。曰く

 

Web:「このファイル形式は対応してないからPNGJPEGでUPせよ」

 

 はて。どういうことだ…?と思ってAirDropした写真の拡張子を見てみたら…

 

     でた!!!「.HEIC」!!!

 

 iOS11から導入された、より高画質でファイルサイズを抑えることができるAppleの独自規格。より軽い容量でいい写真が撮れる。そう、iPhoneならね。

 

 だが、そのファイルのためe-VISAのページが通らない。

 

 ぬぅ、ならば変換だ!変換ツールを検索するが…意外とめんどくさそう。ならばiPhone側の設定を変えるか!この手の情報はWebで検索すればメニューを辿って項目を探すよりも早く結論が見つかることが大半。あった。設定>カメラ>フォーマット>互換性優先。よし、再撮影!AirDrop!アップロード!フォーム送信!

 

 できた!受理された! あとはメールの返信が来てくれればOKだ。すぐ自動受付のメールが来たので、これでいけそうだ。15:30。なんとかなるかもしれない。

 

 だが…。メールが来ない。

 

 リロード。

 

 来ない。

 

 ReLoad、ReLoad。

 

 Shoot Out Side of Screen。

 

 なぜだ。フォームも写真も完璧のはずだ。

 あとはそちらから来る質問メールに回答すればよいのだ。

 はやく送ってくれ。回答する準備はできている。

 

 しかし、貴重な時間を5分ほど費やしてもメールが来ない。

 

 15:35。あと10分。これはもうだめかもわからんね

 

 ということで意を決してカウンターのスタッフさんに声をかける。

 すでに大半の乗客はチェックインを終えているので、列はほぼなくすぐ自分の番に。事情を話したところ

 

係員「お客様…。そのサイトは、違います…。お申し込みは、こちらのサイトをお使いください。」

 

 現在時刻15:40。詰んだ。

 

 

 

ロスタイム

 しかしそのタイミングで、係員のいるカウンターに業務連絡が。

 

係員「はい、VNXXX便の〇〇様。ご到着が遅れそうと。わかりました。保安ゲートに確認します。」

 

 もしや。これはロスタイム発生か。真っ青になりながらも、一縷の望みをかけて残り5分、諦めず新しく教えてもらったサイトのフォーム入力に進む。冷や汗だらけだ。

 

係員「お客様、保安ゲートが16:00までなら待機できるそうです」

 

 

 神よ。

 

 大急ぎでフォームの英文を読む。入力項目はこっちのほうがだいぶ少なくて簡単ではないか。ほどなく入力完了、送信!

 すぐ受付確認のメールがきた。それを見て係員の方が事務局に電話をかけ、状況を確認してくれた。どうやらこのサイト、緊急での即時VISA発行のための仕組みで、他のサイトと比較しても最速でe-VISAが出せるらしい。早く言ってよねー(片桐仁風)。まさにギリギリフォン。

 

 そしたらすぐにメールがきた。いくつかの内容を確認するメールだ。

 

 さらにe-VISA発行申請の決済に使ったクレカの写真を送れと。大丈夫。同じ轍は踏まない。iPhoneJPEG形式で撮影してAirDrop。メールに添付して、他の必要事項を記入して返信。現在15:50。間に合うか。

 

 そしたら今度は「最終確認」と称してメールが。確認したら「confirmed」と書いて返信せよ、というもの。これでApproveされたらe-VISAが出るらしい。

 このメールでのやりとりというのが心臓に悪い。いつ返信が来るかわからないので…。返信は15:54。頭の中にはずっとカルナック城のタイムアタックの音楽が流れている。頼むからここで「こいつただのぐんそうじゃないわ!」が発生しないでくれ。

 

 メール返信待ちの間に、どうやら先程遅れると連絡があったと思われる3人組がカウンターに到着。いそいそとチェックインを済ませて保安ゲートへ。これで名実ともに最後の1人になった。

 ひたすらメーラーをReload。タイムクライシスばりに右足に力が入る。

 

 そして…

 

 

 きたー!

 

 PDFじゃなくてJPEGデータだけどきたー!! 

 

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 大急ぎでe-VISAの番号を係員に番号を伝える。すぐにチェックインチケットが発行される。全面的にサポートしてくれたベトナム航空のスタッフの皆さんに御礼をつげて、保安ゲートにダッシュ!!

 

 ということで2分前、15:58に保安ゲートに到着。超絶ギリギリでなんとかなりました。

 

さいごに

 しかし、こういう追い詰められた状況だと、英語をいちいち翻訳サイトにかけて意味を確認したり、メールの文面を読み解いて英文で返信を書くのに文法チェックとかやってる場合じゃない。ホントに英語に触れておいて良かった瞬間。

 今回の出張ではポケトークとか相応の精度で英文和文相互変換ができるサイトとかいろいろ仕込んでいたんだけど、結局こういう時に最後に役立つのは自分の頭の中にストアされている英語とその経験値。Brokenな表現かもしれないが最速最短のフレーズで相手に意味が伝われば良い。こういう度胸が改めて大事だな…と再認識した次第。もちろん、そのうち技術が解決してくれるところもあるかもしれないけど、技術が常に使える状況とは限らない…。
(もちろん、こういう地の英語力が必要とされるようなシーンは、技術発展でだんだん減っていくかもしれないけど)

 

 あとは、普段身近で使っている情報機器の使い分けとか、その機能とか、すべてを知っている必要はないんだろうが、どういう仕組みが入っているかどうかを知っているて今回は助かった。iPhoneの画像形式がiOS11から変わったことを予備知識として知っていたから、すぐに調べることができたけど、ここでつまづいて2分以上調べてたら間に合わなかった…。このへんは、手持ちのアイテムの状況によっての使い分けみたいなスキルというかリテラシーが明暗を分けたところかもしれません。

 

 なにが言いたかったというと、世の中、事前に知っておくとどこで役立つかわからない情報ってたくさんある。大半はそれらは無駄知識かもしれないけど、その無駄知識かもしれないものが積み重なって、今回みたいに0か1かみたいなギリギリの状況で1がとれるケースもある、ということ。

 今回はたまたま自分の無駄知識かもしれないiOSとかiPhoneに関する予備知識だったり、英語だったり、事前に調べていたことの一部が役に立った。ただ、最初にどのサイトで作業するべきかを係員員に聞けばこんなに焦らなかったし、そもそもパスポートの有効期限問題を事前に調べておかなかった自分が悪い。

 ただ、状況が自分のせいでより悪くなった時、瞬発力を発揮できるかどうかは、日々自分の中に蓄積されている情報と、その情報を必要な時に瞬時に引き出せること(たぶん焦って冷静さを失っている時にはこっちのほうが難しい)がかなり重要。いくらGoogleや頼れる外部知恵袋が技術発展で生まれてきたとしても、AIが部分的に最適解を生み出してくれたとしても、それを最終的に活かしたり組み合わせたりという部分はしばらく人間の頭と行動が担うわけだから、知識のインプット、技能の習得、それらを用いた思考と判断、場合によっては関係者との協働や困った時に躊躇無く第三者に助けを求められるようにする、というのはやはり普遍的に必要なことなんじゃないかなぁとおもった次第。

 

 

 とはいえ、読者の皆様におかれましては、事前準備と段取りをだ時にして、こういうギリギリに陥って焦らなくても済むように備えましょう。自分がいつも弱いのはそこなのです…。

 

 

お詫びと訂正:初出時、最後の段落において、「Brokenな表現かもしれないが最速最短のフレーズで相手に意味が伝われば良い。」とするべきところを、Blokenと書いており文字通りBrokenな表現となっておりました。誠に申し訳ございません。現在は訂正済みです。