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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

2020年の抱負:教育用コンピュータ「一人一台」の実現に向けて

 2020年が明けました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 今年はいろいろと決意をしている部分があり、2015年以来となる「昨年の振り返りと今年の抱負」について書いてみたいと思います。

 タイトルの通り、今年の抱負は”教育用コンピュータ「一人一台」の実現に向けて”、組織人・個人としてできる限りの支援を行うことを掲げたいと思います。

 

筆者は、2020年1月1日現在、組織人・個人として以下のような活動をしています。

株式会社Z会の「経営戦略部 事業企画課」という部署にて主に新規系事業を担当する管理職として従事しており、その業務として中央省庁と一緒に働かせていただいている(経済産業省「未来の教室」実証事業文部科学省「Edu-Portニッポン」等)

※昨年より担当させていただいてる業務

経済産業省「未来の教室」実証事業 

文部科学省「Edu-Portニッポン」公認プロジェクト

 

一般社団法人iOSコンソーシアム代表理事として、学習者中心を軸とする「教育のICTによる拡張」を目指し、主に全国の教職員を支援する活動をさせていただいている

「一人一台」に成功している先進校の取り組みの普及促進活動

近畿大学附属高等学校 乾 武司教諭による「一人一台」の目的と効果を啓蒙する活動の一環として、講演の模様をYouTubeライブ配信アーカイブ配信)

 

(主に教職員の方向けに毎月テーマを変えた「月例勉強会」を開催し、先端を走る方を講師に招き最新動向や事例を共有、昨年は静岡、札幌、広島への出張開催も実現)

※こうした活動は2015年の6月から行っていましたが、2019年4月からは所属会社の承認を得て、iOSコンソーシアムを「教育特化型の組織」として再編成し、当方がその代表理事に就任する形で運営をしています

 

個人として、本ブログを通じた情報発信や課題解説・解決策提案

(昨年は「プログラミング教育」によく用いられているWebのプログラミング学習環境”Scratch 3.0”がIEをサポートブラウザから外したことに端を発する学校のブラウザ問題について3回に分けて記事を執筆しました)

また、昨年暮れにはこのようなアンケートを企画、個人として実施し、結果を本ブログで公表しました。

 

 

このように、当方は公私ともに「教育とICT」というキーワードで動いており、その基本的な行動原理は以下のスライドに示す考え方で進めています。

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野本の行動原理

 本ブログ(特に先に示したIE縛り問題に関する記事)では幾度となく「相互理解」が重要になるという言葉を使っていますが、教育とICTという領域は、教育者とITエンジニアという、かなり異なる言語を話す人たちが協働しなければ成立しない領域です。当方はKDDIでの8年間の勤務で主にITエンジニアとして、そして現職のZ会で2年半強の勤務を通じて教育の領域で活動する企業人として、また、両親がそれぞれ大学と公立中学校で教鞭をとっている元に育った個人として、異なる文化の間のインターフェースとなり、「教育者」と「ITエンジニア」のよき通訳として動くことを目指してきました。上記で示してきた昨年の活動は、その一部です。

 

 そんな中、今年はいよいよ、国家施策としての「義務教育課程における教育用コンピュータ一人一台の配備」が動き出します。筆者の今年の抱負は、この動きに対し、これまで従事してきた公私様々な活動の知見を投じて支援をしていくこと、言い換えれば、この動きを進めるにあたって課題を抱える自治体の教育委員会や私立学校をできる限り支援していきたい(具体的には外部アドバイザーのような形で、既存の教育現場が一人一台を実現する上で発生した様々な課題とその解決策を、これから動き出す学校設置者に継承し、よりよい学習者中心の学びの拡張を実現する)と考えています。

 

www.mext.go.jp

 この中で特に重要なのが上から二つ目のリンク(GIGAスクール構想の実現パッケージ :https://www.mext.go.jp/content/20191223-mxt_jogai02-000003329_002.pdf)で、文部科学省だけでなくインフラ面で総務省が、ソフトウェア面で経済産業省がそれぞれ補正予算を計上し、この動きをバックアップしているということです。令和5年度までに小1〜中3の義務教育課程には公立・私立を問わず「一人一台」が実現できる工程表が引かれ、かなり多額の補助金がこの実現のために投入されます。

 特にコンピュータやインフラについては国庫からの半額補助、従来より措置されている地方交付金を組み合わせることでなんと整備に必要な金額のうち最大8割(地方交付金が利用できない自治体もあるのであくまで”最大”)が支援される形となり、特に財源不足で教育用コンピューターとそれを支えるインフラを整備できなかった自治体(公立学校)にとっては千載一遇のチャンスとも言えます。(そして意外と見逃されていますが、私立学校にも119億円の補助金予算枠があります)

 また、省庁のみなさんは「インフラについては令和元年〜令和2年の間のワンチャンス」とも言っています。この好機を逃さないよう、前職でインフラエンジニアとしての業務経験(特に私立学校を中心にSEとしてICT環境の導入サポートをしていた経験)と現職で教育分野の言語をある程度理解しているという強みを生かして、学校が理解しやすい形でICT化のメリットの浸透、超えるべき課題の共有、デメリットに対するワークアラウンドなどを教育機関と同じ目線で提供できればと考えています。ここには、2018年度に取得した「教育情報化コーディネーター2級」(日本に200人程度の認定者がいる、教育のICT化に対して一定のスキルを保有することを証明する資格。基礎的知識を問うCBT、他国の事例などを踏まえ出題される記述式試験、仮想自治体の課題解決のための模擬提案書作成、その内容を説明するビデオを撮影し、口頭試問による面接合格が必要で、一般的に「ICT支援員」の指導育成ができるレベルとされている)の知見も動員し、現場との相互理解を大事に協働していきたいと思っています。

 ということで、GIGAスクール構想」の発表を受けて「どうやってこの流れをつかもうか…」「課題は盛り沢山だけどこれを前向きに捉えて進みたい」という教育委員会の方、私立学校の方、ぜひ当方に連絡をいただければと思います。また、Z会iOSコンソーシアム、あるいは当方個人を通じて趣旨に賛同いただき、ご一緒いただける企業・組織団体の方とも是非連携をできればと思います。

 当方一人ではできることには限界がありますが、Z会、およびiOSコンソーシアムという「組織」も動かしつつ、今年は一つでも多くの教育機関が「一人一台」を「学習者中心」での価値づくりを目指して実現できるよう、全リソースを投下していきたいと思っています。といっても、抱えられる案件には限度がありますので、できるだけ早く、そして強い達成志向を持っていらっしゃる自治体・私学の先生たちと一緒に戦いたいと思いますので、ぜひ「ご一緒したい!」という方がいましたら、当方までご連絡ください。なお、GIGAスクール構想は義務教育課程までが明確なサポート対象ですが、高等学校以上については主にBYODを中心とした設計になると見ておりまして、学校向けBYODの導入についてもご支援ができればと考えています。

 ご参考までに、当方の技術面での強みはiOSiPad)とその周辺ソリューション(フィルタリング、MDM、各種コンテンツ、これらの導入支援および保守運用)になりますが、公私を通してWindowsChromeBookMacBookなど各種端末を日常的に使い分けており、複数OSが交錯する領域についてもぜひやってみたいと思っています。加えて、進化の早いIT業界であれば必ずどこかで「未知の課題」に直面するので、そこについては決して「知っているフリ」をすることなく、課題を丁寧に検証することを通じて私自身も常に「学び続ける」ということを宣言したい(これがある意味今年のもうひとつの抱負)と思います。

 連絡手段ですが、Facebookをやっていらっしゃる方は、Facebookで「野本竜哉」を検索していただき、メッセンジャーからメッセージをいただくのが最も早いです。Facebookをやっていらっしゃらない方は、当方あてにメールをいただければと思います。メールアドレスは:i.found.it.in.the.river70【あっと〕gmail.com です。

 

 最後に、あくまで「一人一台」の教育用コンピュータとインフラ整備は、「学習者中心」の教育的価値を実現するための手段でしかありません。導入や整備を目的とするつもりはありませんし、導入をするのであればなぜ多大な労力と知恵を投入してこれを実現するのかという「目的(大義)」がとても大事だと思っています。そこには「どのような教育を提供したいか」「生徒児童にどのように育ってほしいか」というビジョンがあり、それを「ICTでどのように補強するか」「ICTでいかに加速するか」という観点が必要不可欠です。

 少なくとも、当方の現所属は教育用コンピュータとインフラ整備のどちらも生業としている会社ではなく、端末やインフラ機器の販売を通じて利益や売り上げを挙げたいとは全く思っていません。あくまで当方は、多少なりとも教育の言語を理解するICTのエンジニアに近い立場で双方を通訳し、相互理解を促進する立場を志向しています。ICTで何ができるか、どのように教育が拡張できるかを具体性を持って組織と関係する企業が認識し、同じ目的を共有し、様々な課題解決に向けて協働できる状況を目指したいと思っていますので、ICTに対する苦手意識がある方でも、遠慮なくお声がけください。当方は高校3年生の時からICTを「学習者」の立場で活用してきて、学習者目線でこの領域の課題や利点を見つめてきた人間ですので、きっとお力になれると思います。

 

 ということで、本年もよろしくお願いいたします。