EverLearning!

モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

iPadを導入展開時に必要そうなスキル一覧表を公表します

 通常、このブログでは学習者目線での情報発信をすることが多いのですが、GIGAスクール構想による自治体ごとの調達が順調に進んでいる(そして思ったよりもiPad採択自治体が多そう!)という状況から、本ブログが以前から推しているiPadの学習環境構築にあたり、ぜひとも押さえておきたい技術的なポイントを公表しちゃいます。

f:id:nomotatsu:20200930154958j:plain

 なお、公開するのはあくまで「導入時に一緒に作業するベンダーさんもしくは担当者が知っておくとよい知識、スキル集とその内容の概要」であって、それぞれのスキルの中身や答えは記載されていません。

 

f:id:nomotatsu:20201007214248j:plain

 こちらからダウンロードいただけます。

  PDF版 Ver1.0 

  Excel版 Ver1.0

 

 なお、今回はGIGAスクール構想で導入される端末が原則として「一人1台」であることを踏まえ、Shared iPadの利用に必要な知識や対応は省いています。もっと言うと、ここに記載している内容は導入形態によっては不要であったり、一部分だけしか必要ではないケースもけっこうあります。自治体や学校としてそもそもMicrosoft 365を導入していないのであればいらない項目があったり、Apple Configurator2 は果たしてどの程度必要なのか、であったり…。

 要は、ある程度詳しい人であれば、このリストが備忘録的に使えるんじゃないかな、と思っています。

 少なくとも、

・このあたりの質問にもれなく回答し、取捨選択できるベンダーさんなら任せて安心

・この質問項目を見てふんふんなるほど、と納得できる担当者がいる自治体さんも安心

 (これを踏まえて調達仕様のデザインができるならば安泰)

 だと思います。

 

 なお、このリストはまだ未完成(というか、今後もアップデートされていくし、永遠に完成しないという説もある)です。

「いやこれも入れたほうがいいんじゃね?」

「そもそもApple IDの取り扱いからして議論の余地があるんじゃないの?」

などなど、このリストについて根本的なツッコミ要素もあると思います。

 

 そのあたりは、適宜アップデートしていきたいと思いますので、ぜひ筆者までご意見を頂ければと思います。お待ちしています。

 

※リストの利用・活用はすべてにおいて「自己責任」でお願いいたします。内容は時とともに古くなったり、ベターな運用方法が変わっていくものです。もしかしたら筆者が正しく認識できておらず間違った情報も含まれるかもしれません。
利用により生じたいかなる損失・損害について、筆者では責任を負いかねるので、その点だけ十分にご了承のうえでご利用ください。

【アンケート開催中】 生徒児童が主導する『私たちの学び方改革』実現プロジェクト始動

 このブログの読者の方はご存知のとおり、筆者 野本 はこれまで「学習者の目線で、教育をICTの力で拡張する」という考え方で様々な情報発信をしてきましたが、コロナ禍で様々な対応や対策が取られていく中、筆者はどうしても「その判断や意思決定に、まず学習の当事者である生徒児童の声ってどこまで反映されているのかなぁ」と思うことがありました。また、保護者たちの声も、意外と「ちゃんと聞いてもらう機会がない」という点も、気になっていました。

f:id:nomotatsu:20200724125022j:plain

先生や企業と一緒に生徒が、自分たちのiPadの機能制限や設定内容を検討している様子。2016年実施・撮影。筆者はこうした「学習者」に実際に教育領域の意思決定に参画してもらう機会を大事にしてきました。

 そこで、「じゃあそういう機会を作ろう」と、野本がFacebookで協力してくれそうな方に呼びかけて、この7月、「生徒児童が主導する『私たちの学び方改革』実現プロジェクト」という有志メンバーによる組織が発足しました。その活動として、
 1)生徒児童とその保護者によるアンケートを実施し、生の声をできるだけ集める
 2)そのアンケートをもとに、有志の生徒児童や保護者にオンラインイベントにて直接
    意見や想いを表明してもらう機会を作る
 3)集まった意見や声から、異なる環境で学んだ生徒児童の有志たちで複数のグループを
    構成し、そのグループで「学習者の目線でwithコロナ時代の学び方」を考えてもらう
    そこに、教職員や保護者、学校でのICT活用などの領域で活躍する社会人などに
    メンターとして入ってもらい、検討を深める
 4)最終的に、学習者が中心となり、それを大人たちが補佐する形で、学習者として
  「どんな学び方をしたい」という声を取りまとめ、社会に届ける
ということをやってみようと思っています。
運営事務局メンバーには、現役の学校の先生はもちろん、研究者の方、議員の方、現役の大学生の方、保護者代表の方、企業の前線の方など多様なメンバーが参画してくれています。
(この手の活動を教育関係の人たちだけでやろうとすると目線が偏るので、あえて教育とは異なる文脈の方をコアメンバーに入れさせていただくようにしました)

正直、どこまでやれるかは分かりませんが、せっかく国がGIGAスクール構想であったり、オンライン・リモートでのは働き方や学び方について検討をしている最中だからこそ、大人たちの都合やエゴではなく、学習者たち自身の声もそこにうまく反映させたい(特にデジタル機器の扱いについては生徒児童のほうが優れている部分もあるのだから、そこを反映しないのはもったいない!)ということで、荒削りなことは百も承知でまずは動き出しました。

 

ということで、第一弾として、まずは小学校6年生〜高校2年生の方と、その保護者を対象としたアンケートを現在実施中です。(7月いっぱい実施予定)

forms.gle


もっと低学年でも答えたい!とか、高校3年生にも書かせろー!とか、いろんな声があることは承知しているのですが、まずはこの範囲ですみませんがやらせてください。

なお、このアンケートではコロナ禍の休校やその後に起きた出来事に対して、課題だけでなく「良かったこと」も聞いています。現時点で160名ほどの方から回答が寄せられているのですが、保護者、生徒児童ともに「学校や先生たちの奮闘」であったり「臨機応変な対応」に対して感謝する声がとても多いです。一方で、これからGIGAスクール構想などを進めていったり、まさに迫っているコロナの第二波に備えるためにICT環境をどう整備すべきか、という点ではおもわず唸る生徒児童目線での回答(自由記述)もかなりあります。
(例えば、先日各地を襲った集中豪雨にて一部居住地の生徒児童が学校に登校できかった間に、今回のコロナで構築されたオンライン学習のシステムをなぜ使ってくれなかったんだ、という声もありました)

なお、このアンケートはあくまで無記名で、回答にはどこにも学校名や個人名を記載するところがありません。ポジティブなこと、ネガティブなこと、自由に書いていただいて大丈夫ですし、回答を全国から(海外からも)受け付けているので、そもそも回答者が誰かを特定することは困難です。そして事務局としてそんなことをする必要性も、やりたいという考え自体もありませんので、ご安心を。

なお、最後の方に任意で、お住まいの地域(都道府県レベルでOK)、冒頭の2)〜4)のイベントに興味がある人向けに連絡先となるメールアドレスをお伺いする項目(これも特定項目を選んだ方、かつ、メールアドレス提供に合意された方のみ)がありますが、いずれも必須ではないです。

ぜひとも、最終的なゴールとして「生徒児童自身が、withコロナの時代に自分たちでどう学びたいかを考えて、発信していく」という趣旨に賛同される方、このアンケートや活動をご支援いただければと思います。特にアンケートについては、シェアをたくさんしていただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

【結果共有】情報機器を使って休校中に遠隔での教育に参加した児童生徒へのアンケート(n=73)

 本日は、昨年公開して各方面から好評を頂いた「学校で「一人1台」環境で1年以上学んだ児童生徒170名に実態を聞いてみた」の続編を書いてみます。

it-education.hatenablog.com

 今年3月から急遽始まった休校対応においてICTの活用が注目されている中、いち早くICTを活用したオンラインでの教育を実施したいくつか学校にご協力いただき、「学校との間の遠隔(オンライン)教育を受けた生徒(一部児童)へのアンケート」を行ないました。その結果を公表したいと思います。

 以前はGoogle  Formsのアンケート結果ページにこのブログから直接リンクをする方式にしたのですが、このアンケートは継続的にしばらく実施してもいいかなと思っておりまして、アンケート回答ページをあえて閉じずに結果を公表するという方式にしたいと思います。この方式だと、今後回答数が増えて結果の傾向が変化してきたときにも追跡ができるので、面白そうかなと。

 なお、アンケートへの回答ページは一般には公表しておらず、学校の先生経由でのみ展開することにしています。「ウチも回答したい!」という場合は、ぜひ筆者までご連絡ください。見ていただくとわかりますが、学校名や生徒児童の個人名は一切収集していませんので、純粋にオンライン・遠隔教育を受けた感想が分かってメリットも多いと思います。

 ということで本日はアンケートの公開(4/3)から一次締め切り(4/24 23:59)までにご協力いただいた73名の生徒児童の生の声を紹介したいと思います。

  • 回答者の学習に使った端末に関する質問
  • どのような教科が遠隔・オンラインで教えられているのか?
  • 生徒児童は遠隔・オンライン教育のどこに困っているのか?
  • 生徒児童が遠隔・オンライン教育をやってみて「よかったこと」は?
  • では、みんなこれからも「オンライン・遠隔」教育を受けたいのか?

 

続きを読む

もし自分が学校ICT導入責任者だったら…「今ならこうする」の一案 -ノートをデジタル化して学習者の機動性を高める-

最近、世の中の話題がインフラ・OS・端末の話が中心になっていますが、これらを適切に選ぶには「何に使いたいか」「それで何を成し遂げたいか」が大事、という話は何度かこのブログでも触れています。

 しかし、なかなかその具体例の明示って少ないな、もしくは、今の時流を踏まえて新しくなっていないな、と感じることが増えてきた。今日は ぼくのかんがえたさいきょうのガンダム ではないですが、自分がもしどこかの学校や教育委員会で学校ICTの導入責任者になり、限られた予算で学習者にとってメリットがあり先生の負担が少なく「まず第一歩を踏み出せてみんな幸せ」なモデルを考えなさい、といわれたら「多分こうするかなぁ」というものを書いてみようと思います。

f:id:nomotatsu:20200209111942j:image

 先に目次という形で結論を書くと、以下のような使い方を考えました。 

ただ、以下のユースケースは少々成人教育な色合いが強いので教育学的にはどうなのよ、という批判があるであろうことは承知してますが、「現実的かつ効果的」なアイデアの叩かれ台として少々専門家の先生たちの批判が怖いながらも書いてみます。
 


対象は一般的な公立小5年〜中学校以上

 今回は、文科省のGIGAスクール構想の令和二年度の端末整備ロードマップ小学校5年生〜中学校1年生となっていることを踏まえて設計しました。「中学校以上」としているのは、条件が整えばこれ以上(私学や中高一貫、公立の高校も含む)の学校段階でも同じことが十分通用する汎用的な設計だからです。

 汎用的な設計としたのは、ICT導入初期段階においては、できるだけ教科や科目・単元を問わずに幅広く使えて、全体に浸透しやすいところから着手するのが良いと考えたからです。特定の教科のみで劇的な効果を発揮するユースケースも沢山ありますが、導入初期時点で個々の事例を考えるのは難易度が高すぎる(そして特定教科の声の大きい先生や事例に引っ張られて科目間の活用が極端に偏るリスクもある)と考え、敢えて教科横断・学年学校種横断で使える案としました。さらに「導入するにあたって先生への負担感が小さめ」であるが、「導入した児童生徒のメリットが大きく、使い続ける動機になる(死蔵されにくい)」、そして「他に必要なシステムが少なく安価にスタートできる」こと、そして導入後に先生と児童生徒ともに「導入の意義が認識しやすい」こと(=来年度以降も続けるための動機になりやすいこと)を意識しています。

 

インターネット接続できるインフラはあるが、スピードが万全ではなくてもOK

 これは「ずーっと将来に渡ってスピードが万全でなくてOK」と言っているわけではないので先に誤解の無いようにお伝えしておきますねGIGAスクール構想では最大8割引でインフラ整備ができる仕組みを国がせっかく作ってくれているので、それはしっかり活用してください。(ちなみにあまり知られていませんが私学も使えますよ!)

 ただ、なぜこれを書いているかというと、いくら今回のGIGAのスクール構想で校内のLAN環境が1Gbps(一部機材は10Gbps)対応になっても、今回の予算の建付け上、学校からインターネットに出ていく回線の速度が十分でなくなる可能性があることを懸念したからです。例えば全員が一斉に動画を視聴したり、リッチなアプリを活用したりしても、インターネット接続点がボトルネックになって、満足に使えない可能性がある。そしてインターネットに接続するための回線は学校の「外」にあるため、今回のGIGAスクール予算の対象外(つまり自治体なり学校が自分で支払う必要がある)なのです。

 これで「授業が止まってしまう」とか「準備にものすごく時間がかかる」だと持続的な取り組みにはなりません。そのため、スタート当初はもしかしたら校内配線や機器は整っていても、インターネットが遅いかもしれない、というリスクも踏まえて「それでもちゃんと使える」案を考えました。

 

端末は一人一台のiPad WiFiモデル+Lightning接続キーボード+Apple Pencil互換品

 さて、いよいよ具体的に何がやりたいかを書きます。今回やりたいことを実現するための最も安価な構成は以下の通りです。

 ・iPad(第7世代) WiFi 32GB 想定価格 32,800円 (税込 36,080円) 
  https://www.apple.com/jp/ipad-10.2/ ※教育向け価格は少しだけ安い
 ・Lightning接続の有線キーボード 想定価格 税込 1,000円程度
  https://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_parts.php?ic=439671&lf=0
  ※キーボードは消耗品と割り切って高いものにしない
 ・スタンド機能を兼ねるケース  想定価格 税込 1,500円程度
  例えばhttps://item.rakuten.co.jp/loof-shop/lingchen05/
  ※ケースは、個人的には個性を出すものなので家庭で買ってもOKとしたいが
    最低限のものを用意するならこれくらいか?
 ・LogiCool Crayon 想定価格 6,800円(税込み 7,480円)

 上記の合計価格は税込みで46,060円ですが、ある程度まとまった数で調達すれば十分GIGAスクール構想の端末 45,000円 の定額補助に収まるでしょう。ただし、ケースはあくまで傷防止レベルであって、耐衝撃などの性能を持っていない点は注意が必要です。(この辺はiPadに限らずどの製品でも同じですが)

2020.2.10 追記:ケースやペンなどの周辺機器は補助対象外(←の資料6ページ目)だった…。かつ、本体価格が4.5万円を下回る場合は、補助額はその本体価格まで。となると、4.5万円に収めても周辺機器の上記1万円相当分は、自治体の持ち出しになりますね。それならば、というのも変ですが、容量128GBの上位モデルが42,800円(税込 47,080円)なので、自分ならこちらを選びますかね…

 ポイントは、今回はキーボードは「使いたいときだけ使う」としている点。なので最低要件を満たすレベルにしかしてません。今回の提案はキーボードでの文字の入力よりもハードルが低い部分よりも先にやったほうが良さそう、と考えての提案だからです。また、キーボードは何よりもまっさきに壊れやすい部品なので、交換が利きやすい安価なものを外付けにしておく(本体一緒に壊れるリスクを最小化する)という考え方です。

 

SAMRモデルに基づき、まずは学習者の「ノート」のSubstitution(代替)から
   →受益者負担で「Notability」というアプリを買ってもらう

 今回の提案の最大のポイントはここです。導入したICT端末で何をやりたいかというと「ノートをデジタル化する」。以上です。

 いやそんな単純でいいの?と思うかもしれませんが、効果は絶大です。ノートのアプリとして筆者が以前からパワープッシュしているのが「Notability」というものです。 

 

Notability

Notability

  • Ginger Labs
  • 仕事効率化
  • ¥1,100

apps.apple.com

 

 お値段1100円。ですが、これを1回買えば、もうノートを文具屋さんで買わなくてよくなります。在学中ずっと使えるノートが1100円で買えると思って良いです。なのでここは「受益者負担」としました。学校が校納金、あるいは教材費として一括で集めて児童生徒に配布するのが良いと思います。

(2020.2.9 21:30追記: 上記イタリックの部分の「受益者負担購入」が、WTO調達の仕組みを回避しようとしている(違反)のでは?という指摘がありましたので追記しておきます。この部分の適法性については識者の皆様のご意見を仰ごうと思います。)

https://www.mext.go.jp/content/20200130-mxt_syoto01-000003278_15.pdf

 

この提案でできるようになること

 45,000円 の端末+周辺機器と、上記のアプリでできることは絶大です。

 ・生徒はiPadとペンで日常のノートをとる(縦位置がおすすめ)
 ・ノートをとるのと同時に録音ができて、授業内容はいつでも聞き返せる
  (自分の筆跡と録音がリンクするので、聞き返したい部分の頭出しも即座)
 ・ノート内に板書の写真や授業の様子も挿入できる
 ・録音付きのノートは友達にAirDropを使って即座に共有できる
  (欠席した時も友達のノートを受け取れば音声もついてくる
 ・先生にノートを提出する時には、PDFに出力してGoogle DriveでもOne Driveでも
  好きな方法で提出するだけ
   →先生も提出されたノートにiPad上でPencilで赤入れをしてPDFを戻すだけ。
    物理的な回収と返却作業が不要
               ロイロノートスクールMetaMoJi Classroom  などを組み合わせるのもGood
 ・児童生徒は過去のノートふくめ書いた内容を「検索」できる
   →あの内容いつ習ったっけ?を即座に検索して探し出せる
 ・ノートは全部、クラウドにバックアップされる
   →端末が故障しても児童生徒に学習ログ紛失のリスクが少ない
 ・上記の「バックアップ」をするときだけインターネットにつながっていればいい
   →それ以外はぶっちゃけオフラインでもOK
 ・なによりも、児童生徒のノートが紙からiPadに置き換わるだけなので、先生は
  必ずしも授業スタイルを変えなくてもよい
   →もちろん、今後もずっと変えなくていいわけではない。でも、児童生徒が
    ICTに慣れている状況になれば、先生たちの授業スタイルも自ずと変わる。
    後述するようなインタラクティブなやり取りをきっとやりたくなる。

 筆者はiPad Pro 初代(およそ4年半くらい前)から今までおよそ4年半、iPadをノート、議事録・講義講演録、メモとして紙をできるだけ使わない生活をしてきた経験があります。そしてこれを経験すると、大抵の人が抜けられなくなります。事実、筆者が実際にNotabilityを使って色々やっているのを見て周囲に同じ組み合わせでiPadを購入した人の数(通称:被害者)も多数。学習者にとって明確なメリットがあるものは、ほっといても使われますので死蔵される心配が少ないのです。

ちなみに、ノートをデジタル化するメリットは前回の記事にも少し書きました。

it-education.hatenablog.com

 PCは「キーボード」に慣れないと使いにくいという考え方がありますが、最近のパソコンやタブレットは、ペンの性能が10年前とは段違いに進化しており、ほぼ紙と同等の感覚で書けるようになっています。手をついたまま書き込んでも誤作動しない、かなりのスピードで字を書いてもちゃんとついてくる、など。
 しかも、最近では手書きで書いた文字をあとから「検索」できる技術も進歩しています。大量の授業ノートの中から特定の単元の情報を検索することだってできます。綺麗な字で書いた方が検索に引っかかりやすくなるので、字を綺麗に書くわかりやすい動機も生まれます。
 さらに、書いた後に、書いた文字や図を移動させたり、拡大縮小ができるという、紙には絶対にできない芸当も可能です。一人一台の手書きが可能なPCが児童生徒の手元にあれば、ノートを代替することも可能になるのです

特に、書いたあとの移動や修正、図や写真のコピペという、デジタルならではのメリットとアナログの良さが融合しているのがポイントです。

 

一人1アカウントの「Managed Apple ID」を用意し、200GBのクラウド容量割当
   →書いたノートをすべてクラウドに集約

 あまり知られていませんが、Appleは一人1つのIDがこれからの教育に必須になることを見越して、学習者用のIDを大量発行できる仕組みを教育向けに無償で提供しています。それがApple School Manager です。
 当方も使っていますが、少し発行に技術的知識が必要なところを乗り越えれば、とにかく大量発行できて、すぐに生徒児童一人ひとりに必要なIDが発行できるので超絶便利です。小中でまずスタートするには、これで充分でしょう。惜しいのが、この仕組みは有料であるMDM(Mobile Device Management)というApple以外のメーカーが提供する仕組みとセットで導入しないと効果があまり出ないということ。ここはMDM側にスペシャルプライスを教育機関向けにだしてほしいところです…。

 なお、この方法だと事実上いくらでもIDを払い出せるのですが、注目すべきはその払い出すID一つ一つに対して「1IDごとに200GBの無料のiCloudストレージがついてくる」ということです。なので、前述したノートはほぼすべてこの中に放り込んでも、卒業までに充分余りがあるくらいの容量です。

 さらにIDの維持にも特に費用がかかりませんので、卒業後もそのままそのIDを活かしておく、ということも可能です。このあたりは小中を一緒に管轄している公立の教育委員会は「小中連携」という意味で一緒に管理しておくとよいでしょう。今後この仕組みがどう変わるかわかりませんが、中学校卒業後以降も、IDをそのまま「卒業生」扱いで残しておいても、今のところ問題はなさそうな設計になっています。

 

先生が慣れてきたらClassroom Appを段階的に使う

 もう一つ、Apple の学校向けサービスには無料で使える授業運営支援「Classroom App」アプリがついてくるという点も注目です。先生のiPadまたはMacから、児童生徒がいまどのような作業をしているかを見ることができたり生徒児童が発表をするときに先生のiPadMacに生徒のiPadの画面を大写しすることができます。(児童生徒がわざわざ前に出てきて、ケーブルをつないで、切り替わるのを待って、はい発表、という流れを組まなくても、着座もしくは座席で起立してその場で発表、ということがかなりスピーティーにできます。)
使いすぎると授業の統制が厳しくなるのでそこは注意すべきアプリですが、無料でここまで使えるのか、と感心するアプリです。

 また、ノートをiPadに置き換えたとき、先生が期間巡視をするときに紙のノートと比べて状況を見にくい(画面が角度によっては光ったり、暗い画面で使っている児童生徒のものが見にくい)という課題があるのですが、これは先のでClassroom App を使って手元で児童生徒のノートを大写しして見ることで代替できますし、児童生徒の立場では横や後ろで立ち止まってノートの内容をじっくり見られると「監視されている気がする」と嫌がるケースもあるので、一つの手段として知っておくと良いでしょう。

 さらに、GIGAスクール構想での整備対象にはなっていませんが、iPadを活用している学校が独自予算で整備している場合が非常に多いのがApple TVです。これを使うと、iPadの画像を無線でプロジェクターや電子黒板に飛ばせます。このため、先生はケーブルから開放され、自由に期間巡視しながら提示する内容を変えたり、場合によっては生徒児童の作業の様子を無線で投影することもできます。似た技術としてMiraCastやChromeCast、WiDiなどiOS意外でも使えるものもありますので、導入時に是非併せて検討しておきたいオプションです。

 

 ということで、ここまでの内容については、46,060円+個人負担のアプリ代+MDMなどのシステム代だけで実現可能です。(Apple TVは共用でもよいのであると便利なオプション)

 iPad の最大の武器はなんといっても「手書き」です。Word や Excel のような標準のオフィス系アプリも無料で使えるのですが、これらがすべて手書きに対応しているのもポイント。しかも、書き心地がほとんどノートに書いているのと変わらないので、紙のノートから移行しても最も違和感が少ない。そして、「手書き」を重視するならば、実はノートブック型よりもタブレット型のほうが断然使いやすいし、ノートをiPadで置き換えれば、机の上に置かれるモノが「増えない」のもポイント。ということで、今回は「ノートをiPadで置き換える」ということによる児童生徒のメリットに焦点をおいた場合の、おそらく現時点での最適解を提案してみました。

 

おわりに、「○○が絶対にいい」と断言する人には要注意

 最後に大事なことを。もし児童生徒に使ってもらうPCや端末を選定するときに、どういうことをやりたいかを伝えずに「何がいいんですかね?」と聞いて「Windows」「Chromebook」「iPad」と回答する人は、要注意です。そう回答する人は、おそらくその環境しか使ったことがないか、何らかの理由でその端末を勧めたいケースが多いからです。同じ理由で「○○なんて学校に導入するのはムリ」と、具体的なシーンも付さずに断じて憚らない人も要注意です。

 大事なのは繰り返しになりますが「何をやりたいかによって最適なPC・端末は変わる」ということです。なので、上記の質問をしたら「どういうことをやりたいですか?」と聞いてくれる人に相談するのが良い。さらに「こういうことをしたいんだけど、iPadChromebookWindowsってそれぞれどうかな?」と聞いて、各OSごとに具体的なアプリ名や使い方が出てくる人であれば、ぜひアドバイスをもらうべきでしょう。

 よく、「ハードウェア(パソコンや周辺機器)のことはソフトを作っている人にアドバイスをもらうといい。逆にソフトウェアのことは、ハードウェアを作っている人にアドバイスをもらうといい。」という考え方があります。これはけっこう正しいと思っており、両方にある程度精通している人であれば、かなり的確なアドバイスをくれるはずです。

 今回の記事では「手書き」という要素を活かして「ノートをiPadに置き換える」という割とシンプルで現実的な提案をしていますが、あくまで「この用途であればたぶんiPadが記事執筆時点では最強」というだけの話であって、Windows や Chromebook を否定しているわけではまったくありません。(筆者は仕事とプライベートで、Windows,Mac,Chromebook,iPad,iPhone,そしてAndroidスマホをそれぞれ使い分けており、自称6OS並行利用ユーザーです)
 さらに「執筆時点で」と断ったのは、Microsoft の Surface はペンや製品の品質が年々すごく良くなっていて、そこにOneNoteというアプリを組み合わせると手書きが相当いい感じまなところ来ています。あとはAirDropに代わる仕組みが実装されればiPadと同等か、とも感じていますが、まだ価格的にiPadのほうが優位、というのが実態なだけです。

 
 逆にいえば、みんなでスプレッドシートや文書(Word、Pages、Google Docs)上に一緒に書き込みをして共同編集作業をするならば、現時点ではChromebookが最強です。

 既存のパワポやワードの文書・教材資産を活かすならWindowsのエコシステムの大きさは強力です。

 それぞれに良さがあり、それぞれに弱点がある。そして4.5万円ですべてを満たすのは難しい。すべてを一つのデバイスで満たすのが難しいからこそ、大人たちは一人で複数のデバイスを使っているというのもまた事実です。とはいえ、最初の一台として大事な選択をするのであれば、やはり「なにをやりたいのか」を明らかにしてからOSのやハードを選定したいところ。時間的な制約でなかなか難しいですが、今回はそのような悩みを抱えている方に向けて情報提供できればと思い、一つのユースケースに絞って書いてみました。

 

補遺:

小5-6から紙ではなく画面上で「手書き」をさせることに対する抵抗感はあると思います。そこは自分も認めるところです。果たして教育学的な知見からアリなのかな?とも思います。ただ、児童生徒の目線から見たときのメリットはとても大きいため、成人教育的な観点が強い案とは認めつつ、当方個人がとっても恩恵を受けていることなので、これを小中高に広げられたらな、と思っています。

いろいろご指導いただけますと幸甚です。

なぜ「学校にPC一人一台」が必要なのか?-生徒児童と先生の立場で考えてみる-

「小学生に一人一台のパソコンを配る意味なんてあるの?」

「今まで無くたって授業できてたんだから、そんなの無駄でしょ?」

 年末から1月にかけて、こんな声がよく聞こえるようになってきました。改めて、「なぜ一人一台だといいんだっけ?」と思い、そういう記事を探してみました。ところが、意外にも、ない。

 特に、ICTが苦手な方でもわかりやすく、短くまとまっている記事が少ない。ならば、書いてしまおうと思って今回のエントリーを書きました。7000ー10000字クラスが多い本ブログとしては短めの4000文字弱にまとめました。

f:id:nomotatsu:20170820103812j:plain

  • 1.試行錯誤の回数が紙より圧倒的に増えるから
  • 2.ちょっとしたことをすぐ調べることができるから
  • 3.いまやPCで紙とほぼ変わらない(むしろ上回る)手書きができるから
  • 4.過去の学習資産をすべて持ち歩くことができるから
  • 5.今までの学校で発揮できなかった才能が発揮されるから
  • 6.一人一台のPC配布は生徒児童の「選択肢」を増やすから

 

続きを読む

GIGAスクール構想(学校PC一人一台)成功に向け、SE時代に配慮していたことを公開してみる

 当方は以前、教育機関向けのICT導入を支援するSEとして動いていました。GIGAスクール構想の実現に向けて全国の教育委員会や私立学校がインフラ・端末整備のために動いている(そしていろいろ困っている)現況を勘案して、そのへんのノウハウをせっかくなのでまとめて無償で公開してしまおうと思います。

f:id:nomotatsu:20180325150459j:plain

 通常であればこういう話はいわゆる「飯の種」でもあるのであまり堂々と公表する企業人は少ないのだと思いますが、今回は

学校向けのICT環境整備についてきちんと取り組んだ経験がある企業の関係者は結構少なく、今回のように全国一斉に調達に向かって動く中では間違いなく技術者不足が起きると懸念していること
・当方は現在Z会に所属しており、オンライン英会話やCBTベースのアセスメント、AI技術を用いた教育用ソフトウェアなどを提供する立場にありますが、自社のものを使ってもらえるかどうかは別として、こうしたソフトウェアが「ちゃんと動作するICT環境」が担保されないと誰も幸せになれないと懸念していること
・「一人一台」が長年の望みであった当方としては、個人とか組織の枠なんてどうでもよくて、今回の多額の税金を投じて行われる国家プロジェクトを通して一人ひとりの児童生徒がICT環境をある意味「当たり前」の学習手段として定着させ、(これをあくまで一要素として)次の世代が自分たちを遥かに上回る「すごい人たち」になれる素地を作りたい

という考えで書いてみます。ということで例によって所属は明らかにしていますがこの記事も「個人の見解」であり「組織を代表する意見ではない」ということを明示したうえで以下の内容について情報提供したいと思います。

 なお、以降記載することはすべて「筆者の経験や見聞きしたこと」によるもので、情報元となるソースはほとんどありません(聞かれても困る)。というのも、ICT導入における世の「失敗事例」や「トラブル事例」ってほとんど表に出てこないからです(これはこれで収集したいとも思っていますが)。あくまで本記事の文責は筆者にありますが、この記事内の情報のどの部分を信用するか、そしてどの部分を活かすかは読者の裁量と責任であるという点も明記しておきたいと思います。

 

  • やりたいこと編:そもそも「ICT」で実現したいこと、解決したい課題は何か?
  • ソフトウェア編:やりたいことを実現するソフトウェアは何か?
  • ・ハードウェア編:やりたいことを実現するのに近いハードはどれか?
  • ・インフラ編:やりたいことが実現可能なインフラ設計とは?
  •  制度設計編:やりたいことを生徒児童が実現できる制度設計とは?

 

続きを読む

2020年の抱負:教育用コンピュータ「一人一台」の実現に向けて

 2020年が明けました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 今年はいろいろと決意をしている部分があり、2015年以来となる「昨年の振り返りと今年の抱負」について書いてみたいと思います。

 タイトルの通り、今年の抱負は”教育用コンピュータ「一人一台」の実現に向けて”、組織人・個人としてできる限りの支援を行うことを掲げたいと思います。

 

筆者は、2020年1月1日現在、組織人・個人として以下のような活動をしています。

株式会社Z会の「経営戦略部 事業企画課」という部署にて主に新規系事業を担当する管理職として従事しており、その業務として中央省庁と一緒に働かせていただいている(経済産業省「未来の教室」実証事業文部科学省「Edu-Portニッポン」等)

※昨年より担当させていただいてる業務

経済産業省「未来の教室」実証事業 

文部科学省「Edu-Portニッポン」公認プロジェクト

 

一般社団法人iOSコンソーシアム代表理事として、学習者中心を軸とする「教育のICTによる拡張」を目指し、主に全国の教職員を支援する活動をさせていただいている

「一人一台」に成功している先進校の取り組みの普及促進活動

近畿大学附属高等学校 乾 武司教諭による「一人一台」の目的と効果を啓蒙する活動の一環として、講演の模様をYouTubeライブ配信アーカイブ配信)

 

(主に教職員の方向けに毎月テーマを変えた「月例勉強会」を開催し、先端を走る方を講師に招き最新動向や事例を共有、昨年は静岡、札幌、広島への出張開催も実現)

※こうした活動は2015年の6月から行っていましたが、2019年4月からは所属会社の承認を得て、iOSコンソーシアムを「教育特化型の組織」として再編成し、当方がその代表理事に就任する形で運営をしています

 

個人として、本ブログを通じた情報発信や課題解説・解決策提案

(昨年は「プログラミング教育」によく用いられているWebのプログラミング学習環境”Scratch 3.0”がIEをサポートブラウザから外したことに端を発する学校のブラウザ問題について3回に分けて記事を執筆しました)

また、昨年暮れにはこのようなアンケートを企画、個人として実施し、結果を本ブログで公表しました。

 

 

このように、当方は公私ともに「教育とICT」というキーワードで動いており、その基本的な行動原理は以下のスライドに示す考え方で進めています。

f:id:nomotatsu:20200101062659p:plain

野本の行動原理

 本ブログ(特に先に示したIE縛り問題に関する記事)では幾度となく「相互理解」が重要になるという言葉を使っていますが、教育とICTという領域は、教育者とITエンジニアという、かなり異なる言語を話す人たちが協働しなければ成立しない領域です。当方はKDDIでの8年間の勤務で主にITエンジニアとして、そして現職のZ会で2年半強の勤務を通じて教育の領域で活動する企業人として、また、両親がそれぞれ大学と公立中学校で教鞭をとっている元に育った個人として、異なる文化の間のインターフェースとなり、「教育者」と「ITエンジニア」のよき通訳として動くことを目指してきました。上記で示してきた昨年の活動は、その一部です。

 

 そんな中、今年はいよいよ、国家施策としての「義務教育課程における教育用コンピュータ一人一台の配備」が動き出します。筆者の今年の抱負は、この動きに対し、これまで従事してきた公私様々な活動の知見を投じて支援をしていくこと、言い換えれば、この動きを進めるにあたって課題を抱える自治体の教育委員会や私立学校をできる限り支援していきたい(具体的には外部アドバイザーのような形で、既存の教育現場が一人一台を実現する上で発生した様々な課題とその解決策を、これから動き出す学校設置者に継承し、よりよい学習者中心の学びの拡張を実現する)と考えています。

 

www.mext.go.jp

 この中で特に重要なのが上から二つ目のリンク(GIGAスクール構想の実現パッケージ :https://www.mext.go.jp/content/20191223-mxt_jogai02-000003329_002.pdf)で、文部科学省だけでなくインフラ面で総務省が、ソフトウェア面で経済産業省がそれぞれ補正予算を計上し、この動きをバックアップしているということです。令和5年度までに小1〜中3の義務教育課程には公立・私立を問わず「一人一台」が実現できる工程表が引かれ、かなり多額の補助金がこの実現のために投入されます。

 特にコンピュータやインフラについては国庫からの半額補助、従来より措置されている地方交付金を組み合わせることでなんと整備に必要な金額のうち最大8割(地方交付金が利用できない自治体もあるのであくまで”最大”)が支援される形となり、特に財源不足で教育用コンピューターとそれを支えるインフラを整備できなかった自治体(公立学校)にとっては千載一遇のチャンスとも言えます。(そして意外と見逃されていますが、私立学校にも119億円の補助金予算枠があります)

 また、省庁のみなさんは「インフラについては令和元年〜令和2年の間のワンチャンス」とも言っています。この好機を逃さないよう、前職でインフラエンジニアとしての業務経験(特に私立学校を中心にSEとしてICT環境の導入サポートをしていた経験)と現職で教育分野の言語をある程度理解しているという強みを生かして、学校が理解しやすい形でICT化のメリットの浸透、超えるべき課題の共有、デメリットに対するワークアラウンドなどを教育機関と同じ目線で提供できればと考えています。ここには、2018年度に取得した「教育情報化コーディネーター2級」(日本に200人程度の認定者がいる、教育のICT化に対して一定のスキルを保有することを証明する資格。基礎的知識を問うCBT、他国の事例などを踏まえ出題される記述式試験、仮想自治体の課題解決のための模擬提案書作成、その内容を説明するビデオを撮影し、口頭試問による面接合格が必要で、一般的に「ICT支援員」の指導育成ができるレベルとされている)の知見も動員し、現場との相互理解を大事に協働していきたいと思っています。

 ということで、GIGAスクール構想」の発表を受けて「どうやってこの流れをつかもうか…」「課題は盛り沢山だけどこれを前向きに捉えて進みたい」という教育委員会の方、私立学校の方、ぜひ当方に連絡をいただければと思います。また、Z会iOSコンソーシアム、あるいは当方個人を通じて趣旨に賛同いただき、ご一緒いただける企業・組織団体の方とも是非連携をできればと思います。

 当方一人ではできることには限界がありますが、Z会、およびiOSコンソーシアムという「組織」も動かしつつ、今年は一つでも多くの教育機関が「一人一台」を「学習者中心」での価値づくりを目指して実現できるよう、全リソースを投下していきたいと思っています。といっても、抱えられる案件には限度がありますので、できるだけ早く、そして強い達成志向を持っていらっしゃる自治体・私学の先生たちと一緒に戦いたいと思いますので、ぜひ「ご一緒したい!」という方がいましたら、当方までご連絡ください。なお、GIGAスクール構想は義務教育課程までが明確なサポート対象ですが、高等学校以上については主にBYODを中心とした設計になると見ておりまして、学校向けBYODの導入についてもご支援ができればと考えています。

 ご参考までに、当方の技術面での強みはiOSiPad)とその周辺ソリューション(フィルタリング、MDM、各種コンテンツ、これらの導入支援および保守運用)になりますが、公私を通してWindowsChromeBookMacBookなど各種端末を日常的に使い分けており、複数OSが交錯する領域についてもぜひやってみたいと思っています。加えて、進化の早いIT業界であれば必ずどこかで「未知の課題」に直面するので、そこについては決して「知っているフリ」をすることなく、課題を丁寧に検証することを通じて私自身も常に「学び続ける」ということを宣言したい(これがある意味今年のもうひとつの抱負)と思います。

 連絡手段ですが、Facebookをやっていらっしゃる方は、Facebookで「野本竜哉」を検索していただき、メッセンジャーからメッセージをいただくのが最も早いです。Facebookをやっていらっしゃらない方は、当方あてにメールをいただければと思います。メールアドレスは:i.found.it.in.the.river70【あっと〕gmail.com です。

 

 最後に、あくまで「一人一台」の教育用コンピュータとインフラ整備は、「学習者中心」の教育的価値を実現するための手段でしかありません。導入や整備を目的とするつもりはありませんし、導入をするのであればなぜ多大な労力と知恵を投入してこれを実現するのかという「目的(大義)」がとても大事だと思っています。そこには「どのような教育を提供したいか」「生徒児童にどのように育ってほしいか」というビジョンがあり、それを「ICTでどのように補強するか」「ICTでいかに加速するか」という観点が必要不可欠です。

 少なくとも、当方の現所属は教育用コンピュータとインフラ整備のどちらも生業としている会社ではなく、端末やインフラ機器の販売を通じて利益や売り上げを挙げたいとは全く思っていません。あくまで当方は、多少なりとも教育の言語を理解するICTのエンジニアに近い立場で双方を通訳し、相互理解を促進する立場を志向しています。ICTで何ができるか、どのように教育が拡張できるかを具体性を持って組織と関係する企業が認識し、同じ目的を共有し、様々な課題解決に向けて協働できる状況を目指したいと思っていますので、ICTに対する苦手意識がある方でも、遠慮なくお声がけください。当方は高校3年生の時からICTを「学習者」の立場で活用してきて、学習者目線でこの領域の課題や利点を見つめてきた人間ですので、きっとお力になれると思います。

 

 ということで、本年もよろしくお願いいたします。