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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

1台のスマホのテザリングで教室内40台のタブレットを通信させる方法

 Facebook上でちょっと聞いてみたら、思ったよりも需要がありそうだったので書いてみることにします。

 LTE対応以降のスマホタブレットは、1台あたり5〜10台までの機器でインターネット回線を「共有」できます(テザリング)。どこにでも持ち運んで、その場がWiFiホットスポットのようになるので非常に便利ですよね。個人で使う分には、同時接続がiPhoneの場合5台まで。普通はこれで充分でしょう。

 ただ、学校の場合はちょっと事情が違います。タブレット導入で非常に悩ましいのが、インターネット通信手段をどうするかという問題。学校内に広くWiFiを敷設するには相当なコストがかかります。「まず使ってみようかな」という時に、手近な通信回線として自分が持っているスマホに注目する人は多いでしょう。そこで問題になるのが先ほどのテザリング接続の上限数。
 もし、クラスの生徒40人が全員使うとなると、とてもではないですが足りません。他の先生のスマホを借りてくるわけにもいかないでしょう。そこで、今回紹介する道具が使えるかもしれません。

 

・用意するべきものは、WiFiアクセスポイントと「コンバーター

 一般的なWiFiアクセスポイントは、少なくとも10台以上、よい製品だと50台まで接続できるものもあります。AppleAirMacシリーズはその代表例で、小型なAirMac Express(実売約10000円くらい)でも最大50台が接続できます。普通はこういう無線APから先は、有線のブロードバンドなり光回線を繋ぐわけですが、今回紹介するのは無線APから先を「スマホテザリング」にしてしまうという方法です。
 つまり、WiFiのAPで教室内のタブレットの無線をいったんまとめて、その先をスマホテザリング回線で通信させる、という方法です。有線接続をテザリングの無線接続に変えるために「コンバーター」が必要になります。ということで、実際に機器を構成してやってみました。参考にしたのは、こちらのサイトの記事です。

 ニケのお買い物ブログ: iPhoneのテザリングで有線LANに接続する方法

 ちょうど、Amazonでこのサイトで紹介されているプラネックスの「MZK-MF300N」が中古品で安く出回っていた(1500円だった)ので、自宅にあるAirMac TimeCupsuleと組み合わせてやってみました。注意点としては、AirMacの「WAN」の端子と、コンバータのイーサネット端子をつなぐということと、最初の設定をする際にはコンバータとPCを直接LANケーブルでつないでIPアドレスの登録などを行うという点でしょうか。

 で、自宅内にあるPCやWiFiタブレットスマホなどありとあらゆるものをAirMacにまず接続し、その先をiPhoneテザリング回線経由で通信するように設定してみました。結果的に、10台以上の機器が確かに同時接続され、かつ同時通信できることを確認しました。

 もちろん、同時に使っている人が多くなると、一台ずつの速度はかなり下がりますが、あまり同時に大容量の通信(例えば、動画を見るとか)を行わないのであれば、その場所の携帯電話の電波の強さにもよりますが、思ったよりもなんとかなります。


・注意すべきこと

 まず無線APとコンバータを使うために、必ず「電源」が必要ということです。コンバータは初代「ちびファイ」のようにUSB電源で動くものもありますが、無線APで50台規模で接続できるものはまずまちがいなく電源が必要です。ですので、モバイル環境では残念ながらこの技は使えません。
 また、iPhoneIPアドレスを調べる必要があるため、通信をするスマホが変わると設定変更が必要という問題もあります。たとえば、40台のiPadをある教室でA先生がスマホテザリング経由で使った後、次の授業でB先生が自分のスマホ経由の通信しようと思った時には、コンバータにB先生のスマホSSIDIPアドレスを設定してあげないといけません。このあたりが、共用のタブレットを使いまわそうとする時に不便になりそうです。

 そして、40台のタブレットの通信が1台に集中するため、通信量がかなりの多さになるという点にも注意が必要です。一般的な7GB制限はもちろん、最近では月額料金を抑えるために格安のSIMを使う人もいるかと思いますが、1GBくらいはあっという間に使い切ってしまう可能性があります。特に、WiFiに接続しているとアプリやOSの自動更新/アップデートが走り出すことがありますので、容量の大きいアプリなどの更新が重なると最悪です。このあたりは、MDMなりである程度規制したほうがいいでしょう。


・どういうときに使うのがよい?

 正直、この方式を学校での「常用形態」とするのはかなり、ハードルが高いです。特に個人のスマホを使うのであれば、容量制限の問題や先生ごとに設定を変える必要があり、かなり厳しい。学校がこの用途専用にスマホなりWiFiルータを契約して、40台のiPadに常時ひも付けて使うのであれば「アリ」かもしれません。この方法だと、WiFiの新規敷設も不要、セルラータブレットも不要で、とりあえずインターネット通信が可能なタブレット導入が実現できます。つまり、お試し的にタブレットを導入するのにはぴったりです。運良く、どこかからWiFiタブレットを「借りる」ことができたとしたら、この方法でまずネットワークを構成して使ってみるのがBestでしょう。
 むしろこの方法は、一時的な通信回線が必要なとき(課外授業や修学旅行などの出先でみんなが通信できる場所を構築したい時)の技として知っておいて損はないかな、と思っています。※ただし電源がある場所に限る
 AirMacは10000円程度、コンバータは3000−5000円程度ですし、無線APは自宅などで使っているものを代用する手もあります。あんまりコストもかからず、維持費も最小限でいけます。


※この方法、12/20(土)には大阪で行われる「eスクール ステップアップ・キャンプ」というイベントにブース出展をする機会があるのですが、その時に会場で実際にやってみる予定です。興味がある方は是非、見に来てみてください。