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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

学校向けiPadのキッティングスキルが分かる5つの質問

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前回のエントリ「iOS9+MDMの教育向け設定が実際どうなのか検証してみた」が割とロングランで読まれています。ある日、急にアクセス回数が跳ね上がってりしているので、今年も各地で動いている新年度のiOSバイスのキッティング案件のどこかで役に立っていればいいなぁとか思っています。

 

さて、今日はちょっと変わったエントリーを書いてみます。

 

教育機関向けにデバイスを選択するにあたっては、一緒にキッティング(端末の設定作業)をしてくれるベンダーさんや学校内の担当者(以降、ひとまとめに”技術担当者”と言います)が、一定のiOSの知識、それも教育分野特有の事情や背景を理解された上でポリシーが設計できる知識を持っていることが非常に重要になります。

が、実はこのあたりのスキルを定量的に測れる資格試験とか、スキル判定ってまだ存在しないんですよね。そこで、当方が比較的多く担当させてもらっているiOSバイスについて、そういうスキルを判断できそうな「5つの質問」を勝手に考えてみました。

Apple Configurator/Apple Configurator 2 や MDM をうまく活用して教育機関に最適なキッティングを行う上で、技術担当者とこれらの内容で合意しておくと良いスタートが切れると思います。

あくまでこれらの内容は筆者の個人的見解であり「こう言うポイントも重要」とか「これは変」という意見があれば是非筆者までご連絡ください。(コメント欄でもOKです)

 

1. 他の教育機関ではどのようなポリシーで運用していますか?

この質問は多分、どの教育機関の方も技術担当者の方にしたことがあると思います。特に小中高大および特別支援、塾など、子供の成長過程や教育機関の性質によってポリシーは大きく変わります。一番「似ている」他の教育機関でどうやっているのか、という情報は知りたい方が多いのではないでしょうか。
こうしたノウハウ情報はwebの記事では断片的にしか分からない部分が多く、技術担当者の方がしっかりとした検証を行っているか、他の類似事例で経験を積んでいるかが見えるポイントでもあります。この分野を担当する技術担当者の方は、まずこうした情報集めから着手すると参考になると思います。

2. MDMApple Configuratorはどちらを使うのが良いですか?

両者の違いは何か? 費用がかかることが多いMDMをその教育機関で使う必要はあるのか? Apple Configurator は 1 と 2 どちらを使うべきなのか? それぞれにどんなメリット・デメリットがあるのか? この辺りは、実際に運用を回していく上で基本のキとも言える部分になりますので、ぜひ押さえておきたいところです。
特にApple Configurator 2 は新規に導入する教育機関であれば使わない手はないというくらい、いろいろ良くなっています。また、MDMも日々進化していて、使うと使わないでは大きく運用・管理の効率が変わってくる機能も多々あります。
この辺りを踏まえて、導入規模と内容に応じた納得解が出せることが重要です。

3. (教育機関が管理しているiPadにおいて)生徒児童によるゲーム等の不適切アプリ導入を防止しつつ、教育上有効なアプリを生徒児童や教職員の要望に応じて速やかに展開できるようにするには、どうするべきでしょうか?

これも聞かれないことはない質問と言えます。
これについては前回のエントリーにも書いたように Apple Configurator2 と iOS 9 の登場で新たな解が出てきていますので、その辺りを上手く活用し、最適な納得解が導けるかが重要になってきます。
特にiPadの場合、豊富な教育系アプリを使いたいタイミングで有効に使えなければiPadを選択している意義が薄れてしまいますので、この部分で技術担当者が居なくても学校側がある程度コントロールできる仕組みにしておきたいものです。

4. 卒業した生徒児童のアプリのライセンスを新入生に再割り当したり、卒業前にiPad内のデータのバックアップを渡してあげたのですが、どのような方法が良いでしょうか?

実は導入と同じくらい大切なことは、数年後に必ず来る「卒業」を見据えた対応を検討しておくことです。iPadの中には長く使っていると様々なデータが溜まっていくのですが、それらを適切な形でバックアップして卒業時に託せるようにするにはどうすればよいでしょうか? (※教育機関が管理しているiPadを生徒児童の自宅コンピューターに接続することを許容してしまうとリスクが出てくることも勘案する必要あり)
また、iOSの教育用アプリには組織単位でライセンスをまとめ買いすると半額になるケースもあります。半額とはいえ貴重な費用をかけて購入したライセンスをうまく回す仕組みはとても重要かと思いますので、この辺りもよくデザインしておきたいところです。

5. (すでにiPadを導入して少し経過している学校において) Apple Configurator 1 が入っている母艦のMacが故障した場合はどうすれば良いでしょうか? また、他のMacでも母艦と同じような保守作業がしたいのですが、どうすれば良いでしょうか?

最後の質問は Up-to−date かつややテクニカルな要素を含んでいます。ですが、すでに運用経験をある程度積んでいる技術担当者の方であれば答えてくれるはずです。
教育分野でのiPadはたいていの場合「監視モード」と呼ばれる設定を導入して使うことになるのですが、この監視モードに振り回されている技術担当者の方は少なくないと思います。iPadMacの性質と、Apple Configuraotor 2 の新機能をよく理解し、うまく活用することで 、質問の答えは出せると思いますし、これによって監視モードのメリットを最大限活かせるはずです。

 

で、ここまで書いておきながら、敢えてここでは質問の答えは書きません(笑

というのも教育機関の形態や学校の教育方針によってその答えは全く異なってくるからです。ですが、そうした色んなパターンを踏まえた上で「自分ならこうする」という提案ができる人なら、任せられる安全性がだいぶ高くなるはず。(もちろん、質問する側にもある程度の前提知識や意見が必要になりますが…)

なので、iPadのキッティングを担当する人(ベンダーの方も学校で管理監督を任されている方も)は、これらの質問についてぜひとも自分なりの答えを持ってほしいなと思っています。※質問の目的は相手を試すことではなく、質問の回答を考える過程で(質問者も回答者も)より多くの気づきや意識を持てるようになることだと思いますので。

ただ、大事なのはiPadの設定、特に機能制限の導入は「リスク回避」だけが目的になってはいけないということと、これらの設定を「協議ベースで動的に変えていく」という前提を持つことです(中高なら協議体に生徒が参加するのも良いでしょう)。
特に生徒児童の方が機械に慣れるのが早いですし、いろんなテクニックを持っていますので、そのテクニックを正しい方向に活かしてもらえる仕組みを持つことはとても大事です。

そういう意味では、個人的にiPadを導入して少し時間が経過している学校の関係者(できれば生徒さんも含む)に来てもらって、キッティングを行ったベンダーさんや学校の担当者なども交えて「学校のiPadの設定はどうあるべきか」を題材にしたディスカッションと探求学習とか、やってみたいと思っています。

2月下旬に学校の先生を対象としたApple Configurator2の研修を行った時にも強く思ったのですが、異なる教育機関のいろんな考えの人が集まる場所でこうした議論を行うと、いろいろと視野や視点が広がりそうな気がします。やってみたい、という方がいらしたら、ぜひとも筆者までご連絡ください。