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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

DiTTさんの教育情報化八策を企業人目線で見てみる

デジタル教科書教材協議会が、2013年の方針を発表し、その中の施策がネーミングも含めて話題になっています。この手の教育分野の記事としては鉄板なリセマムさんの記事を紹介します。

http://resemom.jp/article/2013/06/18/13987.html

 

DiTTの動向は、強力な推進力を持つ中村伊知哉 慶応大教授の言動とともに注意深く見守っているのですが、今回の発表はひときわ面白い内容でした。

「教育情報化八策」と題した2013年の提言の概要はこんな感じ。

1.文科省総務省経産省厚労省内閣府の組織横断タスクフォース設立

2.デジタル教科書法の策定

3.文科省の教育情報がビジョンを「2010年代」から「2015年」に前倒し

4.デジタル教育システムの標準化とその検証

5.全国で100カ所の教育情報化推進地域の設定

6.全国100名の「スーパーデジタル教員」の選定

7.教員へのICTリテラシー向上支援

8.毎年3000億円規模の教育予算の確保

 

個人的に注目しているのは2、7、8です。6のネーミングセンス云々は方々で言い尽くされているので敢えて触れませんw

まず2について、学校教育法、教科書発行法といったファンダメンタルな部分は必然として、重要なのは著作権関係の規制緩和だと思っています。これは今年の2月に名古屋で開催された「スマートデバイスACADEMIA2012」で学習塾「俊英館」の小池先生から伺った話ですが、教科書をスキャンしてプロジェクタや電子黒板に映し出す行為は、たとえそのクラスの生徒全員が同じ紙の教科書を所有していたとしても「アウト」。というか、教科書をスキャンして電子ファイルにする段でアウトなんだとか。(無尽蔵に配布されるリスクがあるという意味だと思われます)しかし、最初からデジタルで出来ている教科書となれば当然そうした用途で使う事が期待されるわけですし、そもそも今年、東京書籍からリリースされたデジタル教科書はお値段が5000円とかなのでひとり一人の端末に入れるというのはそもそも想定されていないはず…。「投影配布はOK」というのを法的にきっちり明記してくれると学校も安心ですよね。
また、個人的には教科書検定制度についても適宜見直し、既に手元にある電子教科書について必要に応じて情報の更新や訂正が行えるようになってくれるといいなーとか思ってます。アプリのアップデートみたいな感覚で適用できる、みたいな。

次に7の「教員へのICTリテラシー向上支援」ですが、まずはワークショップという方向性は正しいと思いますが、個人的には実際に学校現場にモノとヒトを貸し出して強制的に使ってもらうようなアプローチもあるのかな、と思っています。この手のツールの普及を阻んでいるのは土日などのワークショップや研究授業にわざわざ出てこない「意識の低い」先生だったりするので、例えば自治体や地域の教育委員会あたりに3G通信機能を持ったタブレット(ここがミソ。WiFiだとインフラが無いと使えない)を4−50台配備しといて、そこからローテーションで地域の学校に回して一通りの先生に触ってもらうようなイメージ。例えば1週間貸し出して、最初の日と最後の日はヒトも一緒に来てレクチャーしてくれるとかどうでしょう。一人一台に持っていくまでの前哨戦となりますし、毎月固定の支出が必要で学校では導入が難しい3G版のタブレットも、自治保有であれば学校的にはコストはかからない。かつ共用で回してそれ相応の稼働率が出るのであればまだ現実的かも、とか思ったりします。

そして最後の8については、その方法論としてどーすんの?という話がリセマムさんでも挙げられています。ちょっとDiTTのHP上のPDFを見た限りではその辺りまで詳しく踏み込んではいないのですが、Twitterで中村教授が
「DiTTシンポにて、「年1人1万円」で端末を含むデジタル環境を与えるサービスを実現できないか呼びかけました。通信会社、メーカ、リース会社その他のみなさん、ご検討ください。」

とつぶやいているところにヒントがあるのかもしれません。なお、使途を限定するという注釈があり、ハード・ソフト・人的サポート等が言及されていることから、是非とも7みたいな人的サポートを手厚くして、ICT支援員みたいな不遇な扱いを受けないようにしてもらいたいものです…。

以上、ニュースに対するいち素人個人の見解でした。
生産的なツッコミ、大歓迎です。