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EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

【持論】TED式プレゼンは世界一ではない

今日は純粋に自分が思っている事を書きます。それは「プレゼン」のあり方についてです。今日、渋谷のApple Storeで小池先生と神谷さん、永野先生のお話を聞いてなんとなく思った事や、その後自宅に戻って妻と話した事をベースに作文してみました。

見方によっては否定的に見える所が有るかもしれませんが、特定の誰かや団体のやっていることや成果を否定している訳ではありませんので、その点は誤解の無いように事前に申し添えさせていただきます。

最近思っている事。
「みんな、TEDとかスティーブジョブズのプレゼンに、影響されすぎてません?」


いや、どちらも素晴らしいんです。私も多くを学んでいます。でも、みんながTEDとかジョブズ風の、欧米ライクなプレゼンを「世界一ィィィ!!」ともてはやして、そっちに向かおうとしているような風潮を見て「ちょっとなぁ…」と思ったりしています。

グローバル化の波があり、日本的なやり方に固執するのはダメです。が、私はグローバルな職場に居て、海外のプレゼンを聞く機会もあるのですが、「日本的なプレゼンの良さ」をよく再認識したりします。
例えば、1スライド1メッセージの原則。TED的アプローチでは鉄則ですが、実は後から振り返るとあんまり内容が残ってない。スライドを見返しても「ここどういう意図だっけ?」になりやすい。
一方、日本人は1枚のスライドで全体像を模式化した、手のこんだスライドが好き。プレゼンの後に、1枚を表示してディスカッションをすれば事が足りるし、後から見ても意図や内容が明確に思い出せる。ただし、作るのには異様に時間がかかる。
目的の違いやメリット・デメリットがあるので一概にどっちがいいという話では有りませんが、海外の人に言わせると「こんな高度なスライド俺たちには作れないよ!」とだいたい言う。ということで両方出来て、用途によって使い分けるアタマを持てれば日本人最強かも知れない、なんて思ったりもします。

他にも、”大事な事は繰り返すというアプローチ”も「1回言えば分かるよ」と冗長に感じたり、”1分ごとに笑いを取れ”も「無理して笑いとって滑ると逆効果だよな」とかいろいろナナメな感想を正直持ってたりします。
#余談ですが、TED式プレゼンはレポートを書く時の負担がキツい。スライドが多いので写真も沢山撮らなきゃいけないし、スライドの情報量が少ないので録音しないと、まずレポートが書けない。なので動画に撮って公開するのが最良なのですが、なぜか今の時代にそれを制限する会場などがあったりする…。仕方なく時間をかけて文字起こしすることになります…。が、プレゼンテータはレポートを書く人間の立場なんて気にする必要はありません。上記はただのボヤキです。

次に言いたい事は、プレゼンに限らず「日本の学校的な思想誘導に引っからないで欲しい」です。

日本人の心理を上手く突いているなというか、大抵の指南本とかセミナーでは「これが正解だ!」というゴールに向かってひたすら誘導するような論調ばかり。

先日、広尾学園にてお話してくださったEvernote会長の外村さんが仰っていたのですが、
「日本の教育は箱庭的というか、最終的な答えが先に決まっていてそこへ先生が誘導していく、つまり「答えがそこにあるので探しなさい」という教え方が主である」

という言葉に答えがある気がしています。つまり、こうしたセミナーや本は学校教育の過去の風潮に見事に沿っていて、社会に出てだいぶ時間が経っている大人達でも、そういう教わり方が良いらしい。なのでそういうアプローチが「売れる本」「売れるセミナー」になるのかもしれません。が、それで学んだ大人が、また同じ方式での学びを”良し”として繰り返そうとするのはやめてほしいなぁとは思っています。

ちなみに、私は学生時代には塾の講師や販売スタッフの研修を実施し、最近では社内外の講演などを通して色々なプレゼンスキルを自分なりに身につけてきました。その原点は、塾講師をしている際に「模擬授業」でいろんな先輩先生にダメ出しされ、その中で自分として”納得できるものを取捨選択してきたこと”だと思っています。言い換えればいくつかの提言や意見は奇麗に聞き流しました。

が、大抵のプレゼンテクニック本や指南セミナーでは、プレゼンの有るべき姿チェックリストなんかがあって、それが一つでも多く出来るように努力せよと誘導してきます。
が、それって完全にナンセンス。自分のスタイルに合わないもの、ポリシーに合わないものなんて、最初っから守る必要ないと思うんですよ。無理矢理、合わせてみると見えてくるものも当然ありますが、「意識すべき項目」は1回のプレゼンでせいぜい2つか3つが限度。大抵の人は、そのうちの一つが「時間」なので、実質的には1-2個くらいしか意識できない。全部出来るようにするには凄まじい数の場数が必要ってことになります。それだけの場数を持つ事になりそうな人であれば良いですが、大半の人はそうではないと思うので、無理しなくていいのでは…。
#ですが、場数をこなして様々なスキルを身につけている人は本気で尊敬しています

それよりもプレゼンで大事なことって、「話している本人が楽しそうであること」ですよね。かっこいいと思うバンドがすごくステージ上で演奏を楽しんでいるのを見て、オーディエンスが湧くのとおんなじ。なので、話している人が、「今日はこれ1つだけ気をつけて話せばいいや」くらいの意識で、自然体で、普通に話せばそれでいいじゃん、と思っています。「じゃあお前のプレゼンは完璧なのか」といったら全くそんなことはなくて、まだまだとても完成系だとは思っていないし、TEDや他の人のプレゼンから日々学ぶ事が沢山あるし、自身で把握している課題だって山ほどあります。が、いっこずつ改善すればいいかーくらいの気持ちでやってます。


ちなみに、最近私はいろんなセミナーや講演に行って話を聞いていますが、この人のプレゼンって面白いなぁ、いいなぁと思う人の大半は「TED式ではないプレゼンテータ」です。最低限、抑えているポイントはあるけれども、その人の「人となり」が凄くにじみ出ているプレゼンであれば好き。今日のApple Storeでお話しされた皆さんは、まさにそういう雰囲気だったんです。ああ、これいいなぁ、何がよかったんだろう、とあれこれ考えたことが、このエントリーを書くきっかけでした。

プレゼンの機会はこれから学校や教育現場、企業でも増えてくると思いますが、TED式やジョブズ式を正解として誘導するのは違っていて、人それぞれの受け方、流し方があって当然だし、それがOKだと生徒も思えるようになってほしい。箱庭ではないので、いろんな可能性や見方、捉え方によって生まれる、違ったスタイルのプレゼンを尊重してあげるように進んでほしいと思っています。

私は既成観念にとらわれず、良いと思った事を楽しそうに皆に伝えているプレゼンが世界一だと思っています。