EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

テストとアンケート以外の「学びの効果測定ツール」

このところ様々な学校を訪問し、意欲的な研究授業や公開授業とそこでいきいきと学ぶ生徒の様子を見ていて力を貰う事が非常に多いのですが、そこで日々、思っていることがあります。

それは「テストとアンケート以外に、様々な実践を定量的に評価する方法ってないのかなぁ」ということです。

教育現場では学びの進化の為に様々な試行錯誤を行っています。教案、教育方針とそれに照らし合わせた位置づけ、研究授業とそのフィードバックなど…。そこには「課題」の設定と、その「解決策」の設定があり、解決策には前段に「仮定」があります。一方で、その「仮定」が「個々の経験」や「感覚的要素」といった勘所で定められていることもあり、ここに「データのよる裏付け」があるとより説得力が増すのになぁと思う訳です。この辺に、ICTを教育に活用する意義があるのかなと。

実は、筆者は以前からその手段として「採点できるマインドマップ」という手法を提言し続けています。この手法は万能ではありませんし、テストやアンケートと同様に準備の手間やノウハウが必要です。ただ、「生徒の思考的なつまずきポイント」を明確化しやすいという大きなメリットがあることはこれまでの実験から分かっています。

実は、先日初めてこの「採点できるマインドマップ」を実際の授業に適用するという試行が実現しました。こちらの記事にその概要が纏めています。

iPadと学校用SNSが導く“生徒主導の学び”――奈良女子大学附属中等教育学校
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1402/05/news02.html

マインドマップは思考を可視化する一つの手段ですが、それを活用する事でコンピュータに思考過程をある程度「評価」させることが出来るという発想です。
具体的には、予め「正解」となるマインドマップを登録しておき、それをバラバラに提示して学習者に復元してもらう。それを正解と差分計算し、100点満点換算で表示するというアプローチです。アルゴリズム的に前提と結果が逆転している部分を大きく減点するような仕組みが入っています。

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 こんな感じです。例えば学習単元ごとのつながりや、個々の単元で教える要素等を正解のマップとして登録し、生徒にマインドマップを再現してもらうと意外と誤解している部分が分かったりします。(ただし、その「正解」と言えるマインドマップを作るまでが結構大変だったりします。が、何人かで正解を作る作業の中で見えてくるものもあります)

で、以前はこのツールをPCやタブレットのアプリとして使えるようにしてあったのですが、アトリエいろはの 三浦 幸太郎さんのお力添えにより、暫く前にこの「クラウド版」を作ってもらいました。それが「iroha Note Navi」です。
http://navi.irohanote.jp

クラウド版なので、端末はPCでもiPadでもAndroidでも何でもOKです。ブラウザがあればそれだけで動くのでアプリのインストールが制限される環境でも使いやすいです。

便利なのが「利用者(学習者)はアカウント登録が不要」であるという点です。(正解となるマインドマップ作成にアカウント登録が必要)
使い方として
・先生がアカウント登録をしてクラウド上に「正解」と言えるマインドマップを作る
 (後から訂正は何度でも可能)

・マップが完成したら、「公開設定」ボタンでマップをWeb公開する
 URLが払い出されるので、学習者にそれを通知する

・学習者はURLにアクセスすると、先生の作ったマインドマップがバラバラの状態で
 表示されているのでそれを組み直す

という手順になります。ちなみに、記事中の授業ではURLをその場の生徒全員が見ている「ednity」に貼付けて、そこからアクセスしてもらうという方式にしました。

折角なので、上記の記事で筆者が授業をやる時に使用したマインドマップのURLをこちらに貼っておきます。
「お題:2ヶ月後に海外からの留学生と英語でディスカッションをする必要があります。なにから準備しましょうか?」
(以下アクセスすると、バラバラなマインドマップが出てきます。最初にやるべき事を一番下、最後にやるべき事を一番上になるように構成します。分岐や合流もOKです。)

http://navi.irohanote.jp/viewer/?id=29685403

組み終わったかな、というところで「採点」ボタンを押すと、100点満点換算で計算されます。(この問題はちょっと採点スキームにバグがあるようで、なぜか全て正しい線を結んでも74.63点にしかならないのは別途調査中…)

採点は何度でもやり直し出来ます。最初からやり直したい時には、ブラウザの再読み込みボタンを押せばリセットされます。線の色で正解・不正解が分かるようになっているので、それを手がかりに自分で組み直すことで「自分自身で間違いに気づける」のもポイントです。

ちなみに当方が担当した授業では、事前に皆からお題に沿って「何が必要か」をブレストしてもらった要素をマインドマップ上にまとめ、「全員の総意」となるマインドマップを作りました。(”正解”を皆が一度見ていることが重要)
が、さっき迄納得していたはずのマップを再現しようとすると、自身の思い込みや誤解が邪魔をして意外と完璧にできません。この辺りが記憶とは異なる「根本理解」が試せる要素かなと思っています。
(ちなみにこの授業の最後の方である生徒が自分の考えをスクリーンショットに撮り、ednityに画像添付して「自分的にはこれが理想」と提言したのには驚きました) 

今後やりたいことは、このツールに「ログ機能」を持たせて、初回採点時にはどの程度の得点が取れているか、共通して多い間違い(=皆が誤解しやすい、つまずきやすいポイント)はどこか、合格点に達する迄に採点ボタンを押した回数、途中でリロード(振り出しに戻せる)を押した回数などを統計的に取得すると、学校で行われている様々な実践や工夫を「データ的に裏付ける」ことが出来るかもしれないな、と考えています。こうした裏付けがあると、論文等を書く時にも重宝するかもしれません。

(アカウント登録が無いので誰がどう間違えたかは収集できないのですが、それはそれで統計情報として使う分にはフェアでいいのかなとも思っています…)

現時点ではまだログ機能は無いのですが、誰でも自由に、フリーに使えるツールとなっているので、是非教育関係者の方にお試し頂ければと思います。

※なお、現状のツールの制限事項として、採点アルゴリズムがまだ完璧ではないかもしれないこと、ログ機能が無い事、不測のバグが潜んでいるかもしれないこと、「答案」を先生に送るといった機能が単独では具備されていない事などをご了承ください。また、利用に当たり発生したいかなる損害についても当方では責任は負いかねます。

このアプローチは実は当方が卒業論文修士論文と継続して研究していた内容をベースにしており、関連論文や実証研究も行っているのでそんなに変なものでは無いと思っています。(当方の名前で検索すれば、いくつか論文も出てきます)
アルゴリズム著作権は母校の工学院大学 米澤研究室 に帰属しますが、利用は自由に行って良い旨の承諾は得ておりますので、ご活用頂ければ幸いです。

 

今後、こういう「ICTの導入効果」をデータ的な裏付けを以て証明できるような活動も地道に展開していこうかと思っています。