EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

広尾学園 公開授業2014 レポート

今年も広尾学園の公開授業に訪問して来ました。公開授業の模様をフォトレポートします。(掲載している写真は原則すべて、昨日紹介したQX1で撮影しています)f:id:nomotatsu:20141014065923j:plain

広尾学園中学・高等学校(この写真のみ、α7sで撮影)

レポート本編に入る前に一つ、触れておきたいことがあります。

実は今回の公開授業は、直前まで開催されるかどうかが危ぶまれていました。他でもない、台風19号の影響です。

前日の段階では影響の見極めが難しく、最終的に当日の朝6時の段階で同校の休校基準である「警報の発令があるか否か」で実施の判定を行う事となりました。結果的に警報は朝の段階で解除されており、予定通り公開授業は開催されました。最終実施判断が当日朝になったこともあり、遠方から参加予定だった一部の参加者や、そもそも飛行機が飛ばなかったり、安全性の懸念があったりと、様々な理由で参加を断念する方もいらっしゃったそうです。
が、それでも生徒に対する休校基準で公開授業を行うか否かを判断した同校の対応は、個人的には正しいと思っています。(公開授業は確かに外部のお客様に向けたものではありますが、あくまで授業は生徒のために行い、その学ぶ機会の確保を最優先に行うべきものであるべきだと私は考えます。)

 

さて本編です。広尾学園の公開授業で毎回楽しみにしているのは「進化」と「新奇」で、ある程度ICTの活用が定着し、成熟して来ている同校こその「変化」があります。今回は特に「Google Apps」と「ロイロノートスクール」が広く浸透していたことが特筆される変化です。

今回の公開授業では新たにGoogleのChromeBook(クロームブック)を活用しているシーンを医進・サイエンスコースの「研究発表」の授業で見る事が出来ました。
※ChromeBookについては以下をご覧頂くと分かりやすいと思います。

Chromebook入門:まだ知らない人のためのChromebook(2014年7月更新版) (1/2) - @IT

f:id:nomotatsu:20141014235810j:plainこの「研究」は同コースの特徴的なカリキュラムで、未知の分野に狙いを定め、それぞれの生徒が査読を通った学術論文(英語)を紐解きながら判明した事を、自分たちなりの言葉で他の生徒(全く異なるテーマの研究をしており、他の人の研究内容について詳しい知識を持っている訳ではない)に分かりやすく伝達、質疑応答までこなすという「学会スタイル」をかなり前から貫いています。で、この生徒が投影しているスライドが…

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プレゼンを聴講している生徒の手元にも資料として表示されていました。左側の端末が、ASUSの”ChromeBook”です。ChromeBookは見た目は普通のノートパソコンですが、その殆どの操作を「ブラウザ」を通して行うという特徴を持っています(そのため、インターネット接続環境があることが完全に前提になっています) 。本体にはほとんどソフトも入っていなければ、ハードもOSも必要最低限の構成で、そのかわり非常に安価という”クラウド時代の端末”と言って良いでしょう。勿論、この端末をこうした一人1台に近い形で導入している学校はまだ殆ど有りません。広尾学園では一人一人がGoogleのアカウントを持っており、学習データはGoogle Driveというクラウド上のストレージに蓄積するというスタイルをとっています。ちなみに右側の生徒はMacBookを使っていますが、Google Drive上のデータはブラウザがあればOSや端末を選ばず閲覧できます。そのため、この生徒の画面にもまったく同じスライドが表示されていました。

Google Driveの活用は医進・サイエンスコースに限らず、今回の公開授業では随所で見る事が出来ました。その一つがこちらの「中学校本科」の理科実験の授業。こちらは、一人1台のiPad導入が順次進み、今年からは1-3年生が全員iPadを携えて学んでいます。
f:id:nomotatsu:20141014235618j:plain実験の最初のインストラクション(今回は銅粉を加熱して酸化銅を作り、その質量変化を見るというもの)では、いきなり「実験の手順書(プロトコル)」がGoogle サイト(Googleのサービスを利用して構築されたWebサイト)に掲載されいるので各自で取得せよ、というところから始まりました。続いて、実験中に見られた質量の変化は「Google スプレッドシート(Excelとほぼ同等)」に記載してその場で各班でグラフ化します。つまりおかしな実験結果が出ると一目でまわりの班に分かってしまうことになります…。さらには実験の化学反応の様子を”動画にとってGoogle Drive上にUPする”という指示も…。まさにGoogle Apps(Google各種webアプリの総称)を総動員していると言えます。

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こちらが実験の手順書を表示しているiPad。よく見ると、ブラウザ(Safari)上にファイルが表示されているのが分かります。

f:id:nomotatsu:20141015000026j:plainこちらは、インターナショナルコースの授業風景。インターナショナルコースは以前からiPadではなくMacBookを一人1台つかっています。こちらでは近日中に開催される「ディベート」に向けて3人一組でプレゼンの資料を作成しているのですが、よーく見ていると、3人は話し合いをしながら、同時に同じファイルに加筆修正を行っています。これはGoogle Docs上の「共同編集」という機能を使って実現しており、作業はすべて「ブラウザ」の上で行っているのです。(ちなみに、ディベート当日の発表はパワポでも、Keynoteでも、Preziでも、勿論Googleスライドでも、どんなツールを使っても良いと先生からは指示が出ていました。夫々の使い方はここまでの指導で一通り伝えているので、自分たちに合ったスタイルを選びなさい、と言う事のようです)

 

続いて、もうひとつの変化が「ロイロノートスクール」がかなり授業(特に中学校本科)に深く浸透しているということでした。今回は全12の公開授業のうち、実に4つのクラスでロイロノートを活用している様子が見られました。
ロイロノートスクールについては、こちらの公式サイトが最も分かりやすいと思います。

授業支援アプリ『ロイロノート スクール』 iPad、Windows、Android対応で21世紀型教育が始まる

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ロイロノートは非常にシンプルな操作で使える「プレゼンアプリ」で、ロイロノートスクールはその学校向けバージョンなのですが、この日はプレゼンに限らず様々な用途を見せて頂きました。特徴的だったのが、英語科:鹿内教諭 のこちらの授業。鹿内教諭の授業では冒頭に「英検の面接対策」として、面接官の質問を想定して生徒達がその回答を英作文するという演習を行っているのですが、それをロイロノートスクールを通して行っていました。

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こちらが、今回のお題。ペットボトルは今後も一般的であり得るか否か。勿論、YES/NOを含め、いろんな回答が考えられます。ロイロノートスクールの良い所は、こうした問題を先生の端末から生徒の手元のiPadに一斉に配信することが出来ることです。
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この通り、生徒の手元に同じデータが飛んできました。これを見ながら、生徒は自分なりの答えを作文します。この作文した結果は、逆に「先生に送る」ことが可能で…

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生徒が送信した回答をこのようにずらっと一覧で並べて表示する事が出来ます。(個人情報はマスク処理をしています)
いわゆる電子黒板に実装されている機能を、iPadと普通のプロジェクタや画面で実現してしまう機能を持っていると言えます。で、今回はチェック印を付けた4名の回答をピックアップし…

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このように、4等分して夫々の回答を比較検討するようなことも出来ます。
このあと、一人ずつの作文内容に対して「ここはこう言う表現/単語に改めた方がいいね」といった、個別文法/作文指導を行っていました。

ちなみに、ロイロノートスクールには…

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このように、先生の話に集中させたい時には強制的に「画面ロック」をしてしまうことが可能な機能も実装されています。

さて、今回はGoogle Appsとロイロノートスクールの2点に着目してお伝えしましたが、両社に共通する事は「クラウドベースのアプリを活用している事」であり、これは必然的に「インターネット接続が前提である事」も意味しています。広尾学園は全館にWiFiが張り巡らされており、生徒達は日々、ごく当たり前に「教室からネットに繋がる」という生活を送っています。(生徒達が使っているiPadWiFi版であり、携帯電話ネットワークにつながるセルラーモデルを使っている人は確認出来なかった)

言い換えれば、これらのアプリはひとたびネットに繋がらなくなると使えなくなる、とも言えます。そのため、WiFiの環境をきちんと維持することは日々の授業の中に置いても非常に重要とも言えます。(今回の公開授業でも一部でWiFiのトラブルがあったそうですが、公開授業のように外部から多数のお客さんが来る時にこうした事象が発生するのは何も珍しい事ではなく、WiFiを使っている以上、ある意味仕方ない事とも言えます)

ただ、同校の授業の良い所は、こうしたICT機器は必ずしも「無いと授業が成立しない」というものではなく、必要に応じてアナログとデジタルを使い分けているという点に有ります。つまり、紙の置き換えとしてICTがある訳ではなく、紙でできない事をICTが補完する”+α”として使われているのであり、仮にiPadGoogle Appsが何らかのトラブルで使えなかったとしても「今日は残念だったね」である意味、授業はきちんと進められる、とも言えます。その証拠に…

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こちらの理科の授業では、この日まさに日本を席巻していた台風19号を題材として授業を展開していたのですが、こういうiPadを活用している傍ら、画面の奥の方ではアナログのプリントを使って天気図を手書きしている人がいたり…

f:id:nomotatsu:20141015010416j:plainこのようにホワイトボードに模式図(赤が低気圧、青が高気圧と思われる)を作成したりと、アナログがきちんと併存していることが分かります。
同校では兼ねてより「状況に応じて最適な物を使い分ける」という指導を行っているので、それがiPadMacBook、ChromeBook、そしてアナログの紙と鉛筆、ホワイトボードとペン、といったツール類の「使い分け」を自分たちで考えて行う、という方向に帰結していると言えます。

年々進化や変化を続ける広尾学園。また来年には、どんな姿が見られるのか、楽しみです。
※今年は午後のカンファレンスには都合により参加できなかったため、午前の公開授業のレポートのみとなります。すみません。