EverLearning!

モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

どうやって「実況ツイート」をやっているかのご紹介

今回のエントリーでは、当方が学校での公開授業や講演会にてたびたび行っている「実況ツイート」をどんな感じ(機材)で行っているか紹介します。
内容をほぼリアルタイムでTwitterに投稿していき、イベント終了段階で「Togetter」というTwitterへの投稿(ツイート)をひとまとめにして保存できるサービスを活用、簡易的なレポートにするものです。
最近の実例としては ->
2014. 7/12 Twitterイベント実況中継
 EvernoteDays 教育セッションまとめ

 2014. 6/28 Twitterイベント実況中継
 多摩市立愛和小学校公開授業レポート

等がありますが、これはいずれも会場でほぼリアルタイムで投稿していった文章をつなぎ合わせてひとつのレポート調にしています。

■使っているのはスマートフォンソニーの「レンズスタイルカメラ QX100」

f:id:nomotatsu:20140915171427j:plain

スマートフォンのカメラは年々高画質化が進んでおり、適当に撮ってもかなり品質の良い仕上がりになるようになりました。しかし、どうしてもスマホでカバーできないのが「ズーム」です。公開授業で生徒の手元にあるiPadや教材を大きく写したり、後ろの方の座席から講演のスライドを写すのにズームは欠かせません。だからといってズームができる普通のコンパクトデジカメで記録した画像のメモリーカードスマホなどに転送して、Webにアップロードする、なんてことをしていると肝心の授業や講演の内容記録が疎かになってしまいます。

そこで、ここ1年弱ほど私はこのソニーの「レンズスタイルカメラ」というものを使っています。私の使っているQX100というモデルはスマホより高品質なセンサーと明るいレンズを搭載しており、3.5倍程度のズームもできます。一見、一眼カメラのレンズのように見えますが…

f:id:nomotatsu:20140915172528j:plain

実はスマートフォン(以下スマホ)と組み合わせて使う事が前提となっているれっきとした「カメラ」です。このレンズスタイルカメラとスマホWiFiで接続され、スマホが不得意な「ズーム」や「暗い場所での撮影」といった機能をこのレンズから「借りる」、逆にレンズ部分はスマホの液晶画面をファインダーとして「借りる」という表現がしっくり来ます。撮影した画像はスマホに無線で1-2秒で飛んできますので、そのままスマホに転送された画像をTwitterなどのSNSに投稿できます。私が実況中継をする時には、特徴的なシーンやスライドをこのレンズスタイルカメラで撮り、その状況を説明する文章をスマホで付け加えて投稿しています。

f:id:nomotatsu:20140915172953j:plain
(※この画像はソニーのQX100製品 公式サイトより引用)
このレンズスタイルカメラを使うメリットは、なんといってもこれです。カメラと液晶画面が切り離されているので、手元のスマートフォンの画面でフレーミングを確認しながらカメラ部分は自由に動かしてまわれるのです。さらに、シャッターはスマホ側に表示されているボタンでも、レンズ部分にあるボタンでも、どちらでもきる事が出来るので、レンズ部分だけを他の人に持ってもらって、スマホ側から遠隔でシャッターを切る、なんてこともできます。私の場合は、非常に混み合う公開授業の教室でも手を伸ばせば上方から撮影できたり、SNS投稿にあたりNGな「子どもの顔が映り込む」ことを避けるための微妙なアングル調整するのにこのカメラを愛用しています。

■比較的最近のデジカメでも同じ事ができます!
最近のデジカメは「WiFi対応」とか「スマホ連携」を行うものが増えてきており、上記のようにスマホの画面をファインダー代わりにしたり、無線で撮影画像を転送する機能を備えたものが増えてきています。

f:id:nomotatsu:20140915170622j:plain

こちらはつい昨日購入した「α7s」という、もの凄く暗い所でも奇麗な写真が撮れる「超高感度センサー」を搭載しているレンズ交換式カメラなのですが、これもスマホ連携ができるカメラの一つです。最近はこうした対応製品が増え始めており、スマートフォンがこれらのレンズやセンサーの性能を「借りる」ことで、スマホ単体では絶対に撮れない写真が撮れるようになっているのが面白いところです。
ちなみに、連携先はスマホではなくiPadなどのタブレットもOK。ファインダーとしてより大画面での写真撮影が行えますので、いっそう撮影が楽しくなります。

■ただし、欠点もある

ただ、このレンズスタイルカメラや最近のデジカメのスマホ連携機能にはいくつかの欠点があります。
・撮影前にスマホとの連携処理が必要
 -> 電源OFFの状態で目の前で起きた突発的な事象を撮影することはほぼ不可能
・ファインダーの動きがカクカクしている
 -> カメラが捉えている映像を無線で飛ばしている影響か、どうしてもスマホ側の
  画面に見える像はカクカクしていますし、時々動きが止まる事もあります
・周囲にたくさんのWiFi機器があると、極端に動作が悪くなる
 -> 上記のファインダーの動作がカクカクところか数秒間停止したり、撮影した写真が
  なかなかスマートフォンに転送されてこないことがある
これは最近増えてきたiPadなどのICT機器を多数活用する公開授業などでよく発生しており、見学者が多数のスマホを使っているとその確率はさらに上昇します。ですので、どうしても上手く動作しない時には仕方なくスマホ標準のカメラを(画質が落ちるものの我慢して)使うという割り切りをすることもあります。

ちなみに、比較してみてよく分かったのですが、このレンズスタイルカメラやスマホとのWiFi連携、iPhoneよりもAndroidの方がかなり安定して使えます。特にNFCという機能を搭載しているスマホだと、スマホ連携をスタートするためにカメラとスマホを「タッチ」するだけで直ぐに起動するので、瞬発力も上がります。新型のiPhone6/6 plusはNFCに対応したので期待が高まりますが、NFCにはいくつか規格があるようなので、実物が触れる機会があれば試してみたいと思います。

2014/9/27追記:iPhone6/6plusでは現状、アプリ側がNFCに非対応で利用できないようです。現状の情報を総合すると、どうやらNFCは外部API等を公開していない模様なので、暫くの間対応は期待出来なさそうです…。

 

■文字入力手段は状況によって使い分け

実況中継は写真だけでなく、先に述べたようにシーンを端的に説明する文章が命です。この文章入力をスマホだけで行うのはちょっと辛いですし、誤字脱字が増えやすくなる傾向があります。そこで、講演などである程度の広さがある時には、MacBookを併用するようにしています。

写真のデータはスマートフォン上にあるのに、なぜMacを使うの?と思うかもしれませんが、これも発想は先ほどのレンズと同じで、文字入力のために「Macに付いているキーボードを借りてくる」という考え方です。

その時に使っているのが1Keyboard という、bluetoothMacスマホを接続して、Macのキーボードをスマホの文字入力用に使えるツールです。
http://www.eyalw.com/1keyboard

スマホで使える携帯用のキーボードもあるのですが、意外と5000円くらいして高価なのと、椅子しかないような場所で膝の上に置いて使うにはあまり安定しないという事情もあって、自分は手持ちのMacを有効活用する為にこのツールを愛用しています。

もちろん、この技が使えるのは椅子やMacBookを開けるようなスペースがある場所に限られます。ですので、公開授業のように動き回ることが前提の時には、頑張ってスマホフリック入力で対応しています。とはいえ、スマホの文字入力も慣れると非常に早くなるものでして、最近では予測変換も組み合わせて授業や講演の内容をかなりのスピードでスマホに入力できるようになってきました。
なので、最近の生徒達が「パソコンでもキーボードじゃなくてスマホみたいに文字入力したい」というのもよく分かります(笑

 

■実況中継をやってみて思う事

もともと実況ツイートといえば林信行(Twitter: @nobi)さんが非常に有名で、連日様々な所に赴いてはその模様を非常に分かりやすく、かつサマライズした形で中継されています。それに触発される形で私も初めてみたのですが、これが中々難しい。見聞きした事や目の前で起こっていることをまずきちんと写真に納め、その内容をなるべく噛み砕き、かつ端的に伝えるというのはかなりの「要約力」が求められます。
しかも当方が主に用いているTwitterは文字数制限144文字という制約があり、写真を添付するとそれが更に減ります。目の前で起きている内容を130文字程度に瞬時に要約し、上記のような写真撮影とスマホ連携も迅速に行うのはかなり大変。公開授業だと1時間があっという間に終わります(笑
ただ、この取り組みは自身の文章要約力や語彙力、デジタル機器の使いこなし、写真撮影の技術などいろんなスキル、そしてTwtiterの場合は投稿した内容が「即座に世の中全体に発信される」ので、誤った情報や不適切な写真を投稿しないように配慮する「情報リテラシー」を鍛え上げるという面で非常にいい勉強になっています。
また、こうして作られたまとめが同じ公開授業や研修会に参加した先生達が学校に提出する「現場視察レポート」やその添付資料としてけっこう活用されているという話もよく聞くようになりました。こういう誰かの役に立ってるんだなーという実感が、継続するひとつの意欲になっているのかなとも思います。

今回、せっかくα7sという暗い場所で真価を発揮するカメラを入手したので、これをうまく講演会などで活用してさらに品質の高い実況中継ができるように精進したいと思います。

今日の記事は普段とちょっと趣旨が異なる話題になりましたが、教育×ICTを推進するにはこういった身近な機器・新製品を上手く使うというのも必要かなと思い、記事にしてみました。

文科省が考えている教育ICT施策の超概要をまとめました

文部科学省が同省のホームページで8/29に公開した

「ICTを活用した教育の推進に関する懇談会」の報告書(中間まとめ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1351684.htm

について、全体を一読ました。
 大変良く纏まっている報告書なので原本を読んで頂くのが一番よいのですが、時間がない方でもその概要を理解しやすくする目的で、重要なポイントになりそうな部分を以下に列挙しておきます。なおこの報告書は2014年4月に発足した有識者懇談会の知見を纏めたものです。

■現状の課題
ICTを活用した恊働学習や課題発見/解決型授業が出来ている学校は小中とも半分以下
・TALIS 2013調査では「生徒が課題や学級の活動にICTを用いる」指導実践を頻繁に行う教員の割合が全参加国・地域で最下位
・2011年に掲げられた教育の情報化ビジョンが遅延中、特に情報端末/デジタル機器/ネットワーク環境、校務の情報科、教員への支援が遅延、地域格差も顕著
(シンガポールが2010年時点で生徒2人に1台のコンピュータが有るのに対し日本は2013年時点で6.5人に1台。国内でも最大は4.3台/人、最小は8.4台/人と差がある)
具体的な情報端末等の整備計画がある地方公共団体は3割のみ
校務支援システムが完備されている都道府県は山口、佐賀、大分の3県のみ
地方財政措置として1,678億円×4年が投入されているが整備は思うように進んでいない

■懇談会で提言されている指針
・ICT化の推進には端末・環境整備に加え、ICTを活用した教員の指導力強化、外部専門家による指導・助言および評価が必要
内閣府世論調査では7割以上の保護者が子供にスマホを与える事に不安、リテラシー教育強化にむけ啓発資料の作成・周知が必要
・端末が普及し、生徒の端末に学習データが蓄積されるのを見越した、データの適切な取扱いのガイドライン設定が必要
地方の過疎化対策としてICTを用いた遠隔教育の効果検証が必要
・国内では全産業中IT産業が8.9%で最大規模だがその担い手が不足しており、初等中等教育段階からその育成に力を注ぐことが必要、プログラミング教育もその一環として注力すべき
・教員が多忙すぎるとの調査結果の一方で、今後数年内に起きる教員の大量退職による年齢構成の変化に備え、指導力強化が必要、ICTはその一助になり得る
・そのため、各校でICT活用のリーダー的教員を育成、周囲に浸透させる方針
次期学習指導要領・解説では更にICTを活用した指導方法を明確化する
 ・さらにICT活用授業を教員研修や教員採用選考、教員免許状更新講習などへ導入する事が望ましく、これに向けて教育委員会や大学が連携しプログラム策定と体制構築をするべき
・ICTを活用した授業を進めるため、未整備地域においてはまず電子黒板や実物投影機を早期に完備すべきとの指針
タブレットはOSに依存しない環境整備を早期に進めるべき
・すでにタブレットの導入が動いている自治体ではサポート体制や教員の指導力強化研修などの支援体制を用意する事が適当
・これらの支援ノウハウを共有する基盤として、国立教育政策研究所が運営する教育情報共有ポータルサイト(CONTENT)を活用することが適当
・こうした機器調達には規模の経済を働かせた大量調達(複数地方公共団体での合同調達)によりコスト削減を図るほか、コスト低減に積極的な民間企業と国が連携し、教育情報化に関する情報交換や共同説明会等の官民一体プロジェクト等の取組みを促すのが良いという指針

■スケジュール感
これらの施策を2017年度までを「加速期間」として推進していく
・2015年−17年度にかけ、ICT教育効果の検証、学習データ利用法の検討、過疎化/少子化対策としての遠隔教育の開発・普及・促進、情報モラル教育の充実、整備コスト低減に向けた官民一体のプロジェクト運営、情報共有基盤の構築・運用
・2014年度はその準備期間。先行して校務情報科検討、高校遠隔教育の検討、教員リーダー養成プログラム開発、1678億円の地方財政支援、デジタル教科書標準化、NW構築の在り方の検討 などが開始済み/今後開始の予定


■上記を纏めた上での所感
 最後のスケジュール感の部分だけを見ても、2015年度は様々な施策が一気に動き始める年度と分かります。つまり、2014年度までの成果がこの先の方針・意思決定に大きく響くとも言えます。
 特に企業においては、コスト低減に積極的な企業と国が組むという指針が見える事から、既存プレーヤーだけでなく様々な工夫により低コストで同等の課題解決が行えるソリューションを提示できる(かつその機会を得られる)企業にはチャンスがあるかもしれません。また、プログラミング教育を推進するべきでは、という意見が提示されているのも注目に値します。
 個人的に気になったのは、教育ICTの情報共有のデータベースとしてCONTENTが明示されている事と、タブレットのOSに依存しない環境整備という部分の2点です。前者はちょっと勉強不足なのですが、同等主旨のサイトは既に幾つかあるので、うまく統合する方向に動いてほしいと思います。後者については「平成25年度 教育分野における最先端 ICT 利活用に関する調査研究 報告書」にも示されている「webアプリケーション」の活用が見え隠れするのですが、個人的にはプラットフォームを選ばないアプリケーションは将来的なOS混在環境において理想的と思いつつも、まだブラウザベースで充分なUI/UXを提供できるレベルに達していない(それを支えるインフラ設計もきちんと出来ていない)と思っていますので、いきなりここを目指す事には少々、疑問があります。開発する側は厳しくなるかもしれませんが、複数OS向けのクライアントアプリがあるソフトウェアを上手く活用する方が良いのでは…。ネットワーク障害が起きたら、一切授業ができなくなるブラウザ依存型のシステムに向かうには、まだ時期尚早という気もします。

 

昨年公開した書籍のイントロ漫画をご紹介します

久しぶりの更新です。昨年の7月に当方が編集・無償公開した「iPad×ICT 次世代学校の創り方-正しい活用への実践事例集-」のイントロダクションとして用意したマンガを、こちらで全体公開致します。作画は私の実の兄で漫画家である野本 真哉(のもと まさや)にお願いして書いてもらいました。

実は、この書籍の第二弾を現在準備中でして、そちらにもイントロの漫画を作成しようと考えています。折角なので本編をより多くの人に見てもらいたいと考えて、こういう方法がアリなのかどうかを占う意味で全体に公開してみました。
ご意見を頂けますと幸いです。

f:id:nomotatsu:20140827002044p:plain

f:id:nomotatsu:20140827002106p:plain

f:id:nomotatsu:20140827002109p:plain

f:id:nomotatsu:20140827002115p:plain

f:id:nomotatsu:20140827002141p:plain

f:id:nomotatsu:20140827002151p:plain

 

本編となる電子書籍は、iPadおよびMacOS X Mervrics 以降の、iBooksアプリを搭載したMacでお読み頂けます。ダウンロードはこちら から。

教育ITニュースピックアップ&コメント[Vol03]

先週に続き、教育IT関係のニュースとそのコメントをお届けいたします。

2014/4/11
■担任、息子の入学式へ…高校教諭勤務先を欠席、教育長が異例の注意
http://www.saitama-np.co.jp/news/2014/04/12/01.html
ここ数週間、多くの方が話題にした記事です。世論は真っ二つに割れており、当事者の「学校の先生」から当人への批判が強い傾向があったのが意外でした。そこで当方はFacebook上で
①学生/最近まで学生だった人に「高校入学式に担任が居なかったらどう思う?」という質問
②先生向けの非公開Facebookグループで「本件を先生はどう考えているのか?」という質問
をしてみました。①について「もう高校生だし、副担任等が居れば問題ない」「子どもが小学校の入学式なのであれば、そっちを優先してほしい」「これが入学式じゃなくて、卒業式とか離任式だったら”嫌だ”かも」といったコメントが寄せられました。当の生徒たちよりも、大人たちが慣例に捕われて騒ぎ過ぎなのでしょうか?
一方②は「自分も普通に休みを取った」「担任はきちんとお詫びの文書を別の教員に託しているし問題ない」「学校長も休暇を受理している以上、責任は管理職側」「教員本人を糾弾する風潮は異常」といった擁護のコメントが目立ちました。表立っては言いにくいものの、学校の先生もきちんと理解を示しているようです。
これに関連したイケダハヤトさんの記事も合わせてご覧ください。
 ※「教員が、教え子より息子の入学式を大切にする」のは当たり前」
 http://bylines.news.yahoo.co.jp/ikedahayato/20140413-00034455/
ところで、本件では「税金貰って仕事してるんだから欠席などけしからん」という論調の方もかなり目立ちました。が、給料の出所がいくら税金とはいえ、実際に先生の稼働に対する対価は決して高く有りません。というのも、こういうデータがあるからです。

2014/4/20
■教員の精神疾患10年で3倍・うつは企業の2.5倍-世界最低教育支出=ブラック教育が生徒も食い潰す
http://togetter.com/li/656873
「1週間の中で休める日がない」とする教員は半数に近い43.8%で一般企業の約3倍、教員の精神疾患による休職者は10年で約3倍(これは日本全体の増加に対して1.8倍と倍近い) という衝撃的な数値が並んでいます。「モンスターペアレント」関連で欝になる教員が増えていること言われて久しいですが、その傾向は変わらないどころか増加の一途を辿っています。私の母親も公立中学校の教師でしたが、「部活動も殆ど手当無しの事実上ボランティア。地域イベントで頻繁に休日出勤もある。残業代は事実上無し。それでも、子供のためを思うと出ないわけにはいかない」とよくボヤいていました。「あなたの会社は残業代もボーナスもしっかりでていいわねぇ」とも…。これについては少し昔の記事ですがこちらも参考になります。
 ※日本の公的ブラック企業『教職』の情けない実態
 http://matome.naver.jp/odai/2137160915054702001
こうした現状から最近は教職の志願者数も低下傾向にあります。一方、団塊の世代離脱によりベテランが減り、教務力の低下が起きていると言われることもしばしばです。以前このブログでも賛否両論があった「学校を超えた情報共有の壁」は色々な先生へのヒアリングから大なり小なり存在すると今も考えています。
が、この状況に挑もうとする若手の企業家がいますので紹介します。

2014/4/16
■ソーシャルの力で“悩める先生”を支え抜く「SENSEI NOTE」(要会員登録)
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1404/16/news02.html
サービスを企画・開発したCEOの浅谷さんに当方がインタビューをして、寄稿した記事です。「SENSEI NOTE」は教師用SNSで、いわば先生限定のFacebook。情報交換や共有はしたいけど、生徒や保護者に見つかると何かと面倒…という先生の真理をうまく汲み、情報共有の「インフラ」として急速に伸びているサービスです。最大の特徴は、登録したその日から「全国の先生とつながれる」ということ。意識が高い先生方が情報交換や課題解決の為に集まり、非常にアクティブな意見交換がなされています。しかも「役職や立場は一切不問で、完全フラットな構造にしてある」ということで、教材の共有だけでなく学級運営の工夫(総合的な学習のアイデア交換や、学校でのケータイの扱わせ方をどうするか、等多岐にわたります)などが随所で行われていました。3/26に正式リリースしたばかりですが、早速多数のユーザーを集めています。
類似記事:先生一人ひとりが生き生き働けるために/SENSEI NOTE
 http://ict-enews.net/zoomin/21sensei-note/
ちょっと「情報リテラシー」的な話が出た所で、少し古い記事ですが非常に良いものがありましたので紹介します。

2013/1/4
■13歳の息子へ、新しいIPHONEと使用契約書です。愛を込めて。母より
http://hana.bi/2013/01/13sai-iphonekeiyaku/
内容が素晴らしいと(特にハイリテラシー層から)話題になった記事です。iPhoneは様々な事ができる故、ルールの線引きが難しいところがありますが、「親に見せて恥ずかしくない事」という子供に自ら考えてもらう要素を入れている事、一方でオンラインに情報が流出するとまず消せないことについては具体的な表現に踏み込んでいるなどの点が、特に多くの賞賛を浴びています。何よりも素晴らしいのが「制限一辺倒」ではない事に尽きると思います。
実はKDDIも「ケータイ教室」を展開していますが、やや「危ない、やめよう」という"禁止"の要素が強いように感じています。これからは「使わない事と同時に使う事の利点も話してほしい」という要望が多くなってくるのではないかと考えています。

2014/4/18
武雄市、花まる学習会と「官民一体型学校」創設
http://resemom.jp/article/2014/04/18/18103.html
さいたまの学習塾「花まる学習会」の教材やノウハウを公立の小学校に持ち込むという報道。賛否両論が巻き起こっています。武雄市は今年度より小中学校にAndroidタブレットを、高校生は8万5000円ほどのWindowsタブレットを全員配布という点でも話題になりました。
花まる学習会は受験を意識しない「学校教育に近い立場」で、世間の評判も良い塾のようです。当方は中学受験の小学4-6年生を3年間通しで教えた経験があるのですが、中学受験向け授業は公立小学校のそれとは「全く別物」。そういう意味でも、武雄市が受験と距離を置く花まる学習会に目を付けたセンスは流石と感じます。今後の展開に要注目。
一方でこの施策、水面下で進められていたようで地域には「寝耳に水」のようです。本件についてもっとも踏み込んでいる朝日新聞の報道は、会員登録してでも読む価値あり、です。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11090538.html (要会員登録)

 


2014/4/15
■<総務省案件>
 「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2014
 (中学校・特別支援学校版)」の公表
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu05_02000049.html
これまで実証実験として進められてきた4年間のフューチャースクール推進研究会等の成果から、中学校と特別支援学校に向けたICT整備の指針が示されています。実際にフューチャースクールではどのような考え方で機器が選定され、どのようなポリシーで運用されているか、構築前に事前に調査すべき項目は何か、等が表形式で纏められており、実例に基づいた導入検討に役立ちそうです。

2014/4/15
■<文科省案件>
 平成26年度スーパーグローバル大学創成支援の公募について(通知)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/sekaitenkai/1346661.htm
スーパーグローバルハイスクールに続く「スーパーグローバル大学」の公募が開始。大学が5月後半の書類受付期間に向けてこれから検討を開始するものと思われます。タイプAの申請10枠を獲得すると、目安として向こう15年間で文科省から4.2億円の予算が付くとの事。これらの予算はシステムの外注費、通信費として支出することも認められており、グローバル化の一つの材料としてICT化を進めたい学校としては「渡りに船」になる可能性が秘められています。
要綱など詳細は以下URLで閲覧できます。
http://www.jsps.go.jp/j-sgu/download.html

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■「おまけ」
新年度から英語の勉強を始める人に絶対オススメしたいwebサービス・アプリ5選
http://english-hacker.jp/start-learning2014
GWにもう一度英語にチャレンジしよう、という方にお勧めの記事です。
教育系Webサービス(EdTech)は現在「百花繚乱」ともいえるほど様々なものがありますが、その中でも「聞く」「話す」「書く」というスキル別におすすめのサービスを提示しています。特にITと語学は相性が良く、今までなかなかできなかった「話す」や「書く」能力を伸ばせるサービスがかなり安価に選べるようになってきているのが嬉しいところ。一つ追加するにであれば、英作文添削とSkype授業を組み合わせた「Best Teacher」もかなり良いです。今月中に同社のCEOへのインタビュー記事を寄稿する予定ですので、楽しみにしていてください。

教育ITニュースピックアップ&コメント[Vol02]

先週に続き、教育IT関係のニュースとそのコメントをお届けいたします。


2014/3/28
中央教育審議会(第90回) 配付資料
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140411-OYT8T50060.html
教育ITを考えるうえでは国の動きも参考にする必要があります。こちらは文部科学省による教育再建を考える審議会の資料群。多数のPDF資料がありますが、以下の下村文部科学大臣の資料は是非見て欲しいです。(PDF直リンク)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/attach/__icsFiles/afieldfile/2014/03/31/1346147-1.pdf
グローバル化人材の減少、高校生の自己肯定感が著しく低い、保護者の所得が子供の学歴に反映され「格差が固定化」している、など・・・。ここに対して何か出来ることは無いのか、考えるきっかけになれば幸いです。なお、この件についてパブリックコメントの受付もこのほど始まっています。

2014/4/3
■家庭環境と学力の関連
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/04/blog-post_3.html
↑の「格差の固定化」を裏付ける記事のひとつです。様々な調査から、年収と学力の間に相関関係を紐解くと「家庭環境」に依存すると指摘されています。博物館への訪問や旅行など「机の上以外の場所で学ぶ機会」、「両親が子供と話し合う時間」等が年収が高い家庭のほうが充実しているケースが多いことが背景と考えられます。ただ、海外ではITが格差を是正するものとして教育分野で脚光を浴びている現実もあります。日本でもこうしたことは出来ないのでしょうか。

2014/4/8
■5000台の“魔法の箱”がプログラミング教育を変える
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140404/1126863/
その「格差の是正」にITが介在しうる一要素が「プログラミング教育」です。早くても中学生くらいでないと…という先入観は多いのですが、ブロックを組み合わせる感覚でプログラミング可能な「Scratch」という環境が最近では小学校(低学年含む)でも人気です。ブラウザさえあれば動くので、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)と呼ばれる安価なLinuxボードを学校で活用する動きが全国各地で模索されています。足元ではIT系エンジニアの絶対的不足も叫ばれており、社会的課題解決の側面から意識する必要があるのではないでしょうか。
※【参考】マイナンバー、郵政...。システム計画めじろ押しでエンジニアが10万人不足!?
http://yukan-news.ameba.jp/20140408-47/

2014/4/9
■登壇者が質問者、「反転セミナー」リポート【前編】(要会員登録)
学校IT化だけではだめ? “受け身型生徒”をやる気にするには
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1404/09/news02.html
今年2/22に当方とデジタルハリウッド大学院大学の佐藤教授が共同で開催したイベントレポートです。神谷加代さん(2児の母の主婦で教育IT関係のフリーライター)が記事にしてくれました。学校の先生や教育関係者の方が教育ITの先駆者たちに自由に質問が出来るイベント。会場内ではClicaというSNSに質問を書き込んでもらい、良いと思ったものをその人に発表してもらうというケータイ大喜利みたいな方式で進めました。
NetCommonsを使った教育コンテンツの構築方法、学びのビッグデータともいえる「学習ログ」活用ついて、「紙」と「デジタル」のバランス感覚について等かなり面白い議論が垣間見えます。


2014/4/11
タブレット授業で正答率高め…熊本県教委調査
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140411-OYT8T50060.html
県内の8小中学校の約950人を対象に実験したところ、タブレットの活用により成績が6~8ポイント上昇したという報告。が、どのように実施したかの詳細がこの記事ではわからないので詳細を追いかけています。ちなみに近隣でタブレット導入で先行している佐賀県では、「教育に効果有り」との報告を数値的根拠が無いままに発信し、後に非常に厳しいバッシングを浴びたことがあります・・・。ITによる成績への寄与度の測定は短期的には難しいとされており、その方法論は各地で模索されています。その一例が↓の多摩市の小学校の例です。

2014/4/12
iPad 5+3ヶ月目の挑戦! ー公立小学校の新しいかたちー
http://kokucheese.com/event/index/165428/
公立小学校なのにiPadを一人一台持っている多摩の愛和小が、授業を公開します。実はこの学校のiPad、校長先生が営業力を発揮し、大学や教育系ベンチャーからかき集めたものです。その実証実験のため、企業のアプリが授業の随所に組み入れられているのが特徴。提供企業は様々な効果測定を目指して参画しており、特に熱心なのがDeNA。教育データの分析にかなり力を入れており、その測定結果は個人的にも注目しています。
なお、活用されているアプリのひとつが、先週も紹介した「ロイロノート」。来週、その学校向けのカスタマイズ版発表会が4/23に同校を会場として実施されます。
※ロイロノート・スクールを使った実践授業
 http://n.loilo.tv/ja/

2014/4/14
■大規模公開オンライン講義は日本の教育を変えるか? JMOOC4/14開講
http://resemom.jp/article/2014/04/15/18058.html
大学講義がオンラインで無料で受講でき、小テストやレポートなどの成果物に応じて単位認定もされるというMOOCsの一種、「JMOOC」が始動。NTT docomo独自開発のプラットフォームと放送大学が無料ツールを組み合わせて構築したプラットフォームの2つが当初から混在するのが気がかりですが、docomoのものはスマートデバイス特化という点で新しさがあります。触ってみましたがUIも確かに今風、動画コンテンツも10−15分程度に刻んでおり受講しやすさを意識している印象です。MOOCsはどうしても修了率の低さや、自ら学ぼうという意識の高い人を相手にしている仕組みということもあり「マスに響くか」というと難しい部分はあります。が、受講者同士のコミュニティの構築など工夫も見られるので、今後の動向を見守りたいところです。個人的には一番最後の以下の部分が今後を左右すると思っています。

”将来的には学位相当の認定、単位取得など考えているか聞いてみた。「そのためには、シラバスの見直し、アカウントの本人同位性認証、試験のなりすまし対策といった技術的な問題など、クリアしなければならない点も少なくない。検討課題として議論はしている。」”

 

来週は、ネット上でも大いに話題を呼んだ「担任となる高校の入学式を、自分の子どもの入学式を優先して欠席した先生」についてFacebookを通じて意見を呼びかけた結果などもご紹介します。

教育ITニュースピックアップ&コメント[Vol01]

本年度も宜しくお願い致します。
さて、このブログを今後どのように活用して行こうかな、と色々と思慮を巡らせていたのですが、折角なので世の中に流れる量が多くなって来た教育IT関連のニュースを当方独自のツッコミを加えて紹介するというのを出来るだけ定期的にやってみようかなと思います。目標は週1〜隔週1くらい。
ということで、さっそく行きます。


2014/3/24
Keynoteを超えた? iPad用プレゼンアプリの新標準「ロイロノート」(要会員登録)
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1403/24/news02.html
最初から手前味噌で恐縮ですが、当方が執筆した記事です。iPadのプレゼンアプリといえば定番はKeynoteですが、学校教育現場で絶大な支持を集めているのが「ロイロノート」で、なんと幼稚園から大学まで幅広く使われています。同じアプリ内で文字、写真、動画、地図、Webページなどあらゆるものを引用したスライドを簡単作成でき、しかもWebページ検索時にはフィルタリングも自動で適用されるという安心仕様なのですが、何と言っても「操作が簡単」なのが特徴です。是非登録して読んでみて下さい。ちなみにロイロノートは日本だけでなく、米国ニューヨーク州およびメーン州の公立小中学校での実証実験にも採用されているそうです。。


2014/3/28
■【DOCOMO Innovation Village 第2期Demo Day】結果
http://www.nttdocomo-v.com/village/p1683/
一番手にプレゼンをした株式会社forEstは教育系ベンチャーの注目株です。数学や物理などの問題集を電子化してタブレットなどで身軽に持ち歩くという所までは普通ですが、電子化の際に問題に「タグ」を付け、類題を複数問題集から串刺し検索ができるのが特徴。問題を解く時には、所要時間や正否が記録され、正否状況に応じて類題が提案されたり、間違えてから一定時間(1週間など)を経過すると「もう一回解いてみない?」と提案してくるなど、電子化のメリットを最大限活かしています。こうした問題への取組みデータは出版社へフィードバックされ、より良い問題集作成に活かされるほか、ビッグデータとしての活用も期待されます。ユーザーも軽く紙縒り安価に参考書の電子版を入手できるし類題に効率よく当たれるというトリプルWINビジネスモデル。実際にこの仕組みが評価され、ダブル受賞を勝ち取っています。

2014/3/28
■日本も年内に提供開始!?:「Office for iPad」がついに登場――林信行のファーストインプレッション
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1403/28/news146.html
教育分野で好まれる傾向のあるiPadですが、今回のOfficeのiPad版が実際に年内に日本にも展開されれば非常に大きなインパクトがあります。「WordやExcelなど、今の社会に中心となっているOfficeを早期から学べる」としてWindowsタブレットの導入する学校も有るそうですが、これが日本に入ってくればハードの縛りがまたひとつなくなります。むしろ、編集など一部用途にOffice365のサブスクリプションが必要な事、その学校に対する課金方法が例えば3年分一括、入学時に清算のような柔軟な形に出来るかの方が重要になりそうです。ただ、iPad導入で先行している学校ではGoogle DocsやiWorks等無料のソリューションで充分対応出来ているという声もあり、教育現場へのWindowsタブレットの普及をどのくらい後押しするか、注目です。とはいえ、Windowsタブレットを指向する学校にとっては、この日本への展開は待ち遠しい施策になるのは間違いないでしょう。

2014/4/3 
Microsoft、9型未満のデバイスWindows無償化を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20140403_642657.html
こちらもMicrosoft関係では大きなニュースで、1年間のOffice365無料サブスクリプション付きという点からしても上記ニュースとセットで教育分野に斬り込めそうな雰囲気があります。が、ひとつとても微妙だな…と感じる部分が画面サイズの制限。教育分野では恊働学習(他の人と一緒に学び合う)という一つのブームがあり、他人に資料を見せるシーンが多い事から画面サイズが大きいタブレットが好まれます。(当方はiPad miniの学校での大量導入事例は一部しか知りません。塾業界は結構多いのですが、これらは”個別学習”なので性質が違います) 確かに8インチサイズのWindowsタブレットはこのところ価格が手頃になってきていることもあり注目度は上がっていますので、価格に重視な学校にはマッチします。ただ、生徒の学びの体験を重視する学校は「もう一声…」と思っているかも?
参考:「iPad Air」と「iPad mini Retina」、タブレット授業のプロはどちらがお好き?
 ※生徒利用タブレットAirが良いという声で複数名、揃っています
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1401/22/news07.html (要会員登録) 

2014/4/7
■ICT×教育の力で実現する「アダプティブラーニング」
http://dentsu-ho.com/articles/985
2児の母でもあり、iSIDに勤めながら教育ITの方向性を模索している関島章江さんのインタビュー記事。関島さんはこの分野で紙と電子書籍を同時に出版出来るソリューション「Next Publishing」を活用し著書を出版されています。主婦目線と企業人目線のバランス感覚が極めて優れている方で、主張されている内容も非常に共感出来る方が多いのではないでしょうか。学校の先生としても、こうした保護者の建設的な声は嬉しいのでは。シリーズになるようなので、今後の記事にも注目です。
参考:関島 章江 (著) 日本のICT教育にもの申す! (NextPublishing) 
http://www.amazon.co.jp/日本のICT教育にもの申す-NextPublishing-関島-章江/dp/4844395947

2014/4/7
■“PDCA軽視”の学校にIT化成功は無い――玉川大学 小酒井 正和准教授 (要会員登録) 
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1404/07/news03.html
玉川大学の教育IT活用で有名な先生といえばこの小酒井准教授です。研究室の学生にiPadiPad miniを早期から渡し、「学校でITを使ってはいけない」という固定観念を打ち破るべく(?)、授業中にClicaというWebアプリを使って生徒同士にスマホiPadでどんどん発言してもらっているそうです。(大人数でも授業の進行を止めずに気軽に発言出来るのがとてもいいそうです)
「教育現場では、新しい取り組みをする際にスタートまでのプロセスが長過ぎたり、何でも一斉に始めようとしたりする傾向がある」
「多様な使い方ができるはずのIT製品であっても、教員が「自分のときはこうだった」「勉強はこういう風にやるもの」といった固定概念を持ったまま使うと、活用の幅が自ずと狭くなってしまう。」
など、痛快な文面が非常に面白い記事です。会員登録が必要ですが、登録してまで読んでも損は無い記事だと思います。

こんな感じで、少しずつコメントを添えて記事を紹介して行く活動を地道に続けられたらと思います。

たまには本業について書いてみる

このところ「野本竜哉=教育系の人」と言われることが非常に多くなってきて、それはそれで嬉しいのですが、教育系の顔は実は「2足目の草鞋」の部分であって、本業はまったく違う事をやっています。
本業は所謂「保守・運用系」なので教育とは凡そ関係が無いように見えるのですが、実は本業での経験が教育方面にリンクしていたり、原動力になっている部分も少なくありません。ということで今回は珍しく(?)本業についてちょっと書いてみます。

ご存知の方も多いかと思いますが、KDDIKDDとDDIとIDOという通信系3社の合併で発足した会社です。当方の居る「グローバルサービス運用センター」という部署は旧KDD(国際電信電話)の色合いが強いところで、海外の現地法人や通信事業社と一緒に仕事をする事が多く、英語の使用頻度が高いのも特徴です。

私の担当している業務はこれまで色々と変わって来ていますが、基本的には
1. 海外の通信事業社と共同で企業向けの通信回線やサービスを提供すること
2.提供している通信回線やサービスが故障したら迅速にそれを直すこと
3.これらの業務を効率化するためにシステムや業務フローを整える事
の3つに集約されます。

1.については配属直後に携わったのですが、英語での電話やメールで海外と連携し、様々な無理難題(納期、お国事情、仕様のミスマッチ等)と戦いました。
国によって全く対応や考え方が違うことを学べた事はとても大きく、「日本の常識は世界の非常識」という言葉の意味を身を以て経験しました。それと同時に日本の品質に対する拘りや要求レベルの高さを客観的に見つめることもできました。
また、この業務を通じてネットワーク機器の挙動や通信が成立する基本的な概念を実態を伴って理解する事ができるようにもなりました。(といっても、奥が深い世界なので自分としてはまだまだヒヨッコ、ですが)

2.は実際に交代勤務のシフトに入り、24時間365日、常に誰かが障害が起きていないか監視し、発生したら即座に対応する、という現場で働きました。
障害が発生し、その場所が海外であった場合にはすぐに海外の通信事業社に問合せをして、情報提供や早期復旧に向けた様々なアクションを行います。日本のお客様への報告以外はほとんどが英語対応で、どのようなやり取りを行ったかを記録するシステムへの記載も英語。いちいち文法や語法を意識していてはとてもスピードが足りない。結果的に、なるべくシンプルで分かりやすい英語を使うように鍛え上げられました。
これはとても重要な事で、連絡する相手がアジア諸国であれば、実は向こうもノンネイティブ。難しい単語は伝わらなかったり、誤解されるリスクも高いので、「中学生レベルの英語+技術的なキーワード」がきちんと話せる事の方が圧倒的に”重要”だと気づいたわけです。
ちなみに、現在も時々この業務はピンチヒッター的にやることがあります。

3.は現在のメイン業務でもあり、海外の現地法人にシステムを導入するために何度か出張もさせて頂きました。システムについては大手企業で一般的な「外注」ではなく、実際に動作ロジックを作り込む「内製開発」にも少しだけ参画させてもらいました。正直このへんはプロにはまったく叶わない、素人に毛が生えた程度のモノですが、それでも内部の仕組みや動作ロジックが分かるので、海外に行って現地の技術者と話をする(これも全部英語です)にあたってこの辺の全般的な知識、そして学生時代にC#で1万行くらいのプログラム(今みると随分と遠回りしている残念なコードですが)を構築した経験がある事も意外と役に立ちました。

このグローバル系の業務の辛い所は「時差」。定時が終わる頃に欧州の案件が動き出し、長時間残業になる事もしばしばですし、時には海外の都合に合わせて深夜出勤することもあります。システムのリリースやメンテナンスの為に泊まりがけで勤務して、朝までかかったけど失敗…という苦い経験もしてきました。

当方はこのグローバル系の業務をけっこう楽しんでいて、最近では海外から来るゲストと一緒に昼食・夕食に行ってコミュニケーションしたり、英語Onlyな打合せで様々な課題に取り組むといった業務を通し、「英語力」というスキルが日々向上しているのを実感出来ています。

以前よりも明らかに電話やメールでのやり取りは早くなったし、ミスコミュニケーションもかなり減りました。英語そのものに対する抵抗感も薄れ、Facebookなどで友人がシェアしている英語の記事を読んで、海外からの違った角度の意見に触れるということも「日常の中」でやれるようになってきたのは大きいなと思っています。次は情報発信を英語で行うことにチャレンジしてみようかな、とか考え中…。

という実務での経験を踏まえて、「学校教育の評価軸と社会の評価軸のずれ」という問題に疑問を持つようにもなります。特にITや英語のスキルは必然的に求められるようになって来ているものの、「なんかそれって企業側の勝手だよなぁ…」と思い、じゃあ自分ができる「ギャップを埋めるための活動」をやろうかなというのが教育関連の活動の原動力のひとつです。(もう一つは最近講演でもよく話している、「先生が原因で数学アレルギーを発症、浪人中にその数学の疑問がネット上の”動く教材”で氷解し、教育にITをもっと使うべき!と考えるようになった」というアレです)

なお、ここ数年は月〜金の常日勤で、基本的には土日休み、時々2.のピンチヒッターで変則勤務、という動きが定着してきたので、業務との折り合いを見ながら「9時〜17:30以外および土日祝日」を教育系の活動の時間に当てています。これが「教育系活動は二足目の草鞋」という所以でもあります。なので、色々と活動には制約条件があって、平日にどうしても行きたい公開授業とかがある場合は、業務を調整して休暇を取得し、出かけています。

ちなみに、現在の上司や所属部署長は当方のこうした活動に対して非常に理解がある方達なので、「新潟の公開授業に行きます」とか「名古屋で講演してきます」と素直に言っても却下されることは殆どありません。業務調整は当然ちゃんとやる前提で「外との交流は積極的にやるべき」と、毎回送り出してくれるわけです。

そこで、これまで教育分野のいろんな方々にお会いしてきましたが、企業の方には教育関連専業(機器/ソフトの開発や販売、インフラ構築など形は様々)の方は多いですが、「本業はまったく違う畑だけど教育分野で活動している人」というのはそんなに多くありません。

が、それ故に自分には見えて他の人には見えにくい部分もあるな、と思って最近ではいろいろと出来る範囲で色んな事をやっています。

といいつつ、1ヶ月間ブログを更新出来ないくらいには本業も忙しいです(笑)
が、自身が考える「教育でのIT活用推進」については、現状多くの学校の先生にとってある意味「本業ではない事」を求める側面があり、しかもその先生たちが既存の業務でめちゃくちゃ忙しい事を考えれば、自分もこのくらい頑張んないと何も進まないなー、と思っていたりもします。


この間、ある方が「野本さんは制約条件がある中でこれをやっているっていうのがいいんだよね」と仰ってくれたので、この言葉を大切に頑張って行こうと思います。