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EverLearning!

野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

聖光学院 × 洗足学園 × NPO法人JUKE ”ジョブシャドウイング"の取組

今回はICTは直接関係ないのですが、9/5(土) に神奈川県の聖光学院にて「NPO法人 JUKE」が主催する「ジョブシャドウイング」の事後報告会を取材する機会に恵まれましたので記事を書いてみます。

NPO法人 JUKE については以下のHPをご参照ください。

npo-juke.com

 

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 ジョブシャドウイングはざっくり言うと「高校生・大学生による1日企業訪問」。イメージとしてジョブシャドウイングインターンシップの「一歩手前」で、仕事に直接関わるというよりは職場の雰囲気を肌で感じるという意味合いで使われ、米国ではジョブシャドウイング-> インターンシップ と段階を踏む流れがあるそうです。

 日本では(特に高校生が)企業や病院といった「仕事」の世界に触れる機会がまだ少ないとして、同NPOでは受け入れ組織を確保し、社会人メンター(”カタライザー”と呼ばれてます)が生徒・学生への訪問前学習と事後振返りを支援します(訪問先には生徒のみが数人のグループで参加する)。

 聖光学院では今年4年目の取組で、最初はごく少数からスタートした活動だったとのことですが、今年は洗足学園とのジョイント開催が実現し、両校から合わせて100名以上の参加希望があったところを、運営や受け入れ先の事情もあり80名程度まで選抜することになるほどの人気企画に成長したそうです。

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 受け入れ先はJUKEが企業・組織と個別に交渉し、教育、IT、法律、医療、建築、宇宙など様々な分野から17組織がエントリーしました。この中には昨年からのリピーターも多いとのこと。

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 事後報告会の進め方を説明する同NPO 理事長の岡田 香氏。岡田氏は自身も普段は企業に勤めている社会人で、高校生・大学生のキャリア教育機会創出のためにNPO運営をボランティアで行っている方です(当日参加されていた多くの社会人の方も同様のスタンス)。

 説明の中で岡田氏は「人は、見えている範囲でしか”選択”ができない。見えている範囲は氷山の一角にすぎないが、今の段階から様々な世界を知っておくことが人生における”選択”の幅を広げる。今回皆さんが企業で経験したことを報告できる人はあなた一人しか居ないので、その経験を皆さんで共有することが他の皆の視野をさらに広げることに役立つ」と事後報告会の趣旨を説明。

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 生徒達は訪問先の事業領域別( 教育・IT / 法律・医療 / 建築・街・宇宙)ごとに3つのクラスに分かます。聞く側の人は「求職中」の立場で、自班以外の5つの組織から自分が一番行きたい企業・組織に投票。各クラスで最も”得票数”が多かった1グループが最後の全体会で代表として再プレゼンができるという仕組みです。

 

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 続いて各クラスで発表の準備に取り掛かります。プレゼン用に模造紙を完成させるのですが、その中では「ビジネスモデル」をなるべく分かりやすく説明することと、訪問先の強みを見つけ、その会社の「No1キャッチフレーズ」を設定するというミッションが課せられています。班には同じ組織に訪問した生徒達に加えて1−2名の「カタライザー」が付き、メンタリングをしながら進めていきます。 

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 最初は予め展開されていた事後課題のワークシートに沿って、それぞれが訪問先で感じた内容や当日のメモなどをメンバーの間で共有するところからスタート。共有の手段は自由で、ワークシートに直接書き込みをする班もあれば、スマホやノートPCを利用したり、付箋で情報を添付していくなど其々が工夫をしていました。

 ここでカタライザーは、ゴールに近づけるように生徒達に質問をしながら情報を引き出し、訪問した生徒達が共通して感じた「その訪問先の魅力や特徴」を相互認識できるようにナビゲートしていきます。所々で「自分なら訪問先の企業で働きたい?」とか「その説明を聞いた他の人たちは”その会社で働きたい”って思うかな?」といった、”企業をPRする側”の立場でプレゼンができるような情報を引き出していきます。

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 模造紙作りは生徒が主導ですが、カタライザーも手伝いながら進めていきます。ここには「事業のキーパートナー、キーアクティビティ、与える価値、顧客は誰か、事業の支出とマネタイズポイントは何か」などの角度で分析した情報を集約していく必要があり、集約の難易度は結構高そうに感じます。が、各自が事前学習をした上で、訪問に挑む前にこうしたポイントのレクチャーを受けているようで、短時間でも意外とサクサクと模造紙が埋まっていきます。

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 そして発表です。この班は必要な情報をきちんとおさえつつ、敢えて規定のフォーマットとは異なるレイアウトでビジネスモデルを分かりやすく図式化してプレゼンしていました。それぞれの班が「No1」のポイントを説明するところにいろんな工夫をしており、中には「No1」のポイントを紙で隠して見えないようにしておき、最後に見せるといった工夫も。けっこうプレゼン慣れしている雰囲気を感じました。

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 プレゼンの後にはグループをシャッフルし、そこでもう一度「各組織での気づき」をワークシートを使ってメンバーの間でシェアするジグソー法的なアプローチを取り入れていました。ここで発表の中で気になったポイントの再確認や、訪問先ごとの文化の違いなどを相互に共有します。この後、投票で各クラスの代表が投票により選抜されます。

 

f:id:nomotatsu:20150913000856j:plain 投票の結果、この3つのチームが全体発表の権利を勝ち取りました。いずれのチームも「伝え方」に一工夫を取り入れており、メンバーが訪問先の魅力を少しでも伝えようと頑張っていたところが評価されたように感じます。(ある意味、内容よりも見せ方が上手な所や、訪問先への思いがより強いグループ(?)が選ばれたのかな、という部分もあったような気がしますが、プレゼンにおいてはそういう要素も重要でしょう)

 

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f:id:nomotatsu:20150913001059j:plain 80名の生徒と20名以上のカタライザー・運営メンバーの前で代表プレゼンをする生徒達の姿は見ていて非常に清々しいものがありました。今後は、他校とのコラボをさらに発展させ、相互に参加校が「自校だけの取り組みでは得難い気づき」を得られる場になっていけば良いな、と感じました。

 

 終了後、JUKEの皆様との懇親会にもお邪魔させていただきました。印象的だったのが、運営メンバーの中には大学生も多く、中には初代のジョブシャドウイングに「生徒として参加していた」という聖光学院OBの子も何名かいたこと。また、様々な立場の社会人の方がカタライザーとして運営に参画されていたのですが、全体的に大なり小なり教育分野への関わりを持っている方が多く、ほとんどの人が初対面だったのですが直ぐに打ち解けることができました。

 キャリア教育というと、非常にその解釈の幅は広く、様々な取り組みがあります。ただ、企業が大学生を受け入れる一般的なインターンとは、高校生を受け入れるという性質から”採用”というカラーが薄い点が大きく異なる点でしょう。一見、採用に繋がらないジョブシャドウイングは企業にとって負担に感じそうですが、前述の通り受け入れリピーター企業が多いのはおそらく「高校生のフレッシュなものの見方」や「今の高校生の物事の考え方」に触れられることを有意義だと考える企業が多かったのかもしれません。生徒側の目線で見ても、文理選択と進学先の大学選択で、職業の分野もかなりの部分が連動して変わっていく現実を考えると、高校1−2年のこの時期に、実際に働く現場を見て、その経験を相互にシェアできる機会は生徒目線でみても貴重な機会と言えるのは間違いないでしょう。

 しかし、高校生の職場体験の取組は各地で聞くものの、運営の舵取りの難しさ、だれが運営母体になるべきかなど、その継続性を悩む声をよく聞くのも事実です。聖光学院の場合は学校とNPO、そしてそこに所属する社会人ボランティアがうまく手を組むことでうまく回っている印象があります。こうした動きが各地に広がり、学業や偏差値以外の「進路選択の指標」を生徒達が持つことができるようになれれば、と願っています。