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モチベーションワークス株式会社 および 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本 竜哉 による、ICT機器を活用した学習の動向をレポートするブログ。ここでの投稿内容は、所属組織を代表するものではなく、あくまで個人としての情報発信となります。

学校におけるIE縛り問題の構造的問題と解決策を考える(中編)

 前回の記事から2週間くらい間が空いてしまいました。その間に、一つ、今回のIE問題の火付け役となった渋谷区について、一つ解決策が示されましたので共有しておきます。

www.s-kenpo.jp

 渋谷区の区議である鈴木けんぽうさんのブログによると、今回はローカルに環境を展開できるScratch 3.0 のデスクトップ版を利用可能にしたようです。これにより、取り急ぎ「Scratch3.0」が動作する環境は確保されました。ただ、今回の記事で扱っている「IE縛りの脱却」は進展しておらず、そちらについては引き続き働きかける、ということになっているようです。

 

 さて、中編の今回は、主に教職員や学校・教育委員会の方などを想定読者として「一般の民間企業におけるIE依存状況」がどうなっているかを紹介しようと思います。すでに民間企業に勤めている方にとっては「そんなこと知っとるわ」という内容ばかりかと思いますが、意外と教育関係者の方から見ると「企業は企業で深刻な状況じゃん…」と「あ、これって、学校の”校務”で使ってるPCでも似た状況かも…」と気づける部分があるかと思います。ただ、学校でもICT環境を整備拡大していく以上、時差があるものの民間企業と同じような問題がいつかは表面化しますので、その時に参考になると思います。

 

  • 実は民間企業のほうがIE依存度が高い
  • 一方で、MicroSoft 自身が IE脱却 を急いでほしい、と言っている
  • コンシューマITとエンタープライズITの大きな違い
  • そんな企業も悩んでいる「2025年の崖」問題
  • 実は最大の敵は「ユーザー」である現場?!

 

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学校におけるIE縛り問題の構造的問題と解決策を考える(前編)

 昨今、各所で話題になった「学校のブラウザがIEであることでプログラミング学習が充分にできない」という課題に端を発した論争。この件について、各所の記事や筆者の周辺から集めてきた情報をもとに、解決策を考えてみたいと思います。
 ただ、各所からものすごく有意義な情報が当方宛に寄せられたこともあり、ものすごーく長い記事になってしまいました。ということで、前中後編の三部作として記事を出していきたいと思っています。

 前編の今回は、IE問題の発端や経緯、学校のコンピューター教室の実態、サポートコストと入札の関係などに触れていきます。中編では、民間企業でも発生しているIE依存の実態と2025年の崖の話などを絡めて、いかに企業が対応しようとしているか、あたりから今後の対応のヒントを考えます。後編では、具体的に考えられる対策案に触れてみたいと思います。

 ということで前編の本記事では、本件の火付け役にもなったScratch 3.0の話からスタートしたいと思います。

www.nikkei.com

 Scratchは無料で使え、ブラウザーがあれば動作する(アプリのインストールをしなくても使えるし、学校に導入されている端末がWindowsiPadMacChromeBookなどOSを問わず使える)という特性と、教育機関での活用を想定して開発されているということ、ビジュアルプログラミングを採用していることで小学生でも扱いやすいことなどから、支持が広がっているプログラミング学習環境です。このScratchは2019年の早々にメジャーバージョンアップして「3.0」となりました。このアップデートが行われた月の後半に、こんな記事がネット界隈を騒がせます。

togetter.com

 

この報道が一つの引き金になり、様々な関連記事が登場しました。

medium.com

takeyamasaaki.hatenablog.com(元教員の方で、現在プログラミング教育のNPOで働かれている方の記事です)

 

 要は、標準ブラウザがIEで、しかもわざわざIE以外を使えないように細工してあるのは困る、Scratchをちゃんと使っていくためにも「Google Chromeを学校のPCに導入せよ!」という論調が急速に盛り上がりました。
 そして、2019年3月11日には、ついに中央省庁3省も関連する産学連携コンソーシアムから、学校の教育用コンピュータにモダンブラウザを導入していくべし、という発表も出ました。

miraino-manabi.jp


 が、この話って思ったよりも単純ではないです。というか、「やりなさい」で済むのであれば、たぶん遥か昔に対応が終わっている可能性すらあるのです。

 ということで、「学校のコンピュータはなぜIEしか使えないようになっているのか」という背景の部分、そしてその背景が生み出されている構造的な課題について考えてみたいと思います。

 なお、記載している内容はある程度経験に基づく内容ですが、当然推測も混じっていますし、筆者の知識が古いままでアップデートされていない部分もあるかもしれません。ただ、今回の3部作記事は目的が「いろんな視点から学校のコンピューター環境を考える」、そして「解決に近づける」ことにあるので、間違いや古い内容があればどんどん指摘して欲しいですし、その指摘を元に「解決」に向けて論をすすめられれば良いと思っています。(筆者の知識が古くてヘボい、ということを明らかにしてもこの問題は1mmも進まないですので)

  • 学校のコンピューター室のPCの現状について
  • なぜ学校のコンピューターはIE縛りなのか?
  •  モダンブラウザ導入にあたっての黒船「Scratch 3.0」
  • もっと重要な観点が「サポートコスト」に潜んでいる
  • この問題をより根深くする、入札・調達の文化
  • 大切なのは関係者の「相互理解」と「協力体制の構築」

 

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手持ち機材のみで遠隔から講師とやりとりできる講義環境を構築した話

 先日、ひょんな事から自社(Z会)で開催する報告会を遠隔地から見てもらい、遠隔視聴者からコメントをいただく、という課題を解決する必要に迫られました。昨今、Web会議システムも結構進化しているし、意外と簡単に実現できるんじゃね…?と思っていたら、これが思ったよりも大変。

 色々と試行錯誤をしてみて、なんとか実現させたのですが、
・これって、インフルの回復期で(割と元気だけど)学校に来られない生徒の授業参画
不登校や入院など、何らかの理由で教室に行くことが難しい生徒のフォロー
・交通費や時間などの都合で行きたいけど行けない研修の遠隔地からの参加
みたいに、教育分野では需要が多そうな話。

 一応、教育現場のICT環境のアドバイザーとして一定のスキルを持っていることの証左である「ITCE 教育情報化コーディネーター 2級」の保持者として、ベンダーに無駄に高い遠隔授業システムを売りつけられることは回避してほしいのでどこかの現場で役立つかもしれないので、実現方法を記録に残してみることにしました。

今回の要件としては

 1. セミナーの様子を遠隔地の人に配信したい(遠隔の人は2-3名程度)
 2. 遠隔の参加者との双方向のコミュニケーションができるようにしたい
 3. 細かいスライドが見えるよう光学ズームができるカメラを使用したい
 4. できるだけ今ある機材を使い、追加のコストはかけたくない
 5. 配信映像+遠隔者とのやり取り(音声・チャット等)も記録として残したい
 6. 商用利用ではないので映像のクオリティは100点満点でなくてもよい

というものです。

ということで、具体的に実現方法をみていきましょう。

 

  • 意外にもWebカメラとして使えるものが少ない市販ビデオカメラ
  • 発想の転換:パソコンでデジカメの遠隔操作をするアプリが使えるんじゃ?
  • 具体的に今回やった手順

 

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一眼用スタビライザー「Kylin M」× iPad Pro × α7 でお気楽高画質動画生活

 本年も宜しくお願い致します。なんだかんだでこのブログも7年目に突入。昨年は「出来るだけ更新します」と年初に宣言し、2017年の更新3回というサボり具合から2018年は8回まで戻せたので、今年はもうちょっと頑張って2桁更新を目指したいと思っています。

 

 さて、今回はこのブログの主力情報であるiPad Proのちょっとした応用方法のご紹介です。一言で言うと、一眼みたいな高画質のカメラで撮った高画質なHD動画をiPad Pro(2018)でかなりハンディに扱えますよ、というやり方を紹介する記事です。

 

  • お蔵入り予定だったα7Sが現役復帰
  • Kylin M を実際に使ってみた
  • iPad Pro 2018 との組み合わせが最強すぎる件

 

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【読むな危険】iPad Pro 2018 が割と日常の学習向けに完璧なのでレビューしてみる

さて、予告していたiPad Pro のレビュー記事(教育観点入り)を公開します。

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 読むと欲しくなるので一応タイトルに【読むな危険】と書いておきました。すでに購入している人、オーダーして到着を待っている人は心を平穏にしてこちらの記事をお読みいただければと思います。

 購入しようかどうか迷っている人、気になっているけど家庭内稟議に困っている人、教育関係の人はこれ以降は自己責任でお読みください。間違ってWebでポチっても、店頭で「ください」と口走ってしまっても知りません。

 

  •  フルモデルチェンジの注目のポイントはどこ?
  • 第2世代Apple Pencilだけで飯が3杯食える
  • Apple Pencil のダブルタップで加速する「試行錯誤」回数
  • 純正キーボード(Smart Keyboard Folio)もなかなか良い 
  • この技術が近い将来の「スタンダード」になるのが待ち遠しい
  • 余談

 

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【予告】iPad Pro 2018(12.9)を購入したので近日中にレビューを書きます

今年もiPad Proの新機種が発表されました。

当方も実機を購入したので、お馴染みの教育観点のレビューを近日中に書きますよ、の予告POSTです。

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とりあえず近くにあったiPadをいろいろ重ねてみたの図。
下からiPad Pro 12.9(初代), iPad Pro 12.9(今回の新モデル), iPad Pro 10.5, iPad Pro 9.7, iPad mini4。

 

このブログ、例年「iPad Pro」が発表されたり、発売されると急激にアクセスが増えます。

おそらく、家庭内稟議を通す必要がある方々が購入する最もらしい理由を探してWebを彷徨っているのだと思われ、今年も例に漏れず以下の通り。(縦軸は加工して消してます)

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新機種発表の10/31に急激に伸び、発売が近づくに連れてアクセスがジリジリ伸びています。

 

ということで、家庭内稟議や自分稟議を通す上で最も正当性が高い「教育的な使い方」について、出来るだけ早期にレビュー記事を書いてUPしようと思います。

乞うご期待。

 

「未来の教室」実証事業 キックオフイベントレポート

【記事をご覧のご関係者の皆様へ】
本記事で使用されている写真類は株式会社Z会のスタッフが撮影したものですが、今回の実証事業の公共性を鑑み、特に著作権は主張いたしませんので必要であれば適宜コピーしてご利用ください。一方、掲載された写真に不具合がある、記事の内容に問題や齟齬がある場合は、記事のコメント欄にご記載いただくか、Facebookメッセージ / Twitterのダイレクトメッセージなどでご連絡をいただければ迅速に対応致します。

 

 2018年7月26日、経済産業省にて500名超の関係者・報道陣、そして一般傍聴者を集めて行われた標題のイベント。筆者はこの事業に採択された「実証事業者」の立場で参加してきました。会場では実際に予算を割り当てられて実証事業を進めていく企業・組織や、これから事業化に向けて検討を進めていく企業・組織による「ワーキンググループ」の結成などが発表され、幼児から社会人まで様々な形で「教育」に関わるキープレーヤーが一堂に会する、大々的なイベントでした。

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キックオフイベント内で行われたパネルディスカッションの様子


 会場に集った多種多様な「教育」に関わる人たちのお話は非常に面白く、ワクワクの連続でした。そこで今回の記事では、自社(筆者の所属するZ会)の実証での取り組みや宣伝はひとまず置いといて(笑)、 

  • 「未来の教室」実証事業って何さ?
  • どんな企業や組織が参画しているの?
  • 今回のイベント、どの辺が面白かったの?

 

あたりを筆者個人の目線で書いてみようと思います。なにせ3時間超に及ぶイベントでしたので少々長いですが、是非お付き合いください。

 なお、キックオフイベントは動画でアーカイブされており、以下から視聴できますが、3時間以上と大変長いので、こちらの記事を読むとその概要が掴めると思います。

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